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那珂フュージョン科学技術研究所

那珂核融合研究所_カナちゃんの那珂研レポート35

掲載日:2018年12月26日更新
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Vol.35 JT-60プラズマ設計グループの浦野研究副主幹にインタビューしました。

こんにちは、カナです。
今日は、IAEAのニュークリア・フュージョン賞を受賞された、JT-60プラズマ設計グループの浦野創研究副主幹にインタビューをお願いしました。その時の様子をご紹介します。

Vol.35 JT-60プラズマ設計グループの浦野研究副主幹にインタビューしました。の画像1
中央制御室でインタビューに答えてくださった浦野研究副主幹。

今回受賞された研究の内容について教えて下さい。

受賞論文のテーマは「軽水素と重水素の質量比を利用した、境界プラズマ中の断熱層幅の解明」です。
例えばコーヒーカップに熱いコーヒーを入れた時、カップの厚みが薄いと熱がすぐ逃げますよね。プラズマも同じで、核融合を行うときにプラズマの殻が厚い方が出力が上がることがわかっているんです。だから核融合出力を高めるために、この厚みがどのような物理で決まっているのかを世界で初めて明らかにできた、というのがこの研究の大きな成果なのです。
この成果が発表されたことを受けて、今ではITERでのプラズマの殻の厚さを予測するシミュレーション研究が本格化してきています。
(詳しくはこちらの資料をご覧下さい)

Vol.35 JT-60プラズマ設計グループの浦野研究副主幹にインタビューしました。の画像2
JT-60内部の写真と一緒に。

研究者を目指されたきっかけは?

小さい頃から、いろんなことを調べたりするのが好きでした。どうしてなんだろうって思ったことを調べる意欲はあったほうだなと思います。
核融合は高校生の頃に、次世代のエネルギーについて本で読んで知ったんですけど、その頃になると日本の現状がなんとなくわかってきて、日本は科学技術の分野ではトップクラスだけれども、一番大きな問題として資源がないですよね。日本が社会的、経済的な基盤を確固たるものにするためには資源ってネックをなんとかしなくちゃいけないなと思って。

学校の授業でも、石油があと何年でなくなってしまうという話は出てきますよね。次世代エネルギーがいろいろある中で、核融合に一番可能性を見たということですか?

人口もどんどん増えてるけど、必要なエネルギーはそれ以上の勢いで増えてるし、それを満たすためのエネルギーが得られるシステムが必要だなと思ったんです。それには核融合が一番ぴったりだと思いました。
核融合って僕が子供の頃はマンガや映画に出てくるような夢のエネルギーだったんですけど、今は夢ではなく、現実さを見えてきていると思っています。自分はその頃思い描いていた仕事につけていて、しかも今も興味を失わないで続けていられるのはすごく嬉しいと思います。

プライベートについてお聞きしたいのですが、趣味はなんですか?

実は20年くらい麻雀をやっています。麻雀ってなんとなくアンダーグラウンドなイメージがあって人にはなかなか言いづらかったんですけど、相手が3人いて、心理戦であったり、数学的な見方も必要であったり、奥の深いゲームだなと思っています。
今は仕事が忙しくて週末くらいしかできませんが、仕事以外で共通の趣味の仲間と遊んで話したりするのが本当にいい息抜きになってるので、この趣味があってよかったなと思っています。

単刀直入にお伺いしますが、腕前のほどは。

正直に言ってしまうと、相当強いと思いますよ。ちょっとやって自分は強いなって思ってるくらいの人には負けない自信があります。
研究者同士の麻雀とか、ちょっと見てみたいです。

最後に、ホームページをご覧になってる方へのメッセージをお願いします。

子供の頃って一番好奇心旺盛で、大人になっていくにつれて関心ってなくなっていくもんだと思うんですよ。だからそういう好奇心があるうちに、どうしてそうなっているんだろう、どうして動くんだろう、どうしてこういう現象がおきるんだろうってことに実際に体を動かして触ってみるとか、そういうことが大切だなあと思いますね。
たとえば小学校の時に公園で遊んでた時に、木の肌を触ったときに体感している温度って自分と変わらないんですよ。で、すぐとなりにあった鉄棒を触ると冷たく感じる。ここから熱伝導率という性質を知ることができます。こういう経験って誰しもがあると思うんですね。そういう、子供なら誰しも感じるような疑問を不思議に思って、それをどうしてなんだろうって思う心っていうのはすごく大事だと思うんですね。

「今回の賞はまさか自分がもらえるとは思ってなくて、こういう国際的な場で自分の研究が認められた、評価してもらえた、ってことは、今後の人生の中で、ものすごく高いモチベーションを与えてくれたなと思いますし、これから先も、これと同じくらいのクオリティをだして行かないといけないなというプレッシャーも同時にもらったような気もします」とおっしゃっていた浦野研究副主幹。実際に話してみるととても気さくなお兄さんのような人でした。
研究の内容もわかりやすく教えてくださって、核融合ってほんとうにいろんな研究からできるんだなあと、またひとつ勉強になりました。ありがとうございました。
 今度、麻雀教えてもらおうかな?

Vol.35 JT-60プラズマ設計グループの浦野研究副主幹にインタビューしました。の画像3
おまけ。

中央制御室には小さな神棚があります。
ちゃんと賽銭箱もあって、実験のたびに「いい結果がでますように」って、お参りしてたとか。

今はお休み中のJT-60ですが、JT-60SAに新しく生まれ変わったら、またこの神棚のお世話になるのかな?