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核融合エネルギーフォーラム

受賞者紹介

掲載日:2024年4月16日更新
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2023年度「吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞」受賞者について

募集案内    English

 

吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞は、ITER計画や幅広いアプローチ(BA)活動などに代表される核融合エネルギーの実現に寄与しうる国内外の研究・技術開発活動、調査活動、社会連携・貢献活動等の中で、若手人材による優れた成果を顕彰するものです。下記の活動分野、

 
1)ITERやBAに直接関わる研究・技術開発活動など。
2)上記以外で核融合エネルギーの実現に必要な研究・技術開発活動、または将来これらの研究・技術開発に寄与する基礎的・基盤的な研究・技術開発活動など。
3)長期的な視野に立って核融合エネルギーの実用化や核融合を応用したエネルギー環境問題の解決に向けたシナリオ作成に寄与する調査研究活動など。
4)核融合エネルギーに関する社会との連携・貢献、教育、広報、啓発活動など。
 

に対し、2023年度は、4件の応募がありました〔分野2):3件、分野4):1件〕。選考委員会において厳正な審査を行い、調整委員会は授賞候補2件〔分野2):2件〕を推薦することとし、運営会議で優秀賞2件が決定されました。

2023年度の選考委員は次の方々です(敬称略)。

横峯 健彦(委員長、京都大学)、中西 秀哉(核融合科学研究所)、染谷 洋二(量子科学技術研究開発機構)、森崎 友宏(核融合科学研究所)、野澤 貴史(量子科学技術研究開発機構)、森下 和功(京都大学)以上6名

受賞者の紹介

優秀賞

仲田 資季 氏(核融合科学研究所)

受賞テーマ:

「多種イオン混合プラズマ乱流の流動形成と輸送の研究」

選考理由:

仲田氏は、乱流とゾーナルフローの非線形相互作用とそれがプラズマの輸送・閉じ込め特性に与える影響を定量化するシミュレーションモデルを開発し、それを多粒子に適用可能なコードに発展させた。これにより、水素同位体イオンの質量効果(同位体効果)のメカニズムを解明するとともに、燃焼とヘリウム灰除去の両立を実現するために必要な制御法の提案を理論的に行うことが可能となり、運転シナリオの策定や予測・制御手法構築を通じて、将来の核融合エネルギーの実現への大きな貢献が期待できる。また、同氏は、すでに複数の学術表彰を通じて高い評価を受けている。以上から優秀賞に値すると判断した。

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優秀賞
仲田 資季 氏

 

受賞者の抱負:

この度は栄えある吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞を賜り、大変光栄に存じます。共同研究者の皆様をはじめ、これまでお世話になってきた方々にも心より感謝申し上げます。本研究では、単一イオン種プラズマのなかで発達した渦や流動場が織り成す非線形相互作用や輸送過程の解析法の構築にはじまり、それを多種イオン混合プラズマの乱流輸送へと展開することで、同位体質量効果やイオン種ごとに異なる輸送特性といった知見を創出して参りました。これらは核融合燃焼プラズマの乱流・輸送現象の解明に僅かばかりでも寄与するものと期待しておりますが、それと同時に、複雑で多様な現象のほんの一側面を垣間見たものであるとも考えております。今回の受賞を励みとし、今後も燃焼プラズマの未だ知られざる新しい知見の開拓により一層の熱意を持って取り組んで参りたいと存じます。


優秀賞

釼持 尚輝 氏(核融合科学研究所)

受賞テーマ:

「輸送物理解明による高性能核融合プラズマ実現のための分布制御手法の開発」

選考理由:

釼持氏は、電子内部輸送障壁崩壊現象時の熱・乱流の伝播特性の世界初となる発見により高性能核融合プラズマの実現に必要なプラズマの非局所輸送の理解に重要な知見を与えている。さらに、これら知見と将来の核融合炉において有効な選択肢として適用が想定されるデータ科学を用いた制御手法の導入に挑戦的に取り組み、成果を得ている点は大いに評価でき、先進的な制御法の構築につながる可能性が高い。また、多様なアプローチにより、俯瞰的な見地で課題に取り組むこれまでの努力は特筆に値し、今後の研究の拡がりが大いに期待できる。以上から優秀賞に値すると判断した。

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優秀賞
釼持 尚輝 氏

 

受賞者の抱負:

この度、栄誉ある吉川允二記念核融合エネルギー奨励賞の優秀賞を授与いただき、誠にありがとうございます。この場をお借りしまして、核融合科学研究所、京都大学の共同研究者の皆様、そしてご指導いただいた先生方に、心からの謝意を表します。本研究では、プラズマ輸送物理に基づいて核融合炉実現のための高性能プラズマ制御手法の確立と実証を目指してきました。特に、内部輸送障壁を活用した閉じ込め改善プラズマの制御は、核融合プラズマの先進的な制御手法の確立に貢献する重要なステップです。プラズマ制御と輸送研究を並行して進めることにより、核融合炉制御に必要な技術と知見を積み重ねてきました。今後は、データ科学の手法を取り入れて、研究の精度のさらなる向上を目指します。計測データの精度向上、革新的なデータ解析による輸送物理における新発見、そして複数の物理量計測や多次元の計測量を用いたプラズマ制御の高速化が期待されます。また、原型炉や発電炉での計測器の制限にも対応するための研究も進めていきます。この受賞を励みに、より一層研究に邁進する所存です。引き続き皆様のご指導とご鞭撻を賜りながら、核融合エネルギー分野の発展に寄与できるよう努めて参ります。