2019年9月9日に、コラッセふくしま(福島市)にて、放射性物質環境動態事業報告会「放射線科学から見る福島の環境とその展望」を開催しました。
はじめに、文部科学省研究振興局 吉田 光成 研究振興戦略官から、来賓挨拶をいただきました。つづいて、QSTが本事業で行ってきた研究の中から、環境中のごく微量なストロンチウム-90を迅速かつ高精度に測定する新たな分析法の開発や、福島の陸水および海水域における放射性物質の動態、福島の野生生物への放射線影響、現在開発中の日常生活で受ける線量を算出するシステムの4テーマについて概要・成果を講演するとともに、ポスター発表にてそれらの詳細を紹介しました。
また、福島県立医科大学医学部の村上道夫先生より、「福島での健康リスクと価値:調査の意義、対話の意義」と題して特別講演をいただきました。被ばくによるリスクと、心理的苦痛や、生活習慣病および死亡率のリスクの上昇などの健康リスクと比較しながら、被災者のリスクを軽減していくことが重要な課題であるなどのお話がありました。福島で行われる東電福島第一原発事故に関わる調査・研究は、福島の復興のためでなければならない、とのお言葉があり、本事業を継続していくうえで、QSTとしても、そのことをより強く認識していかなければならないと感じました。
最後に、日本科学未来館の池辺靖氏のファシリテーションにより、報告会での発表に対して会場から寄せられたご質問やご意見を元にした総合討論が行われました。「ストロンチウム-90の分析法を使って魚や生物の骨などを測ることができるのか」「なぜ夏季の方が陸水中の放射性セシウムの濃度が高くなるのか」などのご質問や、「日常生活で受ける線量の算出システムを早く使えるようにしてほしい」といったご意見をいただきました。
台風による悪天候の中、福島県内から約70名の方にご来場いただきました。誠にありがとうございました。本報告会でいただいたご意見も活かしながら、これからも福島の復興・再生のための研究・調査を継続、発展させていくとともに、研究成果等のよりわかりやすい情報発信に取り組んでいきます。
講演会場の様子 特別講演をいただいた村上道夫先生
総合討論の様子 ポスター発表の様子