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放射線高度利用施設部

AVFサイクロトロンの概要

掲載日:2019年6月18日更新
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AVFサイクロトロン

  本装置は、AVFサイクロトロン本体、イオン源系、イオン入射系、外部ビーム輸送系、計算機制御系、冷却・圧空系及び付帯設備等より構成されています。本システムの主な特徴は、次のとおりです。  

(1) 3台の外部イオン源(ECR型3台)を装備しており、軽イオンから重イオンまでを加速することができ、豊富なイオン種と広いエネルギー範囲が得られます。
(2) ビームチョッパーにより単一パルスビームの照射実験が可能です。また、ビームスキャナーが3台設置されており、軽イオンから重イオンまでを広い面積(最大10cmX10cm)で、均一に照射できます。
(3) 安全かつ効率的に運転できるよう全系にわたって計算機制御がなされています。
   

主な諸元と性能

 本施設に設置されているのは、住友重機械工業(株)製の930型AVFサイクロトロンです。サイクロトロンの主な諸元と性能を表3.1に示します。サイクロトロンからイオンビームを引き出す半径が923mmで、K値は110MeVです。角度86°の2つの加速ディー(Dee)電極をもち、最大電圧60kVでイオンを加速できます。加速可能な粒子は、M/Qが1~6.5(M:質量、Q:電荷)の範囲のものであり、加速ハーモニックスは、1、2及び3が可能となっています。
 現在、利用者に供給できるイオン種とビーム条件を表3.2に示します。この表にないイオン種・エネルギーのビームを利用するためには、別途そのための「新ビーム開発」運転が必要となります。

 表1.1 サイクロトロンの主な諸元と性能

サイクロトロン本体   重イオン源生成電流
形式   AVF型       Ar9+    160eμA
機種   住友重機 930       Ar13+     2eμA
K値   110       Kr20+     2eμA
引出半径   92.3cm      
セクター数   4   加速エネルギー範囲
ディー電極数   2    軽イオン  H+    5~90MeV
ディー角度   86°          D+    5~53MeV
最大ディー電圧   60kV         4He2+    10~108MeV
RF周波数範囲   11~22MHz    重イオン 2.5×M~110×Q2/M(MeV)
共振器 ムービング・ショート方式      
加速ハーモニック・モード     1, 2, 3   ビーム輸送系
加速粒子範囲 M/Q   1~6.5    主ビームコース数   8本
ビーム引出効率   70%以上    副ビームコース数   5本(垂直4本)
エネルギー半値幅   0.5%以下      
ビームエミッタンス(80%値)  15.9 πmm・mrad以下   照射方式の特徴
      (1)大面積均一照射(スキャン)方式  
イオン源及び入射系      軽イオン   100mm×100mm
  イオン源設置方式   外部イオン源      重イオン    50mm×50mm
  入射方法   外部垂直入射      
  軽イオン源   NANOGAN   (2)パルスビーム  
  重イオン源   ECR型、HECR     パルス化方式 矩形波形(入射系)+
正弦波形(輸送系)
  インフレクター   スパイラル型  
        最少パルス幅 ~2ms
軽イオン源生成電流     パルス間隔 1μs ~1ms
      H+ 1emA以上      
      D+ 1emA以上   制御系 計算機制御
      He2+ 300eμA      

表1.2 サイクロトロンで利用可能なビーム条件(2017年11月現在)

(1)軽イオンビーム

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pμA) 備 考
第1・第2軽イオン室 第3軽イオン室
H+ 10
12
14
18
20
25
30
34
38
45
50
55
60
65
2.5
3.5
4.0
3.5
6.0
8.0
3.0
3.0
3.0
4.0
4.0
4.0
3.0
3.0
2.5
3.5
4.0
3.5
4.5
4.5
3.0
3.0
3.0
4.0
3.4
2.9
2.3
2.0
重イオン室における軽イオンの利用可能ビーム強度については、お問い合わせください。

70
80

2.5
1.5
1.6
1.2
利用に際しては、十分な調整時間が必要なため、あらかじめ、ご相談ください。
90 1.0 1.0 現在利用不可。利用については、ご相談ください。
D+ 10
12
20
25
35
41
50
5.0
5.0
5.0
9.0
5.0
3.0
3.0
5.0
5.0
5.0
5.0
4.4
2.2
2.2
重イオン室における軽イオンの利用可能ビーム強度については、お問合わせください。
3He2+ 60 1.5 1.5
4He2+ 20
30
50
75
80
100
107
1.5
1.5
4.0
3.0
3.0
2.5
0.5
1.5
1.5
2.0
2.0
2.0
1.6
0.5

(2)重イオンビーム

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pnA) 備 考
第1・第2重イオン室 第3~第5重イオン室
11B3+ 60 800 800 全ての重イオンは、軽イオン室でも利用できます。
12C3+
12C5+
12C6+
75
220
320
660
80
0.33
500
28
0.33
15N3+
14N3+
14N5+
56
67
190
83
1000
15
83
750
15
16O3+
16O4+
16O5+
16O6+
16O7+
16O7+
60
100
100
160
225
335
800
750
300
250
20
4.3
800
500
300
250
20
4.3
20Ne4+
20Ne6+
22Ne6+
20Ne7+
20Ne8+
75
120
164
260
350
50
160
0.5
700
40
50
160
0.5
71
30
28Si5+
28Si5+
28Si10+
75
98
390
150
100
15
150
100
15
36Ar8+
40Ar8+
40Ar8+
40Ar10+
40Ar11+
40Ar13+
40Ar14+
195
150
175
250
330
460
520
250
62
250
10
35
3.8
5
250
62
250
10
35
3.8
5
56Fe11+
56Fe15+
200
400
120
35
120
35
 
58Ni15+ 388 0.67 0.67  
84Kr17+
84Kr18+
84Kr20+
322
400
520
2.9
1.6
2.5
2.9
1.6
2.5
84Kr20+ に少量の63Cu15+が混入する場合があります。利用の際は、ご相談ください。
102Ru18+
102
Ru22+
320
505
0.56
2.2
0.56
2.2
 
129Xe23+
129Xe25+
129Xe24+
129Xe26+
192Os30+
450
454
490
560
490
4.5
0.5
5
0.2
0.3
4.5
0.5
5
0.2
0.3
 
197Au31+ 500 0.32 0.32 現在利用不可。利用については、ご相談ください。

(3)カクテルビーム [M/Q=2]

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pnA) 備 考
第1・第2重イオン室 第3~第5重イオン室
4He2+ 107 0.5 0.5 12C6+ に少量の16O8+が混入する場合があります。利用の際は、ご相談ください。
12C6+ 320 0.33 0.33

(4)カクテルビーム [M/Q=2.86]

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pnA) 備 考
第1・第2重イオン室 第3~第5重イオン室
20Ne7+ 260 700 71  
40Ar14+ 520 5 5

(5)カクテルビーム [M/Q=4]

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pnA) 備 考
第1・第2重イオン室 第3~第5重イオン室
12C3+
16O4+
40Ar10+
75
100
250
660
750
10
500
500
10
12C3+,16O4+,40Ar10+は互いに少量が混入する場合があります。利用の際は、ご相談ください。
22Ne6+ の164MeVの同時利用については、イオン源が異なり試料の準備が必要なため、事前に了解を得てください。
22Ne6+ 164 0.5 0.5

(6)カクテルビーム [M/Q=5]

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pnA) 備 考
第1・第2重イオン室 第3~第5重イオン室
15N3+
20Ne4+
40Ar8+
84Kr17+
129Xe25+
56
75
150
322
454
83
50
62
2.9
0.5
83
50
62
2.9
0.5
56Fe11+の200MeVを同一の実験で利用する場合は、イオン源が異なり試料の準備が必要なため、事前に了解を得てください。
56Fe11+ 200 60 60

(7)カクテルビーム [M/Q=5.3]

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pnA) 備 考
第1・第2重イオン室 第3~第5重イオン室
16O3+
129Xe24+
60
490
800
5
800
5
 

(8)カクテルビーム [M/Q=6.4]                      

イオン種 エネルギー
(MeV)
ビーム強度(pnA) 備 考
第1・第2重イオン室 第3~第5重イオン室
192Os30+
129Xe20+
84Kr13+
490
324
210
9.3
10.5
2.69
9.3
10.5
2.69
 
注1) 上記ビーム条件において、サイクロトロン装置で確認できる最小電流値は約1enAですが、さらにビームアッテネーターにより1/10毎に約1/1010まで減衰させることが可能です。
2) 単一パルス照射については、別途ご相談ください。
3) サイン波(S)型ビームチョッパーによる間引き(1/3~1/7:但しビーム条件による)によるパルス照射は、上記H 80 MeV及びH+ 90 MeVを除いた他のイオン種について可能ですが、事前に連絡して了解を得てください。
4) カクテルビームのイオン種は、カクテルビーム加速による短時間切換照射及び各イオン単体照射が可能です。カクテルビーム(M/Q=4、M/Q=5)を利用するにあたっては実験装置(利用者)側が粒子弁別等の方法により、対象外イオン種の混入の度合いをご自身で確認する必要があります。(なお、イオン源の変更が伴う切替の場合にはイオン種の切替ごとに約1時間程度の調整時間が必要になります)
   
  〔サイクロトロンに関する問い合わせ先〕
  イオン加速器管理課 サイクロトロン係 担当:吉田 (Tel:027-346-9352)

ビーム輸送系の性能

(1)概要

 ビーム輸送系の全体構成を、右図に示します。サイクロトロンから引き出されたイオンビームは、直線的にLAコースへ輸送され、LAコースの途中から25°偏向されるLEコースに輸送されます。分析電磁石(TAM)により80°偏向されたビームは、スイッチング電磁石(TSM)により、左に68°、55°及び40°偏向されるLB、LC、LDコースへ輸送されます。また、TSMにより右に74°、59°、12°偏向されたビームは、それぞれHA、HB、HCコースに輸送されます。 さらに、HCコースの途中から分析電磁石(TAMHE)により55°偏向されHEコースへも輸送されます。また、HDコースはTSMにより左に3°偏向されて輸送されます。LA、HA、HB及びHEコースには垂直に分岐するコースLX、HX、HY及びHZが 設置されており、このコースでは、垂直ビーム照射が可能です。
 各ビームコースの照射ポートの直前には、ビーム診断ステーションが設置されており、必要とするビーム情報が確認できます。ビーム輸送系の真空排気には磁気浮上式のターボ分子ポンプ(TMP)とイオンポンプ とが用いられ、各照射ポートにおける実験系との境界には、ゲートバルブと絶縁リングが設置されています。実験系との境界のフランジの規格は、UCF203-150RH(回転)または UCF203-150FH(固定)となっています。詳しくは、サイクロトロン係までお問い合わせください。
サイクロトロン実験ポート図
   

 (2)ビームサイズ

 表3.3に、各照射ポートのターゲット位置における最小ビームサイズ(設計値)を示します。ビームサイズの変更を希望される方は、サイクロトロン係までご相談ください。

    表3.3 各照射ポートにおけるビームサイズ

ポート名 最少ビームサイズ 備 考
X方向(mm) Y方向(mm)
LE1
LA1
LX1
LB1
LB2
LC0
LD1
HA1
HX1
HB1
HY1
HC1
HC2
HD1
HE1
HE2
HZ1
4.6
4.5
7.0
6.7
6.2
7.5
6.2
5.1
6.8
5.1
5.1
4.6
7.8
7.8
5.0
5.7
6.1
4.9
4.6
4.9
3.2
5.2
4.0
5.0
5.2
16.3
5.0
5.1
4.7
3.2
3.2
5.0
5.2
3.5
ISOL専用ポート
垂直照射、BSLX
中性子遮蔽実験専用ポート
BSLD
垂直照射、微小領域線量分布測定装置専用
垂直照射、BSHY
垂直照射

(3)パルス照射

 イオン入射系に設置されているパルス型チョッパー(Pチョッパー)と外部ビーム輸送系に設置されているサインウェーブ型パルスチョッパー(Sチョッパー)の組合せにより、単一パルスの照射が可能です。

Pチョッパーの仕様
パルス間隔 1μs~1ms
パルス電圧 0.5, 1.0, 1.5kV
パルス立ち上がり 200ns
 
Sチョッパーの仕様
周波数 1~3MHz
最大印可電圧 40kV
間引き率 1/3, 1/4, 1/5, 1/6, 1/7

 チョッピング制限:チョッピング性能の限界はプロトンの最大エネルギーで70MeVです。従って、70MeV以下ならチョッピングが可能です。詳しくは、サイクロトロン係までお問い合わせください。

(4)トリガー信号

 パルス実験のためにユーザーが使用できるトリガー信号は以下のとおりです。ただしf0は基本波の周波数です。

Pチョッパー
信号レベル TTLレベル(5V, 50Ω)
パルス幅 P型チョッパー出力信号と同等
位相安定度 ±5ns
 
Sチョッパー
信号レベル 0 dBm 
周波数 f0/2n 但しnは間引き率
位相安定度 ±3ns
 
サイクロトロン本体RF
信号レベル 10 dBm
周波数  f0
位相安定度 ±0.5°
     

 各信号は、サイクロトロン電源室内の電源ラックの端子及びサイクロトロン制御室から取ることができます。
詳しくは、サイクロトロン係までご相談ください。

(5)ビームスキャナ

 ビームスキャナ(BS)が設置されている照射ポートは、LX1、LD1及びHY1です。BSLX(LXコースのビームスキャナ)及びBSHYは垂直照射であり、BSLDは水平照射となります。いずれのスキャナも三角波を用いた磁場偏向方式により2軸独立走査が可能であり、ビーム最大偏向角1度、スイープピッチ1~10mm連続可変、フルエンス均一度±10%以下の性能を有しています。照射モードを選択して、一定時間照射する「時間制御」が可能です。

BSLXの性能
設定位置  LX1ポート
照射範囲
(2軸独立)
10~20mm連続で最大20×20mm
の面積まで照射可能
走査周波数 X軸方向では50Hz、Y軸方向は0.5,
1.0, 2.5及び5Hz
 
BSLDの性能
設定位置  LD1ポート
照射範囲
(2軸独立)
20~100mm連続で最大100×100mm
の面積まで照射可能
走査周波数 X軸方向では50Hz、Y軸方向は0.5,
1.0, 2.5及び5Hz
 
BSHYの性能
設定位置  HY1ポート
照射範囲
(2軸独立)
20~50mm連続で最大50×50mm
の面積まで照射可能
走査周波数 X軸方向では50Hz、Y軸方向は0.5,
1.0, 2.5及び5Hz
     

 なおビームスキャナについては、走査周波数とビームスポット形状との相関で、フルエンス分布に縞模様等が発生することがあります。参考資料等もありますので、詳しくは、サイクロトロン係までお問い合わせください。

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