ご挨拶
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
那珂フュージョン科学技術研究所長
花田 磨砂也
那珂フュージョン科学技術研究所は、量子科学技術研究開発機構量子エネルギー研究分野の中核研究所の一つとして、核融合反応で発生するエネルギー(フュージョンエネルギー)を生み出すための研究開発を行っています。核融合反応は、太陽などの恒星の中で起こっている反応であり、この反応を地上で実現します。フュージョンエネルギーは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない、容易に反応を止められるので安全性に優れている、燃料資源が枯渇することがない等の特長を有しております。そのため、フュージョンエネルギーは人類の未来を切り拓くエネルギー源と期待されており、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、内閣府のイノベーション政策強化推進のための有識者会議において、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略が取り纏められています。
茨城県那珂市の那珂フュージョン科学技術研究所の整備が始まったのは、昭和54年(1979年)です。我が国のプロジェクトとして臨界プラズマ試験装置JT-60が建設され、昭和60年(1985年)4月の実験開始に合わせて研究所が発足し、今年度で39年目となりました。これまで、イオン温度5.2億度、エネルギー増倍率(等価換算値)1.25などを達成し、世界のフュージョンエネルギー研究開発を牽引してきました。
現在、那珂フュージョン科学技術研究所は、50万キロワットのフュージョンエネルギーの発生を世界で初めて実証するための国際プロジェクトである「核融合実験炉イーター(ITER)」計画に対して、我が国の国内機関として、主要機器の調達を担当しております。調達にあたっては、我が国の産業界の持つ技術力を統合する体制で進めています。
さらに、那珂フュージョン科学技術研究所では、日欧協力活動「核融合エネルギー研究分野における幅広いアプローチ(BA)活動」の一つである、サテライト・トカマクJT-60SA計画も進めています。JT-60SAでは、イーターを先導する実験を行うとともに、プラズマ形状による性能の違いを幅広く調べることで、経済性に優れた核融合炉に向けた高性能プラズマの開発を進めていきます。
これらの那珂フュージョン科学技術研究所で進めているイーター計画やJT-60SA計画で開発された技術は、六ヶ所フュージョンエネルギー研究所で開発を進めている発電のためのブランケットシステムの技術等と併せて、発電を実証するための原型炉を実現するためのものであります。那珂フュージョン科学技術研究所では、六ヶ所フュージョンエネルギー研究所と一体となり、フュージョンエネルギーの実現に向けて、イーター計画及びBA活動を引き続き推進し、国際的総合研究開発拠点としての役割を果たしていきます。
今後とも、皆様のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。