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文部科学省 平成20年度 原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブに採択

掲載日:2018年12月26日更新
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中村 秀仁 研究員
(基盤技術センター 研究基盤技術部 放射線計測技術開発室)

中村 秀仁 研究員の画像

基盤技術センター 研究基盤技術部 放射線計測技術開発室 中村 秀仁 研究員の研究課題「超高感度広エネルギー領域ガンマ線検出器CROSSの開発」が、このほど独立行政法人科学技術振興機構(Japan Science and Technology Agency)の平成20年度原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブに採択されました。

原子力に関する基礎的・基盤的研究は、原子力利用に係る技術基盤を高い水準に維持するとともに、新たな知識や技術を創出し、また、原子力を支える人材養成に資するなど、我が国における原子力の利用と発展を支えるものとして重要です。「原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ」は、我が国における原子力研究の裾野をひろげ、効率的・効果的に基礎的・基盤的研究の充実を図るため、政策ニーズを踏まえたより戦略的なプログラム・テーマを設定し、競争的環境の下に研究を推進することを目的とする競争的資金として、平成20年度に創設した制度です。

今回採択課題が発表された若手原子力研究プログラムでは、原子力分野の革新技術の探索や将来を担う研究者を育成するため、若手研究者が、斬新なアイディアに基づき、基礎的・基盤的な研究を行うプログラムの募集がありました。このプログラムに、中村 秀仁研究員(基盤技術センター 研究基盤技術部 放射線計測技術開発室)は、研究代表者として応募し、応募総数69件という狭き門をくぐりぬけ採択されました。採択された研究課題は「超高感度広エネルギー領域ガンマ線検出器CROSSの開発」です。

研究の必要性

原子力施設や医学、その他の分野において放射線源の使用が日々増加しています。設計および操作における安全防護にも関わらず、放射線源に関わる事故は生じます。これらの放射線事故ではいずれも、人々に対する影響は重篤である可能性があります。また、近年、がん検出、良悪性度鑑別、治療効果判定、再発診断、予後予測などの治療計画に反映できる情報を得るために、感度と定量性に優れる標識薬剤による陽電子断層撮影(PET)が臨床で広く使われるようになっています。このような検査および事故では、被験者、緊急作業者及び医療従者(医師、放射線技師、看護師)を防護するだけでなく、被験者の検査中の不安感を和らげるためにも、迅速かつ適切に判断できる高検出効率と高分解能を持つ放射線検出器が求められます。

研究目的

本研究は、従来ガンマ線検出器への適応に不向きとされていた有機シンチレータを無機シンチレータと複合化することにより次世代医療用診断装置CROSS【Correlation Response Observatory for Scintillation Signals】の実用化に向けた検出器の開発を行い、同検出器を用いて新しい検出原理(ガンマ線再構築法)による高検出効率、高分解能(エネルギー・位置・時間)で、α線・β線・γ(X)線に対する感度を実現することを目的するものです。この複合型シンチレータ検出器CROSSは、放射線の検出効率・分解能の技術的なブレイクスルーを実現するのみならず、放射線物理、地球環境物理などの様々な分野における放射線計測の基礎原理として普遍性を持つことになります。

CROSSモジュール

本研究では、短期間で医療用診断装置を開発し信頼性のあるものにするため、検出器のモジュール化を採用しました。CROSSは、1モジュールを2枚の有機シンチレータ板と1枚の無機シンチレータ板で構築し、複数のモジュールをターゲットの周りに配置する事で構成します(図1)。この検出器のモジュール化により、個別モジュールの性能評価が、最終形態の検出器へと活かすことができます。また、用途に合わせてモジュール数やサイズを変化させることで、多種多様の放射線検出器へと応用が可能となります。

CROSSモジュールの概要図
図1:CROSSモジュールの概要図

γ(X)線は、一旦有機シンチレータで散乱させ、散乱したガンマ線を無機シンチレータで吸収し、両シンチレータのエネルギーを足し合わせる事により、ガンマ線のピークを検出します(ガンマ線再構築法)。これに対してα線・β線は、有機シンチレータのみで検出します。

採択のことば

最後になりましたが、独立行政法人科学技術振興機構の皆様、選考委員の先生方には、私の研究活動をご支援頂けましたことを、この場をお借りして心より厚く御礼申し上げます。有難うございました。

基盤技術センター 研究基盤技術部 放射線計測技術開発室
中村 秀仁