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量子生命科学研究所

構造生物学研究チーム_過去の研究TOPICS

掲載日:2023年4月1日更新
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CuNIR 中性子結晶構造解析図​​地球の窒素循環を担う酵素の反応機構を全原子構造決定により解明(2020.2.11発表)

地球の窒素循環において、土壌や水域中の窒素化合物は微生物の働きによって窒素分子へと段階的に変換され、大気中へ放出されます。この地球化学的に重要な過程は脱窒とよばれ、様々な酵素によって担われていますが、なかでも亜硝酸イオンを一酸化窒素ガスに変える反応(亜硝酸還元反応)を行う銅含有亜硝酸還元酵素 (CuNIR)は、脱窒過程の鍵酵素と呼ばれています。

水素原子を直接観察できる中性子結晶構造解析という手法を用い、水素原子も含んだCuNIRの全原子構造を高解像度で決定することに成功しました。その結果、酵素の活性中心に存在する銅イオンには、従来のX線を主とした結晶構造解析の結果から考えられていた水分子ではなく、そこからプロトン(水素原子)一個が取り除かれた水酸化物イオンが結合していることを発見しました。また、亜硝酸還元反応に必要な電子の移動を促進するような仕組み(水素結合)が、タンパク質内に存在していることも明らかにしました。こうしたことはミクロの現象を記述する量子力学を用いた理論研究から予想されていましたが、本研究によって世界で初めて実験的に証明されたことになります。中性子結晶構造解析による水素原子の直接観測が、生命現象の本質を量子のレベルから理解しようとする「量子構造生物学」という新しい領域の開拓に寄与することが期待されます。

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プレスリリース https://www.qst.go.jp/site/press/38271.html 

論文情報 https://doi.org/10.1073/pnas.1918125117