現在地
Home > 量子生命科学研究所 > 相転移生命科学チーム

量子生命科学研究所

相転移生命科学チーム

掲載日:2024年1月15日更新
印刷用ページを表示

タイトル

FUSの図

細胞内の核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体などの細胞小器官は、それぞれの機能を効率よく果たすため、外界から内部を隔離するための脂質二重膜を持っています。一方、真核細胞内には、これらの膜で仕切られた細胞小器官以外に、膜を持たない構造体も多数存在しています。代表的なものは、細胞質で形成される「RNA顆粒」と呼ばれるもので、主にRNAの貯蔵、代謝、分解輸送などの役割を担うRNAとタンパク質の凝集構造体です。この膜を持たない細胞内構造体の形成機構は長年よく分かっていませんでしたが、最近、タンパク質とRNAによる相分離(たとえば水と油が分離する現象)がその形成機構であることが分かってきました。しかし、タンパク質やRNA分子が、相分離状態へ移行するとき、また相分離状態にあるときに、分子レベルでどのような状態になっているのか、まだよく分かっていません。相分離状態のタンパク質はとてもダイナミックなので、従来の方法では解析は難しく、そのため我々は、量子技術を用いた量子センサーや中性子散乱法を応用して、相分離機構の分子レベルでの解明を目指します。また、神経変性疾患の原因となるタンパク質にはRNA顆粒に蓄積するものが多く、それらのタンパク質の異常が、顆粒形成のための相分離の異常を引き起こして、病気に至っているのではないかと考えられています。我々は、細胞内の相分離異常を引き起こすメカニズムを解明することで、神経変性疾患の治療法開発に貢献することも目標としています。

チームリーダー 加藤昌人