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量子医学・医療部門

重粒子線回転ガントリーの紹介

掲載日:2019年6月26日更新
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粒子線がん治療において、イオンビームを任意の角度から患者に照射できる回転ガントリーは陽子線施設では標準装備されていますが、炭素線施設では、搭載される電磁石に必要な磁気剛性が陽子線に比べ約3倍高いことから、電磁石及びそれらの支持構造体が非常に大型となるため、国内ではこれまで装備されていませんでした。世界に目を向けると、重粒子線回転ガントリーは唯一、ハイデルベルクで稼働中ですが、その全長は25m、重量は600トンと報告されています。我々は重粒子線回転ガントリーの小型・軽量化のため、超伝導電磁石を搭載する世界初の回転ガントリーの実現に向けて取り組み、全長13m、重量300トンと大幅な小型化・軽量化を実現しました。

本ガントリーは回転体を回すことでどの角度からでも重粒子線をピンポイントに照射できるので、従来のように治療台を傾ける必要がありません。また、脊髄や神経などの重要器官を避けて細かく角度を調節し、多方向から照射することで、腫瘍への線量分布をさらに高めることが可能です。治療時の患者の負担を軽減するだけでなく、治療後の障害や副作用の更なる低減が期待でき、より患者にとって優しい治療が実現できます。

重粒子線回転ガントリーと治療室

ガントリーの特長

超伝導電磁石の実装における重要な点として、直接冷却方式の小型冷凍技術を応用することで、液体ヘリウムをほとんど使用せずに超伝導コイルを4K(ケルビン)以下まで冷却し、超伝導状態を維持できる装置としたことです。これにより、一般の医療施設でも容易に扱うことができ、万が一の事故においてもヘリウムガスによる窒息の心配のない極めて安全な装置となりました。
次に重要な点として、一般的な超伝導電磁石の弱点である振動や磁場変化に弱いという課題を克服しました。磁石内部の構造を工夫することで、ガントリーを回転・停止させても、回転体上の磁石の超伝導状態を維持できます。また、特殊な超伝導線材を使用することで、治療中(約1分間)に磁場を1T(テスラ)から2.9Tまで大きく変化させても超伝導状態を維持でき、安定して照射することができます。振動や磁場変化に強いことは、回転ガントリーに採用されている3次元スキャニング照射において、非常に重要な役割を果たします。

ガントリー治療室

下図に示すとおり、患者がロボット制御の治療台の上に寝ると、照射口が回転して最適な角度から、3次元スキャニング照射装置によって腫瘍の形状に合わせた重粒子線が照射されます。また、照射口の両側に2つのX線検出器を設置し、体内のX線透視により腫瘍周辺を直接観察することで、呼吸で動く腫瘍の位置をリアルタイムに計算しながら照射するX線呼吸同期装置を導入しています。そのためX線透視による呼吸同期と3次元スキャニング照射を組み合わせた治療が可能です。

ガントリー治療室内のX線透視システム

期待される成果

回転ガントリーにより、腫瘍が重要器官を囲むようなケースに対しても、3次元スキャニング照射装置と組み合わせることで、従来にもまして脊髄や神経などの重要器官を避けて、腫瘍に線量を集中できることから、治療後の障害や副作用の更なる低減と、抗腫瘍効果の向上が期待されます。また、照射角度の変更の際の段取替時間が短縮されることで、治療のスループットの向上が期待できます。
下図は、重要臓器を示す中央の白丸部分を囲む扇形の腫瘍に5つの方向から重粒子線を照射した場合の例です。中央の大きな円は全て足し合わせたときの線量分布を示しており、集中して照射されている部分を赤く示しています。多方向から最適な線量分布を与えることで、治療に必要な線量を腫瘍の部分に集中させ、重要臓器にほとんど線量を与えていないことがわかります。

回転ガントリーを使用した重粒子線治療の照射例

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