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放射線医学研究所

用語・単位(放射線全般に関するQ&A)

掲載日:2024年3月27日更新
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  1. 放射能・放射線の単位について教えてください
  2. 等価線量と実効線量について教えてください
  3. 放射線加重係数や組織加重係数とは、何ですか?
  4. 内部被ばくと外部被ばくでは、内部被ばくの方が影響が大きいのではないですか?
  5. 内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とはなんですか?

 

 
Q.放射能・放射線の単位について教えてください

A.放射能・放射線の単位には、使用する目的に応じていくつかの種類があります。

ベクレル(Bq)

放射能を表す単位。1ベクレル(Bq)は、1秒間に1個の放射性核種が壊変する場合の放射能を表します。

グレイ(Gy)

放射線が当たった物質が単位質量当たりに吸収したエネルギー量を表します。1Gyは、物質1kg当たりに1ジュール(J)のエネルギーが吸収される場合の放射線量を表す単位です。吸収線量とも呼びます。

シーベルト(Sv)

放射線により吸収したエネルギー量(グレイ)が同じでも、放射線の種類や組織・臓器によって人体における影響が異なってきます。その違いを考慮して、人体が放射線を受けた場合に、どれだけの影響があるのかを表す単位です。

※サーベイメーターの読み値にシーベルト毎時(Sv/hr)が使われていますが、これは1時間で受ける放射線量(シーベルト)を表す単位です。

なお、1マイクロシーベルトの千倍が1ミリシーベルトになり、さらに千倍が1シーベルトになります。(1シーベルト=1,000ミリシーベルト=1,000,000マイクロシーベルト)

 

Q.等価線量と実効線量について教えてください

A.「等価線量」は、組織・臓器ごとの影響を表す単位として使われ、「実効線量」は、全身への影響を表す単位です。

吸収線量が同じでも、放射線の種類や組織・臓器によって人体への影響(確率的影響)が違うことがあります。
組織・臓器における吸収線量に対し、放射線の種類ごとに影響の大きさを重み付けしたものを等価線量といいます。吸収線量に、放射線の種類による影響の強さの違いを補正するための係数(放射線加重係数といいます)を掛けて算出します。
さらに組織・臓器ごとの等価線量に、発がんの起こりやすさによって決められた係数(組織加重係数といいます)を掛け、すべての組織・臓器で足し合わせたものが実効線量です。
どちらも、シーベルト(Sv)の単位が用いられます。
各係数については、「放射線加重係数や組織加重係数とは、何でしょうか?」もご参照ください。

臓器によっては特異的に放射線の影響を受けやすく、実効線量での制限では規制が不十分と考えられるものについては等価線量で規制します。例えば、放射性ヨウ素の場合、甲状腺に特異的に集まり放射性ヨウ素から出る放射線が甲状腺組織に吸収されるので、甲状腺の等価線量で判断します。

参照:「確定的影響と確率的影響を教えてください」

 

Q.放射線加重係数や組織加重係数とは、何でしょうか?

A.放射線による影響は、吸収線量(単位はグレイ)が同じでも放射線の種類やエネルギーによって変わってきます。それを補正するために放射線荷重係数を使います。また放射線による影響の受けやすさは、組織や臓器によって異なるので、影響の大きさを重み付けするために組織加重係数を使います。

放射線による影響は、吸収線量(単位はグレイ)が同じでも放射線の種類やエネルギーによって変わってきます。放射線防護の観点から放射線の種類などによる影響の度合いを重み付けするために使うのが放射線加重係数です。

一般的に、ガンマ線よりも中性子線、アルファ線などの方が生物への影響が強くなります。この違いは体の組織などいろいろな違いによって変わってきますが、放射線防護の観点から放射線の種類とエネルギーによって簡単な係数が決められています。ある組織や臓器に吸収された放射線の線量(単位はグレイ)にこの放射線加重係数を掛けると等価線量(単位はシーベルト)が計算できます。表1にICRP1990年勧告の放射線加重係数を示します。もっと新しいICRP2007年勧告も出ていますが、現在の日本の法令・規制ではICRP1990年勧告の値が用いられています。2007年勧告でも、光子(X線やガンマ線など)と電子(ベータ線など)の放射線加重係数は1であり、1990年勧告と同じです。

さらに、放射線による影響の受けやすさは、組織や臓器によって異なります。個々の臓器への発がんなどの影響の大きさを重み付けする係数を組織加重係数といいます。臓器ごとに等価線量と組織加重係数をかけて、全身分を足し合わせたものが実効線量で、単位は等価線量にも使っているシーベルト(Sv)です。ですから全身分の各臓器の組織加重係数を足し合わせると1になります。

実際には、放射線の影響は性別や年齢などいろいろな条件で違ってきますが、放射線防護の観点から平均的な値が用いられています。表2にICRP勧告の1990年と2007年での組織加重係数を示します。現在の日本の法令・規制では1990年の値が用いられています。

表1 放射線加重係数
放射線の種類 放射線加重係数
光子(ガンマ線、エックス線) 1
電子(ベータ線) 1
陽子 2
アルファ線(粒子)、核分裂片、重い原子核 20
中性子線(エネルギーにより異なる) 2.5から20
表2 組織加重係数
組織・臓器 組織加重係数
1990年 2007年
生殖腺 0.20 0.08
骨髄(赤色)、結腸、肺、胃 0.12

0.12

膀胱、肝臓、食道、甲状腺 0.05 0.04
乳房 0.05 0.12
皮膚、骨表面 0.01 0.01
脳、唾液腺 - 0.01
残りの組織・臓器 0.05 0.12
合計 1.00 1.00

 

Q.内部被ばくと外部被ばくでは、内部被ばくの方が影響が大きいのではないですか?

A.同じ実効線量であれば内部被ばくでも外部被ばくでも影響の大きさは同じです。

体内に放射性物質を取り込んだときの内部被ばくによる実効線量は、摂取した放射性物質の量(ベクレル)に実効線量係数(シーベルト/ベクレル:1ベクレル摂取したときに何シーベルトに該当するのか、核種と摂取経路ごとに決められた係数)を掛けることにより求められます。特に内部被ばくの場合は「預託実効線量」といって、その時に摂取した放射能から受ける一生分(大人は50年、子どもは70歳になるまでの年数)の総線量として計算されています。
このようにして得られた実効線量を用いれば、内部被ばくの影響と外部被ばくの影響を同等に扱うことができます。同じ実効線量であれば内部被ばくでも外部被ばくでも影響の大きさは同じです。

参照:「内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とはなんですか?」

 

Q.内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とは何ですか?

A.ある放射性物質を摂取することにより人体が受ける内部被ばく放射線量について、一生分を積算した総線量です。

内部被ばくの場合は、放射性物質が体内に摂取された後に一定期間体内に留まり、その間は放射線を受け続けることになります。そのため、内部被ばくによる線量は「預託線量」といって、1回に摂取した放射性物質から、将来にわたって受ける放射線の総量を考えます。

体内に取り込んだ放射性物質は、時間とともに体内から減少します。その原因の一つは放射性物質が時間とともに壊れていく物理的要因で、これにより放射性物質の量が半分になる時間を物理学的半減期といいます。物理学的半減期は放射性物質の種類によって決まっています。もう一つは、尿や大便などにより排泄される生物学的要因で、これにより体内から半量が排出される時間を生物学的半減期といいます。生物学的半減期は、放射性物質の種類やその化学形態によって異なり、また年齢によっても異なってきます。預託線量はこのような違いを考慮して、ある放射性物質により人体が受ける放射線量について、一生分を積算した総量です。特に実効線量に着目して一生分を積算した線量を「預託実効線量」と呼びます。この時の一生分とは、大人は50年、子どもは70歳になるまでの年数です。

預託実効線量の解説図