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放医研の重粒子線がん治療、登録患者数が、延べ3,000名 (うち、高度先進医療は1,000名) に到達 2007年1月26日、東京国際フォーラムでの公開市民講座で成果を発表

掲載日:2018年12月26日更新
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概要

独立行政法人放射線医学総合研究所(米倉義晴理事長)重粒子医科学センターの辻井博彦センター長は、同センターが実施している重粒子線がん治療の登録患者数が、3,000名の大台に達したことを発表しました。

重粒子線がん治療装置(HIMAC)を用いて1994年6月より開始された重粒子線がん治療の登録患者数は、2005年度末を以って2,629名に達していましたが、2006年度においても順当に進捗し、2006年11月13日、延べ3,000名の登録患者数に到達しました。重粒子線がん治療は、なんらかの理由で手術の困難ながんや従来の方法では治療が難しいがんの治療法として優れた治療成績を上げ、2003年11月からは、厚生労働省承認による先進医療としての治療を開始しています。こうした中で、患者数の多い非小細胞型肺がんや肝細胞がんなどは、研究の進展に伴い適性線量を用いた短期間の小分割照射によってさらに高い治療効果が得られる可能性が認められたことから照射回数の短縮が図られ、結果として登録患者数の増大に貢献してきました。例えば、臨床試験開始時点では、6週間18回照射による第I/II相臨床試験で開始された非小細胞型肺がんは、現在1回照射による治療を実施、肝細胞がんにおいても現在、2回照射による治療が実施されています。また、通常の放射線治療では、平均40回と多くの照射回数を要する前立腺がんについても、重粒子線治療では16~20回(4~5週)まで治療回数(期間)が短縮されています。重粒子線がん治療全体の平均照射回数は12回となっており、他の放射線治療による照射回数より大きく短縮されています。この実績は、固形がん治療において、外科治療と並ぶ第一選択肢としての重粒子線治療の可能性を大きく高め、難治性患者の身体的負担を軽減すると同時に、稀少な重粒子線がん治療施設を効率的に運用する面からも注目されます。

放射線医学総合研究所では、こうした成果を踏まえ2007年1月26日千葉大学との共催による公開市民講座「遺伝子治療と重粒子線がん治療の進展」を開催し、詳細を紹介します(添付資料参照)。

背景と今後の展開

がんの撲滅は、人類共通の課題であることは言うまでもありません。放射線医学総合研究所が、重粒子線がん治療装置(HIMAC)を用いて1994年6月から開始した重粒子線治療に対する評価は日本国内に留まらず、海外においても注目されています。特にヨーロッパ諸国における評価は高く、既に原子核実験用の重イオンシンクロトロンを用いて治療を開始しているドイツ・ダルムシュタットの重イオン科学研究所(GSI)をはじめとして、ドイツ(ハイデルブルグ)、イタリア、オーストリア、フランスでは炭素イオン線を用いた治療を目指した新しい施設の建設計画が進行しています。最近では、イタリア・ミラノ郊外のパヴィアにおいて治療施設を建設し同国の粒子線治療を推進しているCNAO財団と、日本の放射線医学総合研究所とが合同シンポジウムを開催し、欧州における重粒子線治療を牽引する研究協力協定が締結されました。

こうした中、放射線医学総合研究所による重粒子線治療の登録患者数が、3,000名を超えたことは、世界に類を見ない臨床治療データ数を蓄積することにより、国際的に顕著な優位性を示すものとして注目されます。

放射線医学総合研究所は、国内において重粒子線治療装置小型普及機の建設計画の進行している群馬大学との協力を手始めとして、同治療法の全国的な展開を図ります。また、世界で最も豊富な重粒子線治療の臨床治療実績をもとに、治療法の国際化を推進する国際ネットワークを構築していきます。

参考資料

放医研における重粒子線治療の登録患者数推移
(表1)放医研における重粒子線治療の登録患者数推移
放医研における重粒子線治療の部位別登録患者数
(図1)放医研における重粒子線治療の部位別登録患者数

本件の問い合わせ先

独立行政法人 放射線医学総合研究所 広報室
Tel:043-206-3026
Fax:043-206-4062
E-mail:info@nirs.go.jp