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放射線高度利用施設部 ビーム技術開発課

マイクロPIXE分析システムの開発

掲載日:2019年10月30日更新
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マイクロPIXE分析システム

大気マイクロPIXE(Particle Induced X-ray Emission, 粒子励起X線放出)分析システムは、2000年に開発されました。この分析システムでは、TIARAの3MVシングルエンド加速器からのビーム(主として陽子)を精密二連四重極磁気レンズで1μmまで集束させ、2組の静電デフレクターによって、試料上をスキャンします。単一細胞内の微量元素の二次元分布を、1μmという高空間分解能で測定することが可能です。


Micro-Pixe & Pige analyzer

図1 マイクロPIXE & PIGE分析システム

PIXEの原理

十分なエネルギーを持ったイオンが原子に衝突すると、内殻電離が起こります。こうしてできた空孔に外殻の電子が落ち込むと、元素固有のエネルギーのX線を発生します。このX線のエネルギースペクトルを測定することで、試料に含まれる元素の種類を特定し、絶対量と分布を測定します。

 

Hitting an atom 1. イオンビームが原子に衝突
Exciting 2. 内殻電離が起こる
Emitting and relaxing 3. 外殻の電子が内殻に落ちるとともに、X線を放出

図2 PIXEの原理

マイクロPIXEの分析例

アスベスト(石綿)の繊維

アスベストは、吸い込んでから発病まで数10年の潜伏期間があるため「静かな時限爆弾」と呼ばれ、特に青石綿(Crocidolite)と茶石綿(Amosite)は毒性が強いことが知られています。図3に示すように、私達の開発した大気マイクロPixe分析システムによってアスベストの標準試料を分析したところ、マグネシウムの分布からアスベストの種類が特定できることがわかりました。


Asbestos fiber

図3 三種類のアスベストの分析結果。白石綿(Chrysotile)にのみ、高濃度のマグネシウム(Magnesium)が検出された。