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セミナー
第66回KPSIセミナー
分子動力学シミュレーションに基づく液体中熱伝導の分子スケール描像
講演者 | 松原 裕樹 特任助教 (東北大学 流体科学研究所 ナノ流動研究部門 分子熱流動研究分野) |
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場所 | 関西光科学研究所 ITBL棟 G201号室 |
日時 | 2019年8月2日(金曜日)10時00分~ |
要旨 | [PDFファイル/240KB] |
分子動力学シミュレーションに基づく液体中熱伝導の分子スケール描像
松原 裕樹 特任助教
(東北大学 流体科学研究所 ナノ流動研究部門 分子熱流動研究分野)
概要
自動車や電子デバイスなどの工業機器における高度な熱管理の実現へ向けて、熱伝導を原子・分子スケールの原理から理解することが重要となっている。古典力学の範囲では、マクロな熱伝導はエネルギーを持った原子の移動と原子間の相互作用による遠隔な熱伝搬によって説明される(ここでは導電性材料などで重要となる電子による熱伝導の寄与は扱わない)。前者が支配的となる気体中の熱伝導は気体運動論によってよく理解されており、後者が支配的となる固体(特に結晶)中では、フォノンによる熱伝搬の理論が発展を続けている。これらに対して、液体やソフトマター中の熱伝導を統一的に記述できる準粒子描像はなく、理解が遅れている。
そこで我々は、分子動力学シミュレーションを用いて、一定の温度勾配を持つ非平衡定常状態にある液体中の熱伝導を詳細に調べることから着手した。特に、原子間相互作用の一つ一つをミクロなエネルギー伝搬経路(熱伝搬パス)とみてその特性を定量化し、それらの集積として液体中の熱伝導を把握する「原子熱伝搬パス解析」を提案した。この手法をアルカン・アルコールなどの典型的な液体に適用することで、van der Waals相互作用やCoulomb相互作用といった基本的な相互作用による熱伝搬の性質や、分子構造・官能基と熱伝導率の関係などを明らかにしてきた[1]。本講演では、これらの結果について、非平衡分子動力学シミュレーションの基本的な方法論とともにご紹介する。
[1] 松原裕樹, 菊川豪太, 小原拓, “液体・界面の熱輸送特性発現機構-分子設計を志向して,” 伝熱, 56, 17–24 (2017), http://www.htsj.or.jp/wp/media/2017_7R.pdf
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