放医研、トラキア大学(ブルガリア)との研究協力覚書を締結
がんのスピン標識プローブを中心とした
分子イメージング研究で協力を強化
概要
国立研究開発法人放射線医学総合研究所(理事長:米倉 義晴以下、放医研)とブルガリアのトラキア大学(学長:Ivan Stankov)は、この程、分子イメージング研究、特にMRI(核磁気共鳴画像法、Magnetic Resonance Imaging)/EPR(電子スピン共鳴法、Electoron Paramagnetic Resonance)を用いたがん診断におけるスピン標識プローブの技術開発において互いの得意分野における技術を提供し、新たな診断技術の開発を推進するための研究協力覚書を締結しました。
この覚書は、放射線と人の健康にかかわる研究を総合的に推進してきた放医研が、第2期中期計画における重点課題のひとつである分子イメージング研究を拡充するため、同分野において特徴ある技術を保有し国際交流にも熱心なトラキア大学との間に密接な連携・協力体制を強化することを目的としています。
覚書締結の背景
放医研は、平成18年4月より開始した第2期中期計画の中で、従来より取り組んでいる重粒子線がん治療研究、放射線生体影響研究に加えて、研究所が保持する最先端の画像診断技術を駆使した分子イメージング研究を次世代の医療の進展に寄与する新たな重点研究分野として取り組んでいます。一方、こうした分野の研究では、国内外に存在する研究機関の設備や人的資源を有効に活用するための研究連携が不可欠であり、大学をはじめとする諸研究機関と積極的に包括的な連携協力協定を締結しています。本年1月には、先端医療に対する国際的な研究活動を連携して推進するため、光イメージング技術などのグローバルな研究活動を展開しているフランスのジョセフ・フーリエ大学との間で研究協力覚え書きを締結しました。
今回研究協力覚書を締結したトラキア大学は、MRI/EPRを用いたがん診断において、スピン標識プローブをはじめとする造影剤開発に優れた技術を所有しています。一方、放医研は、7T高磁場MRI装置をはじめとする総合的な分子イメージング研究体制を保有し、MRIによる分子イメージング研究分野においても、先端的な研究を展開しています。今回の協定締結により、両機関の優れた特徴を合わせた新たな分子イメージング技術開発への取り組みが可能になります。
参考 トラキア大学
トラキア大学は、東欧ブルガリアで最も歴史有る街のひとつであるスタラ・ザゴラにあり、医学部、獣医学部、農学部などの学部組織の他、専門学校や附属病院を擁するブルガリア屈指の総合的教育・研究機関です。特に附属病院は全診療科に366床と584人の職員を備えた総合病院で、ブルガリア南東部(トラキア地方)では最高レベルの診断と治療が行われています。分子イメージング研究分野においても、分子プローブ、ESR法などに特徴ある優れた技術を保有しており、世界的に高く評価されています。
覚書に記載される協力内容は、以下の通りとなっています。
協力分野
- がんの診断及び治療用のためのスピン標識プローブの、合成に関する研究
- がんの分子イメージングへのスピン標識プローブの、応用に関する研究
- がん治療の放射線誘発光学的治療へのスピン標識プローブの、応用に関する研究
- スピン標識プローブを用いての、がん細胞の選択的致死機構解明に関する研究
協力形態
- 学術情報の交換
- 研究者ならびに専門家の交流
- その他相互に合意される研究協力
有効期間
覚書の有効期間は、締結日より2年間としています。
本件の問い合わせ先
国立研究開発法人 放射線医学総合研究所 広報課
Tel:043-206-3026
Fax:043-206-4062
E-mail:05;nfo@nirs.go.jp