基盤技術グループでは、NanoTerasuにおける放射線遮蔽設計および、遮蔽構造の変更時に必要となる許可申請に関する業務を行っています。NanoTerasu全体の放射線安全を確保するために、直線加速器、蓄積リングおよびビームラインに至る施設全体の遮蔽設計を一元的に担当しています。NanoTerasuでは、3 GeVの高エネルギー電子ビームを用いた高輝度放射光を供給しており、その運転に伴いガス制動放射線、光子、中性子などの二次放射線が発生します。これらの放射線を適切に遮蔽するためには、施設の設計段階から科学的根拠に基づく遮蔽対策が不可欠です。
加速器施設で長年蓄積された経験式とモンテカルロ粒子輸送計算コード PHITSによる遮蔽設計により、初期設計から変更対応に至るまで、迅速かつ信頼性の高い遮蔽評価を実現しています。
今後のビームライン増設や高出力化、装置更新などにも対応可能な柔軟な体制を整えており、NanoTerasuの安全運転を支える重要な役割を担っています。
遮蔽設計業務
基盤技術グループでは、NanoTerasuの遮蔽設計全体を担当し、施設の構造物ついて遮蔽性能を評価・確保しています。
設計にあたっては、加速器施設における実績や文献に基づいた経験式とモンテカルロ粒子輸送計算コード PHITSを用いて遮蔽評価をしています。
これにより、計算精度と評価の実用性のバランスを取りながら、加速器からビームラインまでの各構造に対して、安全かつ合理的な遮蔽厚や構造仕様を導き出しています。
具体的な設計対象は以下の通りです。
- 加速器トンネルの遮蔽コンクリート・遮蔽扉
- ビームライン(光学ハッチ・実験ハッチ)の遮蔽構造
- ケーブルダクトや貫通孔
設計に際しては、PHITSによる詳細な線量分布解析とともに、遮蔽設計の初期段階や変更評価では、文献ベースの遮蔽減弱係数・経験式・簡易計算式を活用し、迅速かつ妥当性のある遮蔽厚見積もりを行っています。
変更許可申請業務
装置の改造、ビームライン構成の変更、新設機器の導入などにより遮蔽構造に変更が生じる場合や加速器のビーム条件(エネルギー・電流・出力など)を増強する場合も、遮蔽性能への影響を評価し、監督官庁へ変更許可申請を行う必要があります。
こうした変更に伴う手続きを適切に行うため、次の業務を実施しています:
- 技術資料の整備(遮蔽計算書、設計図面など)
- 監督官庁への変更許可申請書類の作成および提出
- 審査時の技術的照会対応および書類修正
- 工事または運転条件変更後の遮蔽性能確認と実測評価
このような体制により、設計変更や運転条件変更に対しても、安全性と法令順守を両立させた対応を実現しています。
お問い合わせ
基盤技術グループとの共同研究等に関しては下記連絡先までお問い合わせください。
量子科学技術研究開発機構 NanoTerasuセンター
基盤技術グループリーダ 萩原雅之 E-mail: hagiwara.masayuki[at]qst.go.jp