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千葉地区共通情報

福井大学と「研究・教育及び診療等の協力に関する協定」を締結

掲載日:2018年12月26日更新
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放医研、福井大学と「研究・教育及び診療等の協力に関する協定」を締結
包括的な研究協力を推進

概要

独立行政法人放射線医学総合研究所(千葉県千葉市、理事長:米倉義晴)と国立大学法人 福井大学(福井県福井市、学長:児嶋眞平)は、放射線治療・診断分野において世界をリードし、併せて優れた高度な専門的人材の育成を行い、先端医療に対する社会のニーズに応えるため、研究・教育及び診療活動を連携して推進するための包括的な研究協力協定を締結した。

本協定は、放射線と人の健康にかかわる研究を総合的に推進してきた放射線医学総合研究所が、新たに分子イメージング研究センターを発足させるなど、ライフサイエンス研究を拡充する第2期中期計画をスタートさせたことを機に、高エネルギー医学研究センターをはじめとする優れた研究資源を有する福井大学との間で、放射線治療・診断学の分野における研究・教育及び診療活動のための密接な連携・協力体制を構築することを目的としている。

協定締結の背景

独立行政法人放射線医学総合研究所は、平成18年4月より「放射線に関連するライフサイエンス分野における優れた研究成果・技術開発成果の達成」などを目標とした第2期中期計画をスタートさせた。この中で、放射線に関するライフサイエンス研究では、従来より取り組んでいる重粒子線がん治療研究、放射線生体影響研究に加えて、研究所が保持する最先端の画像診断技術を駆使した分子イメージング研究を次世代の医療の進展に寄与する新たな研究分野として取組んでいる。一方、こうした分野の研究では、国内外に存在する研究機関の設備や人的資源を有効に活用するための研究連携が不可欠であり、大学をはじめとする諸研究機関と積極的に包括的な連携協力協定を締結している。

今回、協定を締結する国立大学法人福井大学は、最先端の科学技術研究を通して優秀な人材を育成することを目的として独自性の高い研究、教育を指向している。特に医学分野では、高エネルギー医学研究センターを立ち上げ、生体画像医学の統合研究プログラムが21世紀COEプログラムに採択されるなど、先進的な研究活動を遂行している。また、医学部附属病院は、福井県下唯一の特定機能病院として地域に密着した高度な医療活動を展開している。両研究機関の連携協定は、画像医学分野に留まらず、放射線治療・診断学の幅広い分野で、研究・教育や診療活動の包括的な協力体制を整えるものであり、同分野での世界的に優れた成果の獲得に資するものと期待される。

連携協力の範囲と形態

今回の協定は、放射線治療・診断学の分野に関する研究・教育及び診療活動について、両機関間で包括的に連携、協力するためのものである。具体的には下記の8項目の連携協力を実施する。

  1. 共同研究活動の推進
  2. 人材育成の推進
  3. 研究者の相互交流
  4. 施設設備の相互利用
  5. 研究資源の相互利用
  6. 知的財産の管理活用
  7. 関連する研究成果等の情報交換
  8. 上記のほか両者間で合意した事項

特に、我が国の放射線治療・診断学の進展のための重要な課題である人材育成については、専門医師や技術者の養成において大きな成果が期待される。

有効期間

協定の有効期間は、締結日より平成23年3月31日までとしている。

放医研の取組み

独立行政法人放射線医学総合研究所は、放射線の人体への影響に関する研究開発、放射線による人体の障害の予防、診断及び治療に関する研究開発、並びに緊急被ばく医療の体制整備等を担う我が国唯一の中核的研究機関として、独創的で先進的な業務に取り組んでいる。

放射線に関するライフサイエンス研究領域では、「重粒子医科学センター」において、量子ビーム技術の医療応用の促進のため、その成果が国際的に注目されている重粒子がん治療の国民医療への定着を目指した臨床試験と高度先進医療に取り組み、研究成果の普及を積極的に推進している。同センターでは、放射線治療の高度化に資する放射線生体影響研究として、ゲノム診断研究、粒子線生物研究、先端遺伝子発現研究といったライフサイエンス研究にも注力している。また、「分子イメージング研究センター」では、世界最高水準のPET(陽電子放射断層撮像法)基盤技術を基に疾患の病態研究・診断研究について、我が国の分子イメージング研究の拠点としての研究開発に注力している。

放射線安全・緊急被ばく医療研究領域では、放射線・原子力の利用に関する国民の安全・安心の確保に資するものに特化した、放射線安全及び緊急被ばく医療に関する研究が着実に行われている。「放射線防護研究センター」では、高高度飛行に伴う宇宙放射線被ばく、ウラン、トリウム、ラドン等の自然放射線源からの被ばく、医療に伴う被ばくや放射線の環境への影響など、放射線防護基準策定に寄与する研究を実施。また、放射線に対する感受性が高いと考えられている胎児や子供のリスク評価のため、発がんや寿命短縮等への感受性時期を明らかにし、年齢依存性を提示する研究に取り組んでいる。「緊急被ばく医療研究センター」は、我が国の緊急被ばく医療体制の中核機関(中央防災会議の定める三次被ばく医療機関)として位置付けられ、急性放射線障害の機構・治療研究や緊急時の線量評価研究及び除染剤・防護剤研究において多くの成果を挙げるとともに、先のJCO臨界事故時には三人の被ばく患者を受け入れる等、具体的な貢献も行った。

これらの研究は人類の健康の維持と安全・安心の社会を構築する上で極めて重要であると考えられ、今後とも放射線に関する総合研究機関として、放射線影響や治療に関する研究成果の世界への発信と、緊急被ばく医療体制及び国際的防護基準の枠組み整備に貢献するべく取り組んで行く。

福井大学の取組み

国立大学法人福井大学は、全国有数の原子力発電施設を有し地域住民が放射線に対して強い関心を持っている地域の特性から、放射線の平和利用の一環としての医学利用を推進してきた。平成6年にポジトロン断層撮影(PET)の基礎的・臨床的研究を推進する目的で高エネルギー医学研究センターを設置し、分子レベルからシステムレベルまでの幅広い領域を統合する機能画像研究、さらに分子レベルにおける異常の画像化をめざす分子イメージング研究に取り組んできた。

また、医学部附属病院では先の美浜原発事故時に最重症被災者2名を受け入れて診療にあたるとともに、放射線有効利用などの研究実績を地域に還元することを目的として先端医療画像センターを開設し、PET-CT、3T-MRI等を用いて画像診断に特化した「腫瘍ドッグ」「脳ドッグ」を実施している。

さらに、平成16年度には工学研究科に原子力・エネルギー安全工学専攻を設置し、原子力発電所及びその立地地域における安全性の確保、共生社会システムの模索、電力ネットワークの安定、技術移転による地域産業の活性化などの諸課題に関する実践的かつ多面的な教育・研究を行っている。

平成15年度より21世紀COEプログラム「生体画像医学の統合研究プログラム」が採択され、疾患を遺伝子発現異常として捉え、その異常を生理学、生化学、薬理学、分子生物学的原理に基づいて設計された標識分子プローブを用いることによりポジトロン断層撮影(PET)あるいは磁気共鳴画像装置(MRI)にて画像化する手法の開発と、得られた画像情報を基礎・臨床へ展開するための研究を進めている。さらに、高エネルギー医学研究センターを中心に準備を進めた「日本分子イメージング学会」が本年5月に設立され、分子イメージング研究の概念統一、啓発、研究者・施設間及び企業との交流・連携の促進を図っている。

本件の問い合わせ先

独立行政法人 放射線医学総合研究所 広報室
Tel:043-206-3026
Fax:043-206-4062
E-mail:info@nirs.go.jp