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量子バイオ技術応用プロジェクト

プロジェクトの概要

量子バイオ技術応用プロジェクトでは、高崎量子技術基盤研究所が保有する量子ビーム施設を活用して、これからのバイオテクノロジーを支える基盤となる量子バイオ技術の研究開発を進めています。

研究のねらい

線虫を対象として​量子ビームを用いて進めてきた生命科学研究において創出した数々の量子バイオ技術シーズを、真に「使える」技術まで磨き上げるインキュベーションに注力します。量子バイオ技術の研究開発を通じて、農作物の病害虫防除における環境負荷低減、バイオセンサを利用した試料検査の精度向上といった、農業、医療、環境等の各分野における課題の解決に貢献します。

動画でご紹介!「線虫(C. elegans)と放射線」

研究開発の内容

1. 量子ビームを活用した病害線虫防除技術の開発(農業分野)

農作物や森林に大きな被害をもたらす病害線虫。量子ビーム照射技術を病害線虫防除に応用し、農薬に頼らない環境に優しい農業の実現を目指します。

2. 動植物の生体機能の解明と応用(基礎科学分野)

病害線虫と、線虫と共生する植物を対象として、生存戦略の基盤をなす生体機能の一端を明らかにし、農薬に頼らない病害線虫防除法の開発に活かします。

3. 生き物のセンサ(感覚器官)を利用する試料検査の高精度化(医療・環境分野)

線虫の高感度なセンサ(感覚器官)を利用して、生体試料や環境試料に含まれる微量の物質の存在を高精度に検出する手法を確立し、その有効性を実証します。

4. 量子バイオ技術を活用した実験教材の開発とSTEAM人材の育成支援

量子バイオ技術応用プロジェクトの研究開発には、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)が欠かせません。量子バイオ技術を活用した実験教材の開発やアウトリーチ活動を通じて、これからのバイオテクノロジーの担い手となる次世代STEAM人材の育成に貢献します。

量子バイオ技術とその活用例

1. 細胞や個体へのマイクロビームピンポイント照射技術

国内唯一かつ世界最高エネルギーの重イオン(放射線の一種)のマイクロビーム照射装置を用いて、培養細胞から動物個体(線虫、メダカ、カイコなど)まで、幅広い生物試料へのピンポイント照射を世界に先駆けて可能にした先進技術です。

Heavy-ion Microbeam

​図:重イオンマイクロビームピンポイント照射技術

2. 麻酔せずに線虫の動きを抑える保定技術 ~マイクロビームピンポイント照射や長時間観察を可能に~

モデル動物の線虫(C. elegans)の細胞一つや組織の一部を狙って、重イオンビームをピンポイント照射するためには、線虫の動きを抑える必要があります。そこで、線虫がすっぽり入る程度のサイズの直線状のチャネル(溝)をたくさん設けたPDMS(シリコン樹脂)製マイクロチップ(製品名:Worm Sheet)を開発しました。このチャネルに線虫を入れてカバーをすることで、麻酔薬を使わずに動きを抑えることができます。長時間、良好な状態で維持できることから、照射実験のみならず、細胞や組織の観察でも活用されています。

Worm Sheet

線虫用PDMSマイクロチップ(Worm Sheet)

3. 食品照射に関する知見を広める活動

殺菌、殺虫、発芽防止のために農作物や食品に放射線(量子ビーム)を照射することを「食品照射」といいます。日本では1974年からガンマ線照射によるじゃがいも(馬鈴薯)の芽止めが行われていました。当プロジェクトでは、高崎量子技術基盤研究所における長年にわたる食品照射研究(特に、植物検疫にかかる害虫や果実等の放射線照射試験など)を継承するとともに、食品照射に関する文献情報を収集してデータベースとして公開しています。また、国内外の研究データに基づいて、食品照射の有用性や安全性に関する科学的な認識を市民と共有するための「リスクコミュニケーション活動」に取り組んでいます。

連絡先

〒370-1292 群馬県高崎市綿貫町1233番地
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構
高崎量子技術基盤研究所
量子バイオ基盤研究部
量子バイオ技術応用プロジェクト

リーダー 鈴木 芳代

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