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用語解説

用語解説 さ行・た行

掲載日:2019年10月4日更新
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サイクロトロン

 荷電粒子が磁場の中で回転する時、その周期が粒子の速度に関係せず一定であることを利用して周期的に加速するのがサイクロトロンの基本原理です。高崎研にあるのは、小型で比較的高いエネルギーと大電流が得られるAVF(Azimuthally Varying Field)タイプです。例えば、陽子については数MeV~90MeVのエネルギーで加速できます。

質量衝突阻止能

 ある運動エネルギーを持つ荷電粒子が、物質中を進む時に飛跡に沿って単位長さ当たりに失うエネルギー量を阻止能、これを媒質の密度で割ったものを質量阻止能(Mass Stopping Power)といい、衝突及び制動放射に起因する衝突阻止能及び放射阻止能に分けられます。阻止能とは全エネルギー損失を指しますが、線エネルギー付与(LET)はエネルギーを限定した線衝突阻止能です。

臭素-76(Br-76)

 臭素の放射性同位元素のひとつで、ポジトロン断層撮像(PET)に応用できるポジトロンを放出します。Br-76は半減期が16時間なので、患者さんに注射した後のRI薬剤ががん組織に十分集まってから検査ができる、RI薬剤を医薬品メーカーが製造して病院に届ける時間的な余裕がある、と言った利点があります。

照射線量

 X線及びガンマ線の照射量を、空気を電離する能力で評価することがあり、これを照射線量といいます。国際単位(SI単位)では、空気1kgあたりに生ずる電荷をクーロン単位で表します(C・kg-1)。

シングルイベント効果

 半導体素子の放射線照射効果の一つです。例えば、高エネルギー重イオンが半導体素子に入射すると、大量の電子-正孔(電子の抜けた孔、粒子性を有する)対が発生し、この電荷によって瞬時的に電極の電位が変動するために、メモリーが反転します(ソフトエラー)。シングルイベント効果は、ICの集積密度の増加によって生じた損傷であり、宇宙用ICで大きな問題になっています。

シングルエンド加速器

 イオン源を高電圧端子内に組み込んだ形式の加速器で、タンデム加速器と対比してシングルエンド加速器と呼ばれています。イオンは、高電圧端子とアース間の電位差で加速されるため、得られるビームエネルギーは、高電圧端子の電圧と等しいです。タンデム加速器と比較して加速イオン種が少なく、エネルギーも低いが、大強度の軽イオンビームが得られます。

スピン

 電子の自転に由来して電子が示す磁石の性質をスピンといいます。スピンには上向きと下向きの二つの状態があります。スピントロニクスでは、例えば、スピンの上向きを0、下向きを1のデジタル情報として演算や記憶を行います。

スピン注入

 スピンの向きに偏りを持つ磁性材料を電極に用いて、電極と接する他の材料(グラフェンなど)の内部の電子にスピンの向きの偏りを生じさせることをスピン注入といいます。

スピントランジスタ

 スピンを注入・検出するためのソース・ドレイン電極、スピンの導線とスピンの向きを操作するためのゲート電極からなります。スピントランジスタでは、ソース電極から導線の部分に注入した電子のスピンの向きをゲート電極により操作することで、導線部分のスピンの流れを制御して動作します。

スピントロニクス

 電子のスピンの向き(上向き/下向き)をデジタル情報の0と1のように扱い、これを制御したり識別したりすることで情報の処理を行う技術です。電子の電荷に加えてスピンを情報処理に用いることで、今日の情報技術が直面する電力消費の肥大化などの問題を克服することができる技術として注目されています。

スピンフォトニクス

 スピントロニクスとフォトニクスを組み合わせた技術です。

スピン偏極ヘリウム原子ビーム

 スピンを持つヘリウム原子(スピン偏極ヘリウム原子)を試料の表面に照射することで、表面にある電子のスピンのみを検出するという特徴があり、グラフェン/磁性材料の接合面にあるグラフェンのスピンを選択的に検出できます。

生体材料

 医療器具等への利用が可能な、生体に害を及ぼさず、生体に親和性が高い材料を指します。

セラノスティクス

 がん診療において治療と診断を同時に行う手法です。例えば、放射性ヨウ素(I-131)は、画像診断で用いるγ線と治療効果を持つβ線を放出するため、甲状せんがんの治療と診断を同時に行うことが可能です。

線形加速器

 高周波電場を使って電子・陽電子等の荷電粒子を直線的に加速する装置で、リニアック(linac)ともいいます。

線虫

 体長約1ミリ、細胞総数959個(雌雄同体)の多細胞生物で、神経系や筋、消化器や生殖器などの基本的な組織を備え、ヒトと共通の運動機能や高次神経機能を有しています。受精卵から成虫になるまでの全細胞の分裂過程が明らかにされている他、細胞同士の接続構造も完全に明らかにされており、発生や神経生物学のモデル動物として世界中で使われています。

耐放射線性

 放射線により半導体素子が受ける影響には、放射線の総照射量に応じて素子特性が劣化するトータルドーズ効果と、一個の粒子が入射することによって素子に機能障害が生ずるシングルイベント効果があります。トータルドーズ効果は放射線により素子中に発生・蓄積する欠陥に関係しており、シングルイベント効果は粒子が入射 した際に素子中で瞬間的に発生する過剰の電荷に起因すると考えられています。

炭化ケイ素単結晶

 炭素原子とケイ素原子が1対1で結合した化合物である炭化ケイ素(SiC)単結晶は天然には存在せず、歴史的にはガリウム砒素(GaAs)単結晶と並び最も古くから知られた化合物半導体のひとつです。SiC単結晶の結晶構造は多様で190種類を越え、化学的に極めて安定であることからシリコンと同等以上の良好な電気特性を有し、結晶表面の熱酸化により絶縁膜が形成できるため、集積回路を作る上でも有利です。

タンデム加速器

 2段の加速機構をもつ静電加速器をタンデム加速器といいます。通常、正の高電圧電極の左右に2本の加速管がベース(アース電位の基盤)に向かって取り付けられます。まず、ベース側で負イオンを発生させ、それを高電圧極に向かって加速し、電極内で正イオンに変換して、 再びベースに向かって加速します。高崎研のタンデム加速器は0.8~6MeVの陽子と0.8~18MeVの重イオンを発生することができます。

チェレンコフ光

 電子などの電荷をもつ粒子が、水などの物質中を運動する時、粒子の速度が物質中の光の速度よりも速い場合に発生する光です。チェレンコフ光が発生するためには、一定以上の放射線のエネルギーが必要です。

電極触媒

 反応で消耗せず、反応を起こすために必要な電気エネルギーを減らすことができる電極材料のことです。電解に使用すると、電解電圧を下げ、電解に要する電気エネルギーを低減できます。

銅-64(Cu-64)

 銅の放射性同位元素のひとつで、PETに応用できるポジトロンを放出します。Cu-64は半減期が12.7時間なので、臭素-76と同じ利点を診断用薬剤として利用できます。

トータルドーズ効果

 半導体素子の放射線照射効果の一つです。放射線による損傷が蓄積されて、半永久的に特性を劣化させ、ついにはその機能を破壊する現象です。絶縁用酸化層内の正電荷発生、酸化層と基板界面の界面準位の発生、基板結晶の欠陥発生などの損傷によって起こります。トータルドーズは、積算線量と訳されています。

突然変異

 細胞の中にあるDNA等の遺伝物質の質的・量的変化のことです。