研究の概要
私たちの身体は、60兆個もの細胞からできており、この細胞は新陳代謝で定期的(3~4か月)に入れ替わっています。この新陳代謝は、細胞核の中の「生命の設計図」といわれるDNAの遺伝情報に基づいて行われています。このDNAは様々な要因で損傷し、修復を繰り返しています。この働きを解明することにより、異常な細胞の増殖である「がん」の治療や予防などにも応用することができます。
1. レーザー及びレーザー駆動量子ビームによって生じるDNA損傷の解析
レーザーさらにはレーザー駆動量子ビームの照射を行い、生体影響の原因と考えられるDNA損傷の生じ方やその生成メカニズムを調べています。
図1.レーザーによるDNA損傷生成機構解析
図2.レーザー駆動量子ビームによるDNA損傷生成及び生物影響解析
2. D N A損傷修復解析
蛍光共鳴エネルギー移動現象や原子間力顕微鏡などの先端技術を駆使することによって、DNA損傷ができる過程、その形や構造、さらには修復過程を明らかにする研究を進めています。また、DNA損傷がなぜ突然変異を起こしやすいのか、そのメカニズムの解明を行っています。これらの研究によって得られた成果は、がんの治療や予防などに役立つと期待されます。
図3 蛍光共鳴エネルギー移動によるDNA損傷の局在性の測定
図4 原子間力顕微鏡を用いて撮像した様々な形態のDNA損傷
プロジェクトメンバー
鹿園 直哉 | プロジェクトリーダー |
赤松 憲 | 上席研究員 |
中野 敏彰 | 上席研究員 |
森林 健悟 | シニアスタッフ |
増本晃太朗 | QSTリサーチアシスタント |
青木 洋代 | 任期付業務補助員 |
津田 香苗 | 任期付業務補助員 |
業績リスト(論文、受賞、プレス発表など)
2023年
- Yusuke Sato, Yoshihide Takaku, Toshiaki Nakano, Ken Akamatsu, Dai Inamura, and Seiichi Nishizawa, Synthetic DNA binders for fluorescence sensing of thymine glycol-containing DNA duplexes and inhibition of endonuclease activity, Chemical Communications, 59(40), 6088-6091
- Yusuke Matsuya, Yuji Yoshii, Tamon Kusumoto, Ken Akamatsu, Yuho Hirata, Tatsuhiko Sato, Takeshi Kai, A step-by-step simulation code for estimating yields of water radiolysis species based on electron track-structure mode in the PHITS code, Physics in Medicine & Biology, 69(3), ad199b
- Ken Akamatsu, Katsuya Satoh, Naoya Shikazono, and Takeshi Saito, Proximity estimation and quantification of ionizing radiation-induced DNA lesions in aqueous media using fluorescence spectroscopy, Radiation Research, 201(2), 150-159
- Kengo Moribayashi, Hiroki Matsubara, Yoshiteru Yonetani, Naoya Shikazono, Multi-Scale Simulations Aiming To Advance Heavy Ion Beam Cancer Therapy, API conference proceedings, 2756(1), 030001/1-8
- 中野敏彰、赤松憲、鹿園直哉、放射線照射によって生じたDNA損傷の構造解析と修復速度、放射線化学、116、15-19