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重粒子線の特徴や医学利用について

掲載日:2018年12月26日更新
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放射線Q&A:重粒子線関係

重粒子線の医学利用

重粒子線とはどんな放射線か

エックス線やガンマ線は、電磁波の一種で光の仲間です。電子は非常に軽い粒子です。それよりはるかに重く、大きい粒子を順にならべると、図のようになります。自然界の放射線のひとつとしてよく知られているアルファ線は、へリウム粒子が高速度に加速されたものです。もっと重く大きい炭素、ネオン、シリコン、アルゴンなどの粒子を高速度に加速すると重粒子線といわれる放射線になります。

粒子の大きさ

粒子の大きさの画像

X線やガンマ線は、電磁波の一種です。陽子線、速中性子線、重粒子線(炭素、ネオン、アルゴン等)は、粒子線とよばれています。

重粒子線による治療の特徴

放射線で治療をおこなう場合、がんの種類や進み具合によって放射線をつかいわけることも必要です。エックス線やガンマ線で治りにくいがんには、より治療効果の大きい放射線をもちいなければなりません。重粒子線は、X線、ガンマ線や陽子線にくらべこの治療効果が大きい放射線です。

一方、よりよい放射線治療をおこなうためには正常組織に対する障害が少ない放射線をもちいることも大切です。ガンマ線や速中性子線をつかった治療では、身体表面ちかくでもっとも線量が強く、深くすすむにつれて減弱します。このことは、深部のがんを治療する場合、放射線が患部にとどくまでに正常組織が障害をうけやすく、また、がんを通りこしてもっと深部にまで影響を与える危険性があります。

これにくらべて、陽子線や重粒子線の場合は、照射するときのエネルギーによってある深さに大量の線量を与え、その前後に与える線量は少ないので、線量がピークになる部分をがんの患部にあわせることにより、正常組織の障害を少なくすることができます。

このように、重粒子線には、がんに対する治療効果がより大きく、かつがんに集中的に照射することができるという優れた特徴があります。

重粒子線はどんながんに有効か

重粒子線でがん治療をおこなうと、いままでのX線、ガンマ線や陽子線では治療が困難であったがんの治療にも希望がもてるものと期待されます。これまでの臨床試験から、頭頸部のがんでこれまでの放射線では治療が難しい種類のもの、何らかの理由で手術ができない早期肺がん、他の治療法では治療困難な肝がん、手術できないような骨の腫瘍などに重粒子線が有効であることがわかってきています。

各種放射線の線量分布

各種放射線の線量分布の画像

重粒子線がん治療装置

放医研が建設をした重粒子線がん治療装置は、図に示すようなものです。まず、イオン源で炭素、シリコン、アルゴンなどの原子の電子を一部とりのぞきます。そして、線形加速器でその粒子を光の10分の1ぐらいの速さに加速し、炭素の薄膜を通して残りの電子を全部とりのぞきます。さらにこの粒子をシンクロトロンという加速器で、体の奥深くまで粒子が到着できるエネルギーまで加速して各治療室などに送ります。これが治療につかわれる重粒子線です。

画像:重粒子線がん治療装置