所長挨拶
このたび、令和6年7月11日付で、放射線医学研究所(NIRS-QST)の所長を拝命しました、内堀幸夫です。何とぞよろしくお願いいたします。
NIRS-QSTは、放射線被ばくから国民を守るための研究開発を行う研究所として令和3年4月1日に発足しました。令和5年4月1日からは、新たな中長期計画に基づき、さらなる発展を目指しております。
前身である放射線医学総合研究所は60年間にわたり、放射線安全・緊急被ばく医療に関する研究と、放射線の医学的利用のための研究を車の両輪として、人々の健康と、安全で安心な社会づくりに貢献してまいりました。この間、第5福竜丸事件(1954年)以降の主な国内の被ばく事故に対応してきましたので、緊急被ばく医療分野では、我が国随一の経験を有し、多くのサンプルやデータを蓄積しております。NIRS-QSTは、こうした有形無形の知的財産とともに、放射線による人体の障害予防、診断及び治療のための様々なミッションを継承しております。そこで、今後も、線量評価ならびに放射線障害治療分野での研究開発を進め、成果の社会還元を加速することに務めながら、緊急被ばく医療分野での教育訓練や研修指導により、原子力災害医療分野の人材育成を進めてまいります。
また放射線は被ばく事故でのみ発生するものではなく、宇宙の誕生と共に自然界に存在しているものです。しかし科学技術や産業の発展により、人間の生活が大きく変わったことで、被ばくの形態は変わってきています。宇宙進出のような人類の長年の夢の実現にも、宇宙放射線の被ばく低減が課題になっています。健康長寿社会に不可欠な放射線診療においても、より放射線リスクが少なく、診療上のメリットが大きい技術開発が求められています。そこで、さまざまな状況下での放射線による生物学的影響を定量的に明らかにし、その健康リスクの低減や障害の予防といった規制科学に資する研究開発を進めます。そして放射線に関する日本を代表する研究機関として、国内外の諸機関と連携を図り、国際的な協調を重視しつつ、放射線のリスクや災害に対してレジリエントな社会の構築に貢献していきます。
皆様方の引き続きのご指導、ご支援を宜しくお願い申し上げます。
放射線医学研究所
所長 内堀幸夫
組織目的
・放射線被ばく患者の診療(線量評価を含む)及びその準備・対応
・上記診療の為の調査・研究・開発
・全国の被ばく医療機関および行政機関等への支援と人材育成
・国の指定公共機関、基幹高度被ばく医療支援センターとしての役割
・線量評価及び放射線計測技術を高度化するための研究開発
・放射線影響・防護・リスク評価と低減化に関する研究
・東電福島原発事故に関連した環境、生態調査・研究
法令に基づくQSTの役割
指定公共機関
QSTは、内閣府より指定公共機関として指定を受けています。
指定公共機関とは、公共的機関及び公益的事業を営む法人のうち、防災行政上重要な役割を有するものとして内閣総理大臣が指定している機関です。
指定公共機関の役割は、災害対策基本法、事態対処法(注1)、国民保護法(注2)により定められており、有事の際は、国や地方公共団体と協力して、災害予防・応急・復旧等において重要な役割を果たすこととなります。
放射線医学研究所では、これらの法令に基づくQSTの指定公共機関としての活動の統括を担当しており、緊急時の際は外部からの問い合わせ対応や職員の災害派遣等の対外活動全般、それに伴う業務調整等を一手に担うことになります。
(注1)武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
(注2)武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
基幹高度被ばく医療支援センター
QSTは、原子力災害対策特別措置法及び原子力災害対策指針に基づき、原子力規制委員会より基幹高度被ばく医療支援センターとして指定を受けています。
基幹高度被ばく医療支援センターは、高度被ばく医療支援センターとしての役割に加え、アクチニドの中でもアルファ核種を含む内部被ばくの個人線量評価等を行い、主に高度被ばく医療支援センター及び原子力災害医療・総合支援センターに所属する医療従事者、専門技術者等を対象とする高度専門的な教育研修等を行います。
また、原子力災害医療に関する研修情報等を一元管理します。
放射線医学研究所は、所内に基幹高度被ばく医療支援センター事務局を設置し、QSTが担う同センターの業務全般を担当しています。
基幹高度被ばく医療支援センターや原子力災害医療体制の概要については、こちらもご覧ください。
指定公共機関・基幹高度被ばく医療支援センター等の位置付けと主な役割
法令に基づくQSTの役割を図示すると、以下のとおりとなります。
上記の他にも、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構法に基づく役割が定められており、行政機関や地方公共団体からの依頼による放射線障害の予防、診断及び治療等を行います。