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医学教育における被ばく医療関係の教育・学習のための参考資料の作成

掲載日:2018年12月26日更新
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医学教育における被ばく医療関係の教育・学習のための参考資料の作成-医学生の放射線防護・被ばく医療に関する素養涵養のために-

2012年4月6日
独立行政法人放射線医学総合研究所

本研究成果のポイント

平成23年3月に改訂された医学教育モデル・コア・カリキュラム※1の放射線防護、被ばく医療関係の項目に対応した教育・学習参考資料を作成

 2011年3月に文部科学省は医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成22年度改訂版)を公開しましたが、この改訂版では、社会的ニーズへの対応として、医療安全(患者および医療従事者の安全性確保)等の観点から放射線・電磁波の基本記載の修正、災害時の医療体制に関する修正と追加記載などが行われています。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに放射線防護への国民の関心が深まったことをも踏まえ、独立行政法人放射線医学総合研究所(以下、放医研)では、改訂された医学教育モデル・コア・カリキュラム中の、放射線防護・被ばく医療関係の項目等に着目し、被ばく医療を中心として医学生に教授すべき基本的な事項を体系的に整理した資料として「医学教育における被ばく医療関係の教育・学習のための参考資料」を作成しました。

 本資料は、放射線の物理的生物学的基礎から医学利用、防護、被ばく医療までの広い範囲を扱い、付録としてこの分野のチュートリアル教育のための学習課題及び基本用語集を収載しています。

 本資料は放医研のホームページに掲載され、どなたにでもダウンロードをして読めるようにするとともに、本資料は用語集を除いて英訳を行い、広く海外にもこの成果を普及させていきます。

医学教育における被ばく医療関係の教育・学習のための参考資料[PDF 12MB]

作成の背景と目的

 日本の大学における医学教育の基本については、2001年に、全医学部・医科大学の協力を得て、モデル・コア・カリキュラム-教育内容ガイドライン-が作成され、大学卒業時までに修得すべき総合的知識・技能・態度についての一般目標と到達目標が具体的に提示されました。この医学教育モデル・コア・カリキュラムと、全医科大学が共通で利用できる臨床実習開始前の標準評価試験システム(共用試験)により、日本の医学教育全体の品質の向上が図られています。

 その後、カリキュラムの改訂が検討され、2011年3月に医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成22年度改訂版)が公開されました。この改訂版では、社会的ニーズへの対応として、医療安全(患者および医療従事者の安全性確保)等の観点から放射線・電磁波の基本記載の修正、災害時の医療体制に関する修正と追加記載などが行われております。

 一方、東日本大震災に端を発する東京電力福島第一原子力発電所における原子力災害により、多くの国民が放射線、放射性物質の健康影響に関心を持つようになりました。医療現場では、被災された方々のみならず多くの国民の放射線、放射性物質の健康影響に関する質問などに対応するための基本的な素養が今まで以上に求められることが予想されます。更に、国民保護法※2に基づき、放射性物質等を用いたテロリズムから国民の健康と安全を守るためにも、医療関係者には放射線防護、被ばく医療に関する基本的な素養が求められます。

 こうした背景を踏まえ、放医研では、改訂された医学教育モデル・コア・カリキュラム中の、放射線防護・被ばく医療関係の項目等に着目し、昨年来検討を重ねた結果、医学生に被ばく医療を中心に教授すべき基本的な事項を体系的に整理した資料を作成しました。

本資料の特徴

 本資料は、目次にも示されているように、基本的事項として、放射線の物理的生物学的基礎から医学利用、放射線防護、被ばく医療までの広い範囲を扱っています。そのほかに、付録としてこの分野のチュートリアル教育のための学習課題及び基本用語集を収載しています。

 基本事項については、それぞれの単元において、改訂された医学教育モデル・コア・カリキュラムにおける関連記載事項、一般目標、到達目標、理解すべき要点、教授すべき必須事項、キーワード、概要の他、教授する側のみならず、医学生の自学自習の際の参考としても利用できるように例題とその答えと解説、上級者向け学習支援用教材を掲載しています。

本資料の今後の展望

 本資料は放医研のホームページに掲載され、どなたにでもダウンロードし活用いただけるようになっています。https://www.qst.go.jp/site/qms/1866.html  (教材資料・アニメーション)

 また、本資料の主要部分は英訳を行い、広く海外にもこの成果を普及させていくとともに、必要に応じて随時改訂を行う予定です。

 本資料が、我が国の医学教育における被ばく医療分野の教育・学習の一助となり、この分野に関心と素養を有する医療関係者が多く輩出されることを期待しています。

参考

「医学教育における被ばく医療関係の教育・学習のための参考資料」の主要目次

  1. 総論
    1.1 医師と放射線・被ばく医療
    1.2 歴史背景の理解
  2. 放射線等の基礎
    2.1 放射線・放射性物質とは何か
    2.2 測定、線量と単位
  3. 放射線の人体影響
    3.1 放射線の生物作用
    3.2 放射線の健康影響
  4. 放射線の医学利用
    4a.放射線診断
    4a.1 放射線診断の原理・実際と有害事象
    4a.2 核医学診断の原理・実際と有害事象
    4b.放射線治療
    4b.1 放射線治療の原理・実際と有害事象
  5. 放射線のリスクと防護
    5.1 放射線のリスク管理
    5.2 公衆被ばく
    5.3 職業被ばく
    5.4 医療被ばくと病院での被ばく
  6. 被ばく医療
    6.1 被ばく医療
    6.2 緊急被ばく医療体制
    6.3 チーム医療
    【付録1】チュートリアル学習課題例
    【付録2】予備知識のための基本用語集

用語解説

※1 医学教育モデル・コア・コアカリキュラム

 大学卒業時までに修得すべき総合的知識・技能・態度についての一般目標と到達目標が具体的に記載されており、特に臨床実習開始前までに習得すべき知識・技能のレベルも提示されている。

 2001(平成13)年3月、「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において、全医学部・医科大学の協力を得て作成され、その後2007(平成19)年12月に一部改訂が行われた。更に、2009年には、さまざまな社会的ニーズを念頭に置いた、改訂作業が進められ、その結果、2011年3月「改訂内容」が決定され、医学教育モデル・コア・カリキュラム(平成22年度改訂版)が公表された。

 医学教育モデル・コア・カリキュラムは以下のサイトからダウンロードすることができる。
 医学教育モデル・コア・カリキュラム

※2 国民保護法

 正式な名称は「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」第百五条から第百九条に「武力攻撃原子力災害への対処」について記載。また第七十五条には「救援の実施」として道府県知事は、「医療の提供及び助産」などが必要とされる場合に行わなければならないとし、第八十五条に「医療の実施の要請等」、第百三十六条に「医療の確保」についての記載がある。

プレスリリースのお問い合わせ

ご意見やご質問は下記の連絡先までお問い合わせください。

独立行政法人 放射線医学総合研究所 企画部 広報課
Tel:043-206-3026
Fax:043-206-4062

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