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量子科学技術でつくる未来 量子デバイスに囲まれる生活(連載記事 全5回)

掲載日:2023年7月13日更新
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連載企画「量子科学技術でつくる未来」(第98回-第102回)について

量子科学技術研究開発機構(QST)が進める事業や研究開発を広く一般の方にご紹介するため、2021年5月から日刊工業新聞の「科学技術・大学」面にて毎週木曜日に「量子科学技術でつくる未来」を連載しています。

量子デバイスに囲まれる生活​」に関する連載(第98回-第102回)では、室温で動作することができる量子コンピュータやウエアラブルな量子デバイスの社会実装に向けた研究開発として、QSTが取り組んでいる世界最先端の量子技術についてわかりやすく紹介します。今まで量子技術に馴染みの無かった皆様にも関心をもっていただける内容となっておりますので、ぜひご覧ください。

その他の連載については、こちらのページ(これまでの連載記事)に掲載していますので、ぜひご覧ください。

※新聞掲載版は各リンク先(日刊工業新聞HP)をご参照ください。

※日刊工業新聞社の承諾を得て掲載しております。
※新聞連載記事とは内容が一部異なる場合があります。


量子デバイスに囲まれる生活 第1回
身近な量子デバイス

量子デバイスに囲まれる生活​ 最近話題の最先端のAI技術を目の当たりにして、近い将来に私たちの生活が大きく変わるのではと感じている方も多いと思う。我が国では、AI技術やIoT技術といった我々の社会の在り方を変える可能性を持つ最先端技術を取り込むことによって経済発展と様々な社会課題の解決を両立できる未来社会「Society5.0」の実現が進められている。Society5.0ではIoTで全ての人とモノがつながり、実空間(フィジカル空間)に張り巡らされたセンサーから膨大な情報が仮想空間(サイバー空間)に集積・解析され、実空間に住む我々が必要とする情報が必要な時に得られるようになる。​​→続き

執筆者: 量子科学技術研究開発機構 量子技術基盤研究部門 部門長 河内 哲哉(かわち・てつや)

■日刊工業新聞 2023年6月15日(連載第98回) 身近な量子デバイス


量子デバイスに囲まれる生活 第2回
イオン操り量子コンピューター

イオントラップの模式図​ 2019年10月に「世界最高のスーパーコンピュータでさえ1万年かかる計算をわずか3分で」という量子コンピュータのすごさと可能性を端的に表す結果がGoogleによって発表されたことは記憶に新しい。現在、世界各国で量子コンピュータの開発が精力的に進められている中、量子科学技術研究開発機構(QST)でも量子コンピュータの実現に向けた研究・開発を行っている。

 極微の世界の物理法則である量子力学を演算に使う量子コンピュータの実現には2つの課題がある。ひとつは大規模化である。超並列処理を可能にする量子ビットと呼ばれる演算の基本単位が少なくとも100万個必要となる。もうひとつは量子ビットの演算精度の向上である。量子ビットはノイズに弱く、エラーが発生しやすいため、ノイズに強い量子ビットを開発する必要がある。​​→続き

執筆者: 量子科学技術研究開発機構 量子技術基盤研究部門 高崎量子応用研究所 レーザー冷却イオンプロジェクト プロジェクトリーダー 鳴海 一雅(なるみ・かずまさ)

■日刊工業新聞 2023年6月22日(連載第99回) イオン操り量子コンピューター

 

量子デバイスに囲まれる生活 第3回
ダイヤモンドで情報素子

日常で使える量子デバイス実現へ 2019年10月に「世界最高のスーパーコンピュータでさえ1万年かかる計算をわずか3分で」という量子コンピュータのすごさと可能性を端的に表す結果がGoogleによって発表されたことは記憶に新しい。現在、世界各国で量子コンピュータの開発が精力的に進められている中、量子科学技術研究開発機構(QST)でも量子コンピュータの実現に向けた研究・開発を行っている。

 極微の世界の物理法則である量子力学を演算に使う量子コンピュータの実現には2つの課題がある。ひとつは大規模化である。超並列処理を可能にする量子ビットと呼ばれる演算の基本単位が少なくとも100万個必要となる。もうひとつは量子ビットの演算精度の向上である。量子ビットはノイズに弱く、エラーが発生しやすいため、ノイズに強い量子ビットを開発する必要がある。​​→続き

執筆者: 量子科学技術研究開発機構 量子技術基盤研究部門 高崎量子応用研究所 量子センシングプロジェクト 研究統括 小野田 忍(おのだ・しのぶ)

■日刊工業新聞 2023年6月29日(連載第100回) ダイヤモンドで情報素子

 

量子デバイスに囲まれる生活 第4回
3次元材製に負けない製品

2次元材料の量子デバイス 物質と聞くと鉄やガラスなど目に見えるものが思い浮かぶ。物質を原子に近いサイズまで小さくしたものはナノ物質(1ナノメートルは10億分の1メートル)と総称される。ナノ物質はその形状によって、点状のものは量子ドット、棒状のものはナノチューブ、シート状のものはナノシート(以下、2次元材料)などと分類される。2次元材料としては、2004年に発見された炭素原子が蜂の巣のような六角形状に結合したグラフェンが有名である。この発見には2010年にノーベル物理学賞も与えられている。このようにサイズを極限まで小さくしたナノ物質では、量子状態に関連した様々な面白い性質が現れる。

 グラフェン発見を契機として、遷移金属ダイカルコゲナイドや六方晶窒化ホウ素など、グラフェンにはない物理特性を持つ非常に多くの2次元材料が登場、トランジスタ、発光/受光デバイスなど様々な機能デバイスを目指した応用研究が進んでいる。​​​​→続き

執筆者: 量子科学技術研究開発機構 量子技術基盤研究部門 高崎量子応用研究所 光スピン量子制御プロジェクト 研究統括 山崎 雄一(やまざき・ゆういち)

■日刊工業新聞 2023年7月6日(連載第101回) 3次元材製に負けない製品

 

量子デバイスに囲まれる生活 第5回
室温で動作の単一光子源

単一の光子を操るデバイス 光の強度を小さくしていくと、それ以上は小さくならない「光子」とよばれる最小単位、すなわち量子となる。光子は、空間を光速で移動することができる、室温や大気中でも量子情報を保持することができる、あるスピン欠陥から別のスピン欠陥へ量子情報を転送する際のつなぎ役としてはたらくなど、量子科学技術の実用化にとって極めて重要な役割を担っている。

 光子を量子情報処理に活用するためには、たった一つの光子、すなわち単一光子を任意のタイミングで生成し、量子操作を行い、さらに検出するためのシステムが必要となる。ここで、最も重要となるのが単一光子源の開発である。単一光子源として現在開発が進められているシステムの多くは極低温でしか動作しないため、室温で量子情報を伝達できるという光子の特徴を活かすことが出来ない。​​​​→続き

執筆者: 量子科学技術研究開発機構 量子技術基盤研究部門 高崎量子応用研究所 希土類量子デバイスプロジェクト プロジェクトチーフ 佐藤 真一郎(さとう・しんいちろう)

■日刊工業新聞 2023年7月13日(連載第102回) 室温で動作の単一光子源