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関西光科学研究所 | プレス発表:高強度レーザーを用いて世界最高エネルギー陽子線を発生 ―レーザーを使った小型粒子線がん治療へさらに一歩前進―

掲載日:2012年7月20日更新
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関西光科学研究所 >> プレス発表 >> 高強度レーザーを用いて世界最高エネルギー陽子線を発生 ―レーザーを使った小型粒子線がん治療へさらに一歩前進―

 

プレス発表

平成24年7月20日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
財団法人若狭湾エネルギー研究センター
国立大学法人神戸大学

発表のポイント

  • レーザーの集光技術とパルス成形技術を高度化することにより、小型化が可能なレーザー装置を使ったものとしては世界最高の加速エネルギーの陽子線を発生した。
  • 小型化が期待されるレーザー駆動粒子線がん治療装置実現にむけて大きく前進した。 

 

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木 篤之 以下「原子力機構」)量子ビーム応用研究部門の小倉 浩一研究員、ピロジコフ アレキサンダー研究副主幹、西内 満美子サブグループリーダーをはじめとする研究チームは、若狭湾エネルギー研究センター、神戸大学の協力の下、小型化が可能な高出力レーザーを利用した方法では世界最高となる40メガ電子ボルト注1以上の陽子線の加速に成功しました。

高強度レーザー光を薄膜に集光すると高いエネルギーの陽子線が発生することが知られていますが、この方法でより高い超高エネルギーの陽子線を発生するには、レーザーを可能な限り強く集光することが必要になります。小型化が可能なチタンサファイアレーザーを用いて薄膜に集光した実験では、これまで25メガ電子ボルト以上の陽子線は発生できませんでした。これは陽子線のエネルギーをより高くするためにレーザーを強くすると、それに伴ってレーザーパルスに付随する光ノイズ成分が強くなり、理想的な状態で高強度レーザーを薄膜に照射することが困難となるためです。

今回の研究では、レーザー集光技術とパルス成形技術を高度化することで集光強度注2 1021W/cm2以上の超高強度レーザーパルスを理想的な状態で薄膜に照射することを可能にしました。その結果、世界最高となる40メガ電子ボルトの陽子線発生に成功しました。

陽子線はがん患部近傍でエネルギーを放出するため、通常の放射線治療と異なり患部周辺組織への影響が少ないという特長を有しております。今回発生した40メガ電子ボルト以上の陽子線は、レーザーを使った粒子線がん治療という新しいがん治療法実現に向けた動物実験を実施するに十分なエネルギーです。この陽子線発生技術により、既存の粒子線がん治療装置の飛躍的な小型化を期待できます。なお、本研究成果は、近日中に米国光学学会誌「Optics Letters」に掲載される予定です。

詳細は下記をご参照ください。(国立研究開発法人日本原子力研究開発機構のサイトへリンク)

 

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