平成27年12月7日
国立研究開発法人 理化学研究所
国立研究開発法人 放射線医学総合研究所
発表のポイント
- 学名はげっ歯類由来のフィラメント状細菌を意味する「フィロバクテリウム・ローデンティウム」
- 効率の良い単独培養法を開発、遺伝子解析などにより新種であることを証明
- 細菌の病原性獲得機構の解明に新たな展開を期待
理化学研究所(理研)バイオリソースセンター実験動物開発室の池郁生専任研究員、微生物材料開発室の坂本光央研究員、放射線医学総合研究所(放医研)研究基盤センター生物研究推進課の小久保年章課長らの共同研究グループは、マウスやラットに肺炎を起こす未分類細菌のさまざまな基本性質を調べ、この細菌が分類学の「科」レベルで新しい生物群であることを明らかにし、フィロバクテリウム科(Filobacteriaceae)フィロバクテリウム属のフィロバクテリウム・ローデンティウム(Filobacterium rodentium)(種)と命名しました。
この細菌は、マウスやラットに慢性呼吸器疾患を起こすグラム染色陰性のフィラメント状桿菌で、感染場所と形状の特徴から「CAR(カー)バチルス」(呼吸器線毛付着桿菌)と呼ばれてきましたが、学名は付けられていませんでした。それはカーバチルスが通常の寒天培地で増殖できず、基本性質を調べることが困難だったからです。
共同研究グループは、ラットから分離されたカーバチルスの試験管内培養の改良に成功し、発育温度や耐塩性、pH依存性、菌体脂肪酸組成、16S rRNA遺伝子配列を用いた系統樹解析などのさまざまな基本性質を調べました。それらの結果をもとに、カーバチルスが分類学の「科」レベルで新しい生物群であることを提案し、論文が分類学の専門誌に受理されました。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金、森永奉仕会研究奨励金(2011年度)、財団法人旗影会特別助成(2011年度、2012年度)などの支援を受けて行われました。成果は、英国の科学雑誌『International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology』に発表されるのに先立ち、先行版が(10月16日付け:日本時間10月16日)に掲載されました。