現在地
Home > 関西光量子科学研究所 > 関西光科学研究所 | 【現地及びweb開催】第80回KPSIセミナー 海底開発における環境影響評価に向けた水中レーザーリモートセンシング技術の開発

関西光量子科学研究所

関西光科学研究所 | 【現地及びweb開催】第80回KPSIセミナー 海底開発における環境影響評価に向けた水中レーザーリモートセンシング技術の開発

掲載日:2021年9月7日更新
印刷用ページを表示

関西光科学研究所 >> KPSIセミナー >> 海底開発における環境影響評価に向けた水中レーザーリモートセンシング技術の開発

セミナー

第80回KPSIセミナー(現地及びweb開催)

海底開発における環境影響評価に向けた水中レーザーリモートセンシング技術の開発

 

講演者 染川 智弘主任研究員
((公財)レーザー技術総合研究所、大阪大学レーザー科学研究所)
日時 2021年9月28日(火曜日)13時00分~
使用言語 日本語
要旨 [PDFファイル/439KB]

海底開発における環境影響評価に向けた水中レーザーリモートセンシング技術の開発

染川 智弘主任研究員
((公財)レーザー技術総合研究所、大阪大学レーザー科学研究所)

概要

日本の領海・排他的経済水域は国土の面積の12倍程度も大きく、レアアースに代表される海底鉱物資源やメタンハイドレートの採掘、CO2を海底地層に圧入して大規模削減を目指すCCS (Carbon dioxide Capture and Storage)、石油などのエネルギー資源を輸送する海底パイプラインなどの有効な海底利用が期待されている。海底開発では資源探査手法の開発だけでなく、海底インフラのメンテナンスや事故の早期発見、海底開発に伴う海洋生態系・環境への影響評価が重要とされている。現状の採取・採水測定では評価の頻度や評価可能なエリアに限度があり、広範囲にわたる領域を短時間でモニタリングできる手法の開発が望まれる。筆者のグループでは、広範囲な海を効率よくモニタリングすることを目指して、海水中に含まれるガスや、油の濃度などを、遠隔からラマン散乱で測定するラマンライダー技術を開発中である1-6)

ライダー(LIDAR)はLight Detection And Rangingの略語で、天気予報でも良く使われる身近なレーダーの光源をレーザーに置き換えたものだと思ってもらえればわかりやすい。ライダー手法は、レーダーのように対象物質からの散乱信号を測定することで、対象物質を高空間分解能で可視化することが可能になるため、自動車の衝突防止システムなどに採用され注目を集めている。また、高輝度なレーザーでは、対象物質とのラマン散乱や、吸収、蛍光といった相互作用を観測することも可能であり、目では見えない物質を可視化することが可能であり、広く環境計測に利用されている。

ライダー手法は大気中での利用が主であり、水中への応用はあまり実施されていない。これは、水が光の良い吸収体であり、レーザーが水中で伝搬しにくいからではないかと思われる。しかし、水中の植物が光合成して生育していることからわかるように、全ての光が水中を通らないというわけではなく、紫外から緑色の波長領域の光は比較的効率良く水中を伝搬する。この紫外から緑色の波長領域には、Nd:YAGレーザーの第2、第3高調波である波長532、355nmなどがあり、ライダー観測で必要とされる高パルスエネルギーのレーザーパルスが比較的容易に利用できる。

本発表では、ライダー技術の一般的な紹介から、これらの技術をどう水中モニタリングに利用するかという基礎的な内容から紹介したい。レーザー光を船上から海へ照射可能な海上ラマンライダーシステムを開発し、沼津や竹富島近海で実施した海上観測の結果や、実験室に設置している6 mの長水槽を利用したライダー実験についても紹介し、開発途中ではあるが水中ライダーの普及の一助になれば幸いである。

References
[1] T. Somekawa, J. Izawa, M. Fujita, J. Kawanaka, and H. Kuze, Development of a Raman Lidar for Remote Sensing of Oils in Water, Appl. Opt., 60, 7772 (2021).
[2] T. Somekawa, J. Izawa, M. Fujita, J. Kawanaka, and H. Kuze, Remote detection of oils in water using laser Raman spectroscopy, Opt. Commun., 480, 126508 (2021).
[3] 染川智弘、ラマンライダーを利用した水中モニタリング手法の開発、レーザー研究、48、599 (2020).
[4] T. Somekawa, S. Kurahashi, J. Kawanaka, and M. Fujita, Development of the marine Raman lidar system, Proc. SPIE, 10791, 1079104 (2018).
[5] T. Somekawa and M. Fujita, Raman spectroscopy measurement of CH4 gas and CH4 dissolved in water for laser remote sensing in water, EPJ Web of Conferences, 176, 01021 (2017).
[6] T. Somekawa, A. Tani, and M. Fujita, Remote Detection and Identification of CO2 Dissolved in Water Using a Raman Lidar System, Appl. Phys. Express, 4, 112401 (2011).

 

[前の記事]
【web開催】第79回KPSIセミナー ブラックホールからのホーキング放射 ―基礎科学のための相対論的レーザーとチャレンジスピリットを用いたモデル実験の課題―
[次の記事]
【web開催】第81回KPSIセミナー 物性応用を目指した高強度極短パルスレーザーの開発

Adobe Reader

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe社が提供するAdobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。(無料)
Adobe Reader provided by Adobe is required to view PDF format files.