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放医研とアプリノイア社、認知症を診断する新技術でライセンス契約を締結

掲載日:2018年12月26日更新
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放医研とアプリノイア社、認知症を診断する新技術でライセンス契約を締結
-認知症診断薬の製品化、新たな治療薬開発を加速-

国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所(以下、量研機構 放医研)は、アルツハイマー病などの認知症を診断する目的で新たに開発したイメージング薬剤を、バイオベンチャーであるアプリノイア社(台湾)に供与するライセンス契約を締結しました。

2013年、放医研は独自の診断薬であるPBB3を開発し、認知症の原因物質であるタウタンパク質の蓄積を、ポジトロン断層撮影(PET)により画像化することに成功しました(図1)。しかし、PBB3は半減期が約20分の11C(炭素)で標識されており、普及・実用化には半減期の長いポジトロン核種で標識する必要がありました。そこで放医研では、半減期が約2時間の18F(フッ素)で標識したPM-PBB3を新たに開発しました。

量研機構 放医研とアプリノイア社は、本年7月に共同研究契約を締結し、これまでに、PM-PBB3をはじめとする薬効の評価等を実施してきました。本契約の締結によって、アプリノイア社はこれらの薬剤の開発を展開し、製品として世界市場で独占的通常実施権の下に製造、販売する権利を得るとともに、PM-PBB3の臨床試験を国際的に展開し、認知症診断薬としての製品化を目指します。

また、両者は本契約に基づいて、タウタンパク質の蓄積を抑止する候補薬剤の探索と評価を連携して実施します。量研機構 放医研が構築した、認知症モデル動物と患者さんで共通の画像バイオマーカーで治療効果を評価するシステムを用いて、モデル動物で候補薬剤の治療効果を評価することで、臨床試験での結果を高い精度で予測して新たな治療薬剤開発を加速します。

量研機構 放医研は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構の委託事業として、タウを標的とする新規画像診断法と治療法の研究開発のため、国内の企業や大学等からなるタウコンソーシアムの構築を進めています。今後一層、関係省庁や製薬企業、大学・研究機関との対話を進めて日本国内の産官学連携で、放医研の画像バイオマーカーによる治療効果評価システムを創薬プラットフォームとして構築し、認知症の病態解明、診断法、治療法および予防法の開発に発展させる計画です。本契約は、国際的な創薬バイオ研究および事業の展開を活性化するだけでなく、このプラットフォームによる認知症の診断および治療薬の実用化を加速することが期待されます。(図2)

PBB3を投与後に撮影した脳PET画像
図1.PBB3を投与後に撮影した脳PET画像

アルツハイマー病患者では、記憶の出し入れに関わる海馬(矢頭)などで多量のタウタンパク質蓄積が認められます。

日本と台湾を基軸にした国際的な創薬バイオ研究および事業連携と、量研機構 放医研の産官学連携に基づく認知症創薬プラットフォームの関係
図2.国際的な創薬バイオ研究および事業連携と、量研機構 放医研の産官学連携に基づく認知症創薬プラットフォームの関係

アプリノイア社は、2016年7月にDCIパートナーズ株式会社(大和証券グループ)より開発資金を獲得しました。DCIパートナーズ社のアプリノイア社への投資と、量研機構 放医研とアプリノイア社のライセンス契約が組み合わさることにより、日本と台湾を基軸にした国際的な創薬バイオ研究および事業の連携が活性化し、日台の医薬産業の発展に結び付くと見込まれます。量研機構の創薬イメージングプラットフォームとタウコンソーシアムは、その中核を担うことが期待されます。

PBB3について

アルツハイマー病をはじめとする精神・神経疾患において、脳内に蓄積することが知られているタウと呼ばれるタンパク質に選択的に結合する薬剤。PBB3のPBBはPyridinyl-Butadienyl-Benzothiazoleの略称。PBB3を放射性同位元素で標識することにより、PET薬剤として使用できる。

アプリノイア社について

アルツハイマー病をはじめとするタウタンパク質の蓄積が原因と考えられる神経変性疾患の診断薬、治療薬の開発を目指して認知症分野のスペシャリスト(創業者 兼 最高経営責任者 張明奎 PhD)により設立されたバイオベンチャー。

DCIパートナーズについて

総額116億円の「大和日台バイオベンチャー投資事業有限責任組合」を運営する、大和証券グループのバイオ専門のベンチャーキャピタル(代表取締役 成田宏紀)。アプリノイア社に対しては、2016年7月に投資。