現在地
Home > 放射線医学研究所 > 被ばく防護と医療 第85回 体内に取り込まれた放射性核種の検出

放射線医学研究所

被ばく防護と医療 第85回 体内に取り込まれた放射性核種の検出

掲載日:2024年3月27日更新
印刷用ページを表示

被ばく防護と医療 第85回
体内の放射性核種検出 内部被ばく線量30分で測定

2021年3月に量子科学技術研究開発機構(QST)に新設された高度被ばく医療線量評価棟には、体内に取り込まれた放射性核種を検出できる「総合型体外計測装置」がある。体内の放射性核種による被ばくは「内部被ばく」と呼ばれ、発がん等の将来の健康影響リスクを高める恐れがある。本装置は、その内部被ばくの線量評価に用いられる。その評価線量は、体内の放射性核種の排泄を促進する体内除染剤の投与等、特別な被ばく医療処置の実施を判断するための重要な情報となる。

本装置には3基のゲルマニウム(Ge)半導体検出器が搭載されており、体内の放射性核種から放出されたγ線やX線をエネルギーごとに計数するスペクトル測定が可能である。γ線やX線のエネルギーは放射性核種によって異なるため、測定したスペクトルを解析することにより体内に存在する放射性核種の種類と量を調べることができる。実際に、2011年の福島第一原子力発電所事故後に内部被ばくした緊急時作業者の測定の際にも活用されており、体内の放射性セシウムが経過時間とともに減少していることを確認している。

将来の事故への備えとして、特に原子力発電の使用済核燃料に含まれている「アクチニド核種」による内部被ばくへの対応を検討しておくことが重要である。アクチニド核種はα線を放出するため、内部被ばくによる線量が高くなりやすい特徴がある。また、α線と併せて放出されるγ線やX線のエネルギーが低いため、通常のホールボディカウンターでは体外から検出することは非常に難しい。

本装置は、低エネルギーのγ線やX線の検出を可能とするため、(1)装置全体を20cm厚の鉄で覆われた鉄室の中に設置して自然放射線によるノイズを大幅に低減すること、(2)有感面積の大きなGe半導体検出器を搭載すること、(3)特に放射性核種が多く存在する特定の部位(肺など)に検出器を密接させることによる高感度化を実現している。

また、アクチニド核種による内部被ばく事故に対しては、採取した尿や便を分析するバイオアッセイによるα線の測定も実施されるが、有機物分解、核種分離、電着、測定などに約1週間の時間を要してしまう。本装置で低エネルギーのγ線やX線を検出できれば、30分間の測定で内部被ばくによる線量の程度を迅速に判断することができる。

図・写真

総合型体外計測装置によって体内から放出される放射線を測定

執筆者

量子科学技術研究開発機構

量子生命・医学部門 放射線医学研究所

計測・線量評価部 物理線量評価グループ 主任研究員

 

図・写真

谷 幸太郎(たに・こうたろう)

体内に取り込んだ放射性核種による被ばく線量の評価に関する研究に従事。博士(工学)。

 

本記事は、日刊工業新聞 2023年3月9日号に掲載されました。

■日刊工業新聞 量子科学技術でつくる未来(85)被ばく防護と医療(連載記事 全9)​体内の放射性核種 検出(2023年3月9日 科学技術・大学)