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放射線高度利用施設部 ビーム技術開発課

ビーム強度分布変換技術の開発

掲載日:2019年10月2日更新
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多重極電磁石によるビーム強度分布の大面積均一化

サイクロトロンのビームラインでは、現在、散乱体方式およびラスタースキャン方式による拡大均一照射が行われていますが、効率的な低フルエンス照射等のより高度な均一照射を可能とするため、多重極電磁石を用いた新たな大面積ビーム均一化の手法を開発しました。これは、多重極電磁石(図1参照)がビームに及ぼす非線形集束力によって、ガウス分布などの横方向ビーム強度分布のテイル部分を中心部分へ折りたたむという原理に基づいています。図2に8極磁場を用いて均一化されたビーム強度分布の数値計算例を示すように、本方式により、大面積の照射野全体を一定の粒子フルエンス率で均一に照射することが可能です。高品質な均一ビームを形成するため、非線形集束力の下でのビーム力学の理論・数値計算の他、薄膜多重散乱によるビームコンディショニング、形状や均一度の評価のための2次元ビーム強度分布計測等の開発を行いました。

 多重極電磁石を備えたビームライン

図1 大面積均一ビーム形成用ビームライン

シミュレーション結果シミュレーション結果

図2 8極電磁石を用いて集束されたビームの2次元強度分布の数値計算例。
(a)2次元強度分布 (b)1次元強度分布
約10cm×10cmの均一な領域が形成されている。

 

また、四角形に限らずビーム形状を制御することも可能です。水平方向に幅広い均一ビームを形成し、長尺試料のRoll-to-Roll搬送と組み合わせることで、長尺高分子フィルムの効率的な低フルエンス均一照射を実現しました。これにより、防水通気膜等の機能性材料としてイオン穿孔膜を量産する技術を企業と共同で構築しました。

多重極電磁石による多様なビーム強度分布変換

この非線形ビーム集束手法は、均一化だけでなく、多様なビーム照射野形成に適用できる可能性があります。実際、ビーム光学系を工夫することで、円形のほか、四角形や三角形など様々な断面形状でビーム強度分布を中空化できることを見出しました。現在は、そのような特異なビームのふるまいを解明することや利用に向けた研究を進めているところです。