マウスの凍結受精卵が国際宇宙ステーションから帰ってきました
放医研では宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で「ISS搭載凍結生殖細胞から発生したマウスを用いた宇宙放射線の生物影響研究(Embryo Rad)」を行っています(2015年4月8日プレスリリース)。この研究のため、2015年4月15日に冷凍保存状態でISSに打ち上げられ保管されていたマウスの凍結受精卵が、約1年1か月ぶりに放医研に帰ってきました。
Space X社のドラゴン補給船に載って2016年5月11日22時19分にISSを出発し、2016年5月19日14時30分に成田空港に着後、JAXAの筑波宇宙センター(20日11時46分着)で比較実験用に地上で保管されていた凍結受精卵とともに(14時21分発)、15時55分に放医研に到着しました。凍結受精卵は、研究者らの手で凍結輸送用の梱包から取り出され、液体窒素中に保存されました。(輸送状況などの詳細はこちら:JAXAホームページ)
今後、これらの凍結受精卵を融解し仮親に戻して、個体発生、発生後の寿命や発がん及び遺伝子変異を調べる予定です。
図1.保管実験の流れ
凍結受精卵は、地上では液体窒素中に保存して輸送し、ドラゴン補給船、ISSおよびJAXAでは-95℃で冷凍保管した
図2.放医研に届いたサンプル(右:ISS保管サンプル入り、左:地上保管サンプル入り)
図3.ISS保管サンプル入りの梱包容器を開ける様子
図4.梱包容器からISS保管サンプルを取り出す様子
図5.液体窒素で冷やしながらサンプルケースを取り出す様子
図6.サンプルケースの数等を確認する様子
図7.サンプルケースをラックに移して液体窒素中に保管する様子
放射線影響研究部長 柿沼 志津子(左)
研究者の感想—宇宙から凍結胚が戻ってきました
私たちが作成したマウス凍結胚は、ISSに一年間搭載され、無事研究所に戻ってきました。この間、JAXA、NASAの関係者の方にお世話になりました。これから、凍結胚の保存状態の影響や放射線影響を確認し、その後マウス個体になるかどうか?マウス個体になった場合の寿命や発がんへの影響を解析していく予定です。どのような結果になるか、心配でもあり楽しみでもあります。