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ミラノでイタリアの粒子線治療を進めるCNAO財団との合同シンポジウムを開催 重粒子線がん治療の国際化を推進

掲載日:2018年12月26日更新
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放医研、ミラノで
イタリアの粒子線治療を進めるCNAO財団との合同シンポジウムを開催。重粒子線がん治療の国際化を推進。

概要

独立行政法人放射線医学総合研究所(NIRS,米倉 義晴理事長)・重粒子医科学センターの辻井博彦センター長らは、同センターが実施している重粒子線がん治療が世界的な評価を得ていることを背景として、ヨーロッパ諸国においてシンポジウムを開催するなどの国際的な普及活動に力を入れています。本年2月には、「がんの炭素線治療」に関するシンポジウムをオーストリアのインスブルック医科大学において開催し、大きな成果を収めました。こうした国際活動を進める一環として、イタリアの粒子線治療を推進するCNAO財団とともに「NIRS-CNAO炭素線治療に関する合同シンポジウム」を本年11月27・28日、ミラノ市内で開催します。

放射線医学総合研究所は、永年にわたって蓄積された臨床研究成果をもとに重粒子線治療の国際的な普及をはかるとともに、世界的な重粒子線治療ネットワークを構築することにより臨床情報の交流を進め、より高度な研究開発への取組みを進めています。放射線の医学利用の最前線とも言うべきがん治療において、我国の先進医療技術である重粒子線治療が世界の主導的役割を果たすことは、きわめて意義深いものと考えられます。

背景

がんの撲滅は、人類共通の課題であることは言うまでもありません。放射線医学総合研究所が、重粒子線がん治療装置(HIMAC)を用いて1994年6月から開始した重粒子線治療の登録患者数は、2006年8月末現在、2,867名を数え、優れた治療成績を挙げています。同治療法は、なんらかの理由で手術の困難ながんや深部のがんの治療法として特に優れた治療効果を上げ、2003年11月からは、厚生労働省承認による高度先進医療としての治療を開始しています。

重粒子線治療に対する評価は日本国内に留まらず、海外においても注目されています。特にヨーロッパ諸国における重粒子線がん治療に対する評価は高く、既に原子核実験用の重イオンシンクロトロンを用いて治療を開始しているドイツ・ダルムシュタットの重イオン科学研究所(GSI)をはじめとして、ドイツ(ハイデルブルグ)、イタリア、オーストリア、フランスでは炭素イオン線を用いた治療を目指した新しい施設の建設計画が進行しています。

今回は、イタリア・ミラノ郊外のパヴィアにおいて治療施設を建設し同国の粒子線治療を推進しているCNAO財団と、世界で最も豊富な重粒子線治療の臨床治療実績を持つ日本の放射線医学総合研究所とが合同シンポジウムを開催することにより、欧州における重粒子線治療を牽引する役割を果たすことが期待されます。

シンポジウム

シンポジウムはミラノ市内で、11月27・28日の二日間にわたって開催されます。イタリア側主催者の歓迎セレモニーの後、CNAOプロジェクトの現状、アメリカとヨーロッパにおける粒子線治療プロジェクトの現状と問題点、放医研の炭素線治療の概要、重粒子線の基礎的研究成果(組織線量測定技術、生物学的影響等)、放医研での種々のがんに対する治療成績等に関する計28演題が討議されます。

放射線医学総合研究所では、すでに3,000名近いがん患者に対して炭素線治療を行っており、世界に類を見ない貴重な臨床データを蓄積しています。本シンポジウムでは、頭頸部がん、脳腫瘍、肺がん、肝がん、直腸がん、膵臓がん、前立腺がん、骨がん、子宮がん等、各種のがんに対する炭素線治療の成績を報告する予定で、重粒子線治療の国際化を目指す放射線医学総合研究所の目的を達成するうえできわめて重要な機会となります。

さらに、本シンポジウムでは重粒子線治療装置の小型普及機の紹介も行われる予定であり、重粒子線治療の世界的な普及への大きな弾みとなるものと思われます。

CNAO財団の概略とシンポジウムの意義

イタリアでは1991年に粒子線治療プログラムが開始され、2001年にはイタリア政府の100%出資による非営利組織CNAO財団が設立されました。同財団の目的は、ミラノに近いパヴィア市に炭素線または陽子線によるがん治療を行うことを目的とした加速器施設と病院(イタリア国立粒子線がん治療センター:CNAO)を建設・運営することであり、実際のがん治療は建設終了後1年以内に開始される予定になっています。このような時期、同財団が世界で最も豊富な重粒子線がん治療の臨床データを蓄積する日本の放射線医学総合研究所と協力し、NIRS-CNAO合同シンポジウムをミラノで開催することは、同国の粒子線治療を進展させる上で大きな意味を持ちます。また、本シンポジウムの開催中に、放射線医学総合研究所とCNAO財団との間で国際共同研究に関する覚書を締結する予定であり、これによって両研究機関間の研究交流、人的交流が促進され、両機関の基礎的研究および臨床成果において大きな相互利益を得られることが期待されます。

本件の問い合わせ先

独立行政法人 放射線医学総合研究所 広報室
Tel:043-206-3026
Fax:043-206-4062
E-mail:info@nirs.go.jp