イーター遠隔実験センター実証試験
量研六ヶ所核融合研究所・東京大学核融合装置の遠隔実験の実施
2017年12月13日
平成29年12月13日、青森県六ヶ所村にある量研六ヶ所核融合研究所(六ヶ所研)の国際熱核融合実験炉(イーター)1)遠隔実験センター2)のシステムを東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)にある球状トカマク型の核融合実験装置(TST—2)3)に接続し、六ヶ所研から遠隔でプラズマ点火するとともに、その実験結果データを取得する実証試験に初めて成功しました。
本実験は、「核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体(EURATOM)との間の協定」(略称:幅広いアプローチ(Broader Approach: BA)活動4)に関する協定)に基づき本年3月に六ヶ所研に整備を終えたイーター遠隔実験センター(センター)の総合機能実証を目的とし、フランスに建設中のイーターとの遠隔実験に先立ち、東京大学大学院新領域創成科学研究科複雑理工学専攻(高瀬雄一教授)の協力の下、同大学のTST—2装置に対し、専用の回線を通じた遠隔からの設定を行うことで、実際にプラズマを点火し、センターからの遠隔実験の実現につなげるものです。
実験の様子はプレスにも公開され、六ヶ所研に招いた高瀬教授の指導の下、実験条件の設定が行われました。設定に基づいたプラズマ点火の映像がモニターに映し出され、センターへのデータ転送により実験結果を取得・表示・分析でき、遠隔による実験は無事成功しました。
来年は、欧州のトカマク装置である英国のJET及び仏国のWESTとセンターを接続し実験を行う予定であり、2025年に初期運転を開始する予定のイーターとの遠隔実験拠点とするための機能を更に検証していきます。
用語解説
1)国際熱核融合実験炉(イーター)制御された核融合プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的及び技術的実現性を実証することを目指したトカマク型(超高温プラズマの磁場閉じ込め方式の一つ)の核融合実験炉です。1988年に日本・欧州・ロシア・米国が共同設計を開始し、2005年にフランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設することが決定しました。2007年に国際機関「イーター国際核融合エネルギー機構(イーター機構)」が発足し、日本、欧州連合、中国、インド、韓国、ロシア、米国の7極が参加しています。現在、イーターが格納される建屋の建設が進められており、各極が調達するイーターを構成する様々な機器の調達取決めが締結され、各極で機器を製作しています。2025年頃からのプラズマ実験の開始を目指しています。イーターでは、重水素と三重水素を燃料とする本格的な核融合による燃焼が行われ、核融合出力500 MW、エネルギー増倍率10を目標としています。
2)イーター遠隔実験センター(REC)BA活動に基づき量研六ヶ所核融合研究所に整備したイーターとの遠隔実験を行うための施設です。イーターとRECを広帯域ネットワークで結び、フランスと10,000キロ離れた六ヶ所村にいながらイーターへの実験参加を可能とします。さらに、イーターで生じる大量の実験結果データをRECに高速転送し、大規模データストレージに保存・データ解析し、核融合データセンターとしての機能を有する施設です。
3)核融合実験装置(TST—2)イーターを含むトカマクでは磁場に閉じ込められたプラズマはドーナツのような形をしています。球状トカマクはドーナツの穴を極力小さくしたもので、プラズマの安定性に優れています。この特性を活かして核融合炉の小型化や早期実現に貢献すべく、東京大学ではTST—2装置を使って研究開発を行っています。
東京大学 高瀬・江尻研究室ホームページ
4)幅広いアプローチ(Broader Approach: BA)活動 日欧の国際協力の下、国際熱核融合実験炉であるイーター(次項参照)を補完すると共に、イーターの次のステップである原型炉の早期実現を目指した研究開発プロジェクトです。この活動は国際核融合エネルギーセンター(IFERC)、国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)、サテライト・トカマク計画(STP)の3つの事業を日欧共同で実施しているものです。
BAに関するホームページ