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用語解説

用語解説 あ行・か行

掲載日:2019年10月4日更新
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アイソトープ治療

 アルファ線やベータ線などを放出する放射性同位元素を含んだ薬を注射し、アルファ線やベータ線によってDNAに修復することが難しいキズ(DNA二重鎖切断)を与えることで、がん細胞を効果的に殺滅する放射線治療の一つです。

アスタチン-211

 アスタチンはハロゲン族に属する元素で、ギリシャ語の「不安定」を意味する「astatos(アスタトス)」が名前の由来であり、その名の通りアスタチンは放射線を出して別の元素に変わってしまう性質があります。そのうち211Atはがん治療に有用なα線という放射線を放出する核種で、安定な鉛-207(207Pb)に変わります。211Atの半減期(物質量の半分が別の元素に変わってしまうまでの時間)は7.2時間です。

アラニン線量計

 アミノ酸の一種であるアラニンを主成分とした固形素子であり、放射線照射の吸収線量に比例して生じるラジカルの相対濃度を電子スピン共鳴(ESR)を用いて測定する線量計です。線量測定範囲が1~105Gyと広く、高い精度と安定性を持つため、基準線量計としてだけでなく、線量標準への遡及性の確認、研究期間や使用施設間で素子を郵送・運搬する際の線量保証・線量相互比較等にも広く用いられています。

アルファ線

 ヘリウム原子が非常に速いスピードで飛んでいるものです。アルファ線が物質中を通過する際、物質と相互作用し、例えば物質中の分子が持っている電子を弾き飛ばすことで(電離といいます)、物質に対してエネルギーを付与する性質があります。アルファ線は物質中の分子などと衝突しやすいため、透過性が非常に低く、紙一枚で遮断することができる代わりに、物質中では短い通過距離で高いエネルギーを付与することができます。

イオン照射効果

 有機高分子材料にイオンを照射すると、イオンは電子線やガンマ線に比べ大きな質量や電荷を持っているので、イオンの飛跡に沿って大きな損傷を与えることができます。これに対して、電子線やガンマ線は試料全体に均一な損傷を与えることができます。

イオン注入(装置)

 元素をイオン化して加速し、固体表面に照射することにより固体内部に元素を導入する方法です。半導体を始め、金属、セラミックス、高分子などに不純物を導入して新しい表面機能をもった材料を創製しようとする研究開発が行われています。高崎研にあるイオン注入装置の加速エネルギーは、数十keVから数百keVです。

イオンビーム

 様々な原子のイオンを高速に加速してビーム状にしたものです。

イオンビーム育種

 イオンビ―ムを生物に照射してDNAに突然変異を誘発し、照射した集団から有用な変異体系統を選抜することで新品種等を開発する技術です。イオンビームは、DNAの限られた場所だけに大きなエネルギーを与えるため、原品種の良い特性を保持しながら、目的の形質だけをワンポイントで改変できることや、他の育種法では得られにくい新しい形質を作り出せることが特徴です。

イオンマイクロビーム

 イオンビームを1マイクロメートルくらいのサイズまで細く絞ったビームです。

 

エキシマレーザー

 希ガスとハロゲンの混合気体を放電励起することにより生成するエキシマ(励起状態の原子と基底状態の電子が結合してできる励起分子)が、基底状態に戻る時に発生する光を増幅し、高出力の紫外光(ArF:193nm、XrF:248nm、XeCl:308nmなど)を発振する代表的な気体レーザーです。

 

化学気相法

 化学気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition Method)とも呼ばれ、気体原料から化学反応を経て、薄膜などの固体材料を合成するプロセスの総称です。CVD法の用途は極めて多様で、炭化ケイ素単結晶の成長や、金属、有機高分子の合成に使用されています。また、高純度ガスが使用できるため、高純度の固体材料が合成できます。

架橋

 「橋かけ」ともいいます。ゴムの加硫のように、線状の高分子鎖間に化学結合を生じさせることを橋かけといいます。橋かけの方法として、触媒を加えて加熱する化学法と、放射線を照射する方法があります。放射線法は、固体中で、また低温でもできるという特長があります。橋かけにより網目構造になると分子は動きにくくなり、加熱しても流動性を示さなくなります。

ガンマ線

 最も波長の短い光です。光は電磁波の一種ですが、可視光より波長が短くなると、順に紫外線、X線、ガンマ線と呼ばれます。ガンマ線の波長は、概ね10ピコメートル以下です。

吸収線量

 電離放射線の照射によって物質の単位質量あたりに与えられたエネルギー量のことです。放射線照射利用分野では、単に「線量」とも言います。国際単位(SI単位) では、物質1kg当たりにエネルギーが1ジュール(J)吸収された時の吸収線量が1グレイ(Gy)です。

グラフェン

 炭素原子から成る単層のシート状の物質です。炭素原子が蜂の巣状のネットワーク構造を持つことに起因して、高速に電子を輸送でき、輸送中に電子のスピンに乱れが生じにくいことなどスピン情報の輸送に適した性質を持つことから、スピンフォトニクスデバイスのスピン輸送材料として注目されています。

グラフト重合

 素材に放射線を照射した後、試薬と反応させて、接ぎ木(グラフト)のように分子の枝を導入し、素材の特性を改良する技術です。既存の素材にその物理的特性を損なうことなく様々な性質を付与することができるため、高機能材料の開発技術として優れています。例えば平膜や繊維、織布、不織布などの素材にイオン交換基や錯体形成機能を容易に導入することができます。

グレイ (Gy)

 吸収線量の国際単位(SI単位)です。

欠陥

 原子が周期的に配列する完全結晶の秩序の乱れを格子欠陥または結晶欠陥と呼び、点欠陥、転移、面欠陥といった種類があります。これらの欠陥は、これまで半導体の特性を劣化させる要因と扱われていましたが、最新の量子科学技術では欠陥の量子効果を利用した研究が盛んに行われています。

高周波加速

 荷電粒子を高エネルギーまで加速する場合、静電場による加速では加速電極の絶縁破壊などの問題から加速エネルギーに上限が存在しますが、荷電粒子を高周波電場の中に投入して波乗りのように連続的に加速電場に置くことにより高エネルギーまで加速することができます。