核融合エネルギー研究開発部門・六ヶ所核融合研究所・増殖機能材料開発グループの星野毅上席研究員は、核融合炉における燃料製造や、電気自動車EV等で用いるリチウムイオン電池に必須なリチウムを、海水から回収するだけでなく、使用済リチウムイオン電池からの回収(リサイクル)にも適応可能な研究成果が評価され、公益社団法人新化学技術推進協会より、6月2日(木曜日)、第5回JACI/GSCシンポジウム(ANAクラウンプラザホテル神戸、参加者約850人)にて、第15回グリーン・サステイナブルケミストリー賞奨励賞(受賞件名:革新的なイオン伝導体を用いた透析法による海水中のリチウム回収技術)を受賞しました。
リチウムは、製造業大国である日本の持続的発展に必要不可欠な資源で、海外輸入に頼らない、新たな安定供給源が求められています。そこで、星野毅上席研究員は、海水にはほぼ無尽蔵のリチウムが含まれていることに着目し、四方を海で囲まれた日本の特徴を最大限に活かす技術開発を行いました。種々の試験の結果、リチウムのみを選択的に透過できるイオン伝導体をリチウム分離膜とし、海水とリチウムを含まない回収液間にリチウム濃度差を生じさせることにより、海水中のリチウムが自然に回収液へ選択的に移動する分離原理を発案しました。更に、リチウムの移動と同時に発生する電子を電極により捕獲することで、電気を発生しながらリチウムを回収できる全く新しい技術を世界で初めて確立しました。
本研究成果は、現時点で約50件のメディアに掲載され、昨年は科学技術分野文部科学大臣表彰を受賞する等、学術分野と産業界の両者から注目を得ており、今後は実用化拠点となるパイロットプラントの建設を目指し、全力で研究開発に取り組みます。
第15回グリーン・サステイナブルケミストリー賞奨励賞を
受賞した星野毅上席研究員