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セミナー
第84回KPSIセミナー(現地及びweb開催)
量子ビームが運ぶ光の軌道角運動量 ―光の軌道角運動量を持つX線ビームで何が出来るか?―
講演者 | 佐々木 茂美 広島大学名誉教授 (広島大学) |
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日時 | 2021年12月10日(金曜日)11時00分~ |
使用言語 | 日本語 |
要旨 | [PDFファイル/285KB] |
量子ビームが運ぶ光の軌道角運動量 ―光の軌道角運動量を持つX線ビームで何が出来るか?―
佐々木 茂美 広島大学名誉教授
(広島大学)
概要
真空中を伝播する光が量子化された軌道角運動量(Light’s Orbital Angular Momentum: LOAM)を運び得るという本質的な性質があることは、1990年代初頭にレーザー光学分野の研究者により、近軸光線において実現可能であることが示された[1,2]。これを受け、今日に至るまでの30年間に可視光領域のレーザーを光源として、シリンドリカルレンズや転位の入った回折格子など種々の光学素子を用いて光に軌道角運動量を付与し、液体中に浮遊する微小物体の位置を光軸のまわりに回転させることのできる光学ピンセットや、ボーズ-アインシュタイン凝縮した物質系の原子にマクロな量子状態である量子化した渦を生成するなどの応用研究が盛んに行われている。また、放射光科学分野でもスパイラルゾーンプレートやスパイラル位相子を用いて硬X線ビームにLOAMを付与する試みが成功しており、この新奇な性質を放射光利用実験のための新たなプローブとして用いることが提案されている。一方、放射光源として用いられる円偏光アンジュレーターからの高次光がOAMを運ぶことは2008年に理論的に予測されており[3]、これを受けて次数の異なる高次光の干渉縞も観測され[4,5]、円偏光アンジュレーターとレーザーの組み合わせでヘリカルバンチングを作る試みなど自由電子レーザー分野でも研究が進んでいる[6]。
本講演では、相対論的速度で螺旋運動する電子ビームから如何にして光の軌道角運動量を運ぶ放射が発生するのかについて概説し、X線γ線領域でこの新奇な性質を利用した研究テーマの可能性について議論する。
図1に、CCDカメラで捉えた光の軌道角運動量差が1,2,3の場合のスパイラル干渉縞を示す。
Fig.1: US; l=0 & DS; l=-1 (left), US; l=-1 & DS; l=+1 (center), US; l=+1 & DS; l=-2 (right)
References
[1] N. R. Heckenberg, R. McDuff, C. P. Smith, H. Rubinsztein-Dunlop, M. J. Wegerer, Opt. and Quantum Electr. 24, S951 (1992).
[2] L. Allen, M. W. Beijersbergen, R. J. C. Spreeuw, J. P. Woerdman, Phys. Rev. A 45, 8185 (1992).
[3] S. Sasaki and I. McNulty, Phys. Rev. Lett. 100, 124801 (2008).
[4] S. Sasaki, J. Particle Acc. Soc. of Japan. 11, 221 (2014).
[5] M. Katoh, et al., Sci. Rep. 7, 6130 (2017).
[6] E. Hemsing, A. Knyazik, M. Dunning, D. Xiang, A. Marinelli, C. Hast, J. B. Rosenzweig, Nature Phys. 9, 549 (2013).
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