関西光科学研究所 >> プレス発表 >> 希薄磁性半導体が磁石の性質を示すカラクリを解明
プレス発表
平成26年2月25日
小林 正起(東京大学大学院工学系研究科 日本学術振興会特別研究員
現・高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所特任助教)
丹羽 秀治(東京大学物性研究所附属極限コヒーレント光科学研究センター特任研究員)
竹田 幸治(日本原子力研究開発機構副主任研究員)
藤森 淳(東京大学大学院理学系研究科教授)
仙波 泰徳(高輝度光科学研究センター研究員)
大橋 治彦(高輝度光科学研究センター副主席研究員)
田中 新(広島大学大学院先端物質科学研究科助教)
大矢 忍(東京大学大学院工学系研究科准教授)
ファムナム・ハイ(東京大学大学院工学系研究科特任研究員)
田中 雅明(東京大学大学院工学系研究科教授)
原田 慈久(東京大学物性研究所 附属極限コヒーレント光科学研究センター准教授)
尾嶋 正治(東京大学放射光連携研究機構特任教授)
発表のポイント
- 希薄磁性半導体中の微量な磁性元素のみを高精度で観測
- 従来の手法では判別が難しかった磁性元素の状態を判別し、強磁性発現のミクロなメカニズムを解明
- 磁性元素の役割を明らかにすることで、高性能な希薄磁性半導体の物質設計が可能に
産業に欠かすことのできないエレクトロニクスに磁石の性質を取り入れた「スピントロニクス」と呼ばれる分野では、希薄磁性半導体※1が注目を集めています。希薄磁性半導体とは、半導体の持つ電気的な性質と磁性材料が持つ磁石の性質を併せ持った物質で、その代表に砒化ガリウム※2(GaAs)に数%マンガン(Mn)を添加したGa1-xMnxAs(以下、GaMnAs)があります。GaMnAsは比較的高温で磁石としての性質(強磁性)を示すことから、スピントロニクス材料としての実用化が検討されています。しかし強磁性が発現するメカニズムについては未だに決着がついておらず、色々なモデルが提唱されています。
今回、東京大学大学院工学系研究科の小林正起特別研究員、同物性研究所の原田慈久准教授、同放射光連携研究機構の尾嶋正治特任教授、同大学院工学系研究科の田中雅明教授らの研究グループは、日本原子力研究開発機構(JAEA)、高輝度光科学研究センター(JASRI)、広島大学との共同研究で、大型放射光施設SPring-8※3の東京大学放射光アウトステーションビームラインBL07LSU※4を利用してマンガン(磁性元素)の電子状態を高精度で決定することにより、GaMnAsのミクロな強磁性発現メカニズムを明らかにすることに成功しました。
本研究の成果は、スピントロニクスの主役を担う希薄磁性半導体の物質設計の指針になると期待されます。本成果の詳細は、2014年2月27日(日本時間2月28日)に米国物理学会 速報誌「Physical Review Letters」オンライン版に掲載されます。
詳細は下記をご参照ください。(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構のサイトへリンク)
希薄磁性半導体が磁石の性質を示すカラクリを解明
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