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光の色を変換するプラスチックの新メカニズムを発見

掲載日:2018年12月26日更新
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光の色を変換するプラスチックの新メカニズムを発見
~紫外光の可視光への変換等、広範な産業分野への応用が期待~

2013年8月26日
国立大学法人京都大学
独立行政法人放射線医学総合研究所

本研究成果のポイント

 京都大学 原子炉実験所 中村秀仁助教・((独)放射線医学総合研究所客員協力研究員・千葉市科学都市戦略専門委員)、高橋千太郎副所長・教授、佐藤信浩助教、(独)放射線医学総合研究所 白川芳幸部長、北村尚係長らの研究チームは、『光の色を変換するプラスチック(波長変換材の一種)』の新メカニズムを発見しました。本研究成果は、2013年8月26日(英国時間10時)に、英国科学誌natureの姉妹誌「Scientific Reports」に掲載されました。

 この種のプラスチックは、既に光伝搬用ファイバーから作物栽培用フィルムまで幅広い用途で利用されています。しかしながら、その色の変換メカニズムは、必ずしも十分に解明されていませんでした。このような状況の中、当研究チームは、ベース素材であるプラスチックに低濃度から高濃度の蛍光剤を添加することにより、ベース素材と蛍光剤間で濃度ごとに新たな混合状態が形成されることを示し、その状態により3つの段階で変換された光が放たれるという新しい『光の色の変換メカニズム』が存在することを発見しました。さらに濃度の増加により変換できる色は、可視光領域を超えて紫外光領域まで著しく広がることを見出しました。
 本研究成果は、紫外光の変換や遮断などの産業技術開発への応用のみならず、蛍光剤の濃度調整による光伝搬の低雑音化や、紫外光の可視光への変換による作物栽培の効率向上等に貢献するものと期待されています。

背景

 従来、測定対象の光の波長とその光を受ける側(検出器や植物など)の感度のミスマッチを解決するため、光の波長を変換する素材の一種として蛍光剤を添加したプラスチックが開発され、現在この種のプラスチックは、幅広い用途で利用されています。しかしながら、その光の波長の変換メカニズムは、必ずしも十分に解明されていませんでした。そのため、この分野での新たな素材開発や応用におけるブレークスルーは停滞しがちでした。

研究手法・成果

 中村らは、光の波長を変換するプラスチックのメカニズムを明らかにするため、蛍光剤の濃度を広範囲(0~約1万倍)で変化させた高純度のプラスチックを製造し、それらの光の応答を調べました。その結果、ベース素材であるプラスチックと蛍光剤間で濃度ごとに異なる混合状態が形成されることを新たに発見しました。またその状態により、3つに区別された段階(図1)で変換された光が放たれるという新しい光の波長変換メカニズムを明らかにしました。さらに濃度の増加により変換できる波長は、可視光領域を超えて紫外光領域まで著しく広がることを見出しました。

波及効果

 本研究により光変換プラスチックにおける光の波長変換の新たなメカニズムが明らかにされたことから、このようなメカニズムを利用して目的に適した波長変換ができる素材の開発が可能になりました。この結果、光技術産業、電子機器産業、素材産業、さらにはアグリ事業まで応用範囲が拡大することが期待されます。

製造したプラスチックが紫外光を受けて発光する様子
図1:製造したプラスチックが紫外光を受けて発光する様子。

一番左は、蛍光剤を添加していないプラスチックです。その次から右にかけて、蛍光剤の濃度は増加します。紫外光を吸収して、濃度により青色から緑色の光を放ちます。

本研究は、京都大学原子炉実験所、独立行政法人放射線医学総合研究所、株式会社クラレの協力により行われました。

書誌情報

Hidehito Nakamura, Yoshiyuki Shirakawa, Hisashi Kitamura, Nobuhiro Sato, Osamu Shinji, Katashi Saito and Sentaro Takahashi, "Mechanism of wavelength conversion in polystyrene doped with benzoxanthene: emergence of a complex", Sci. Rep. 3, 2502; DOI: 10.1038/srep02502 (2013)

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