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セミナー
第52回KPSIセミナー
レーザー誘起振動波診断の最適化研究と医療への応用
講演者 | 三上 勝大 研究員 (関西光科学研究所 光量子科学研究部 X線レーザー研究グループ) |
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場所 | 関西光科学研究所 ITBL棟 G201号室 |
日時 | 2019年3月28日(木曜日)15時15分~ |
要旨 | [PDFファイル/231KB] |
レーザー誘起振動波診断の最適化研究と医療への応用
三上 勝大 研究員
(関西光科学研究所 光量子科学研究部 X線レーザー研究グループ)
概要
測定対象物にレーザーパルスを照射することで振動を誘起させ、その誘起振動を計測・解析する手法は「レーザー誘起振動波診断」もしくは「レーザー打音法」と呼ばれている。発表者は2015年度より内閣府イノベーション創造プログラム (SIP) に参画し、当該診断手法によるトンネルコンクリート構造物の内部欠陥検査を高速化すべく、高出力・高繰返しレーザー装置の開発に従事してきた [1]。その後、実験室内での高速化実証試験 [2]、屋外テントにおける動作試験 [3]、模擬トンネルでの実証試験を経て、2018年度には供用中の道路トンネルでの実証試験と、当該診断手法は着実なステップアップを遂げている。 レーザー誘起振動波診断における、加振原理はレーザーアブレーションである。従来のインフラ検査で用いられているハンマー等による加振と比較すると、レーザー加振は質量を持たない光子によるアブレーションを介した間接的な手法であり、その加振時間はパルス幅で決定するnsオーダーとハンマー等による数百s以上に対して桁違いに短い。従って、レーザー加振とハンマー等の加振によって生じる振動特性に違いが生じる可能性があるため、その違いを理解し、レーザーによる加振手法の最適化することが、当該診断手法の高効率化に向けて重要である。レーザー加振とハンマー等の加振の違いを明らかにするため、我々は内部模擬欠陥を有するコンクリート供試体に対して、鉄球を用いた振り子とレーザー光の2種類の加振手法で評価を実施した。評価の結果得られた、レーザー加振の特徴的な振動特性およびその最適化で得られる成果を紹介する。 また、当該診断技術はコンクリートの内部欠陥検査だけではなく、従来、打音検査で実施されているインフラ構造物の敷設物である埋設ボルト等の設置強度検査にも適応可能である。この埋設ボルトの設置強度診断に着目した医療への応用として、骨に埋設する固定ボルトや人工関節などの整形外科インプラントを対象にした研究を、慶應義塾大学医学部と共同で実施している。これまで、ポリウレタンフォーム製の模擬骨を用いた実証試験を成功させている。この成果を基に、ご献体骨を用いた実証試験や、術中使用を目指した装置および要素技術の開発について、実施状況を報告する。あわせて、当該診断技術の今後の研究展開について紹介する。
参照:
[1] K. Mikami et al., Jpn. J. Appl. Phys. 56 (2017) 082701.
[2] S. Kurahashi, K. Mikami et al., J. Appl. Remote Sens. 12 (2018) 15009.
[3] 岡田、長谷川、三上 他 レーザー研究 45 (2017) 427
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