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量子生命科学研究所

量子操作で蛍光検出効率100倍に成功【3分で読める研究成果】

掲載日:2021年8月24日更新
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量子操作で蛍光検出効率100倍に成功

-ウイルス感染症の早期・迅速診断への応用に期待-​

(2021.8.3 発表)

キーワード:蛍光を用いた生体イメージング

蛍光イメージング比較

蛍光を用いた生体イメージングは、生命科学や臨床医学においてさまざまな場面で活用されており、病理診断やウイルス検査など広く活用されている技術です。蛍光検出は非常に高感度でごく少数の細胞の検出ができる一方、観察したい蛍光と背景光(自家蛍光など観察したくない発光)の区別がつきにくく、これが課題となっていました。

成果のポイント

その1:蛍光検出効率を100倍にする技術を開発

今回の技術では、蛍光ナノダイヤを蛍光標識剤として活用しました。ダイヤモンド結晶中のNVセンターをレーザー光で量子操作する手法を考案し、蛍光ナノダイヤの検出効率を大幅に向上させました。また、これまでマイクロ波で量子操作を行っていましたが、観察試料を傷つけることなく、大がかりな装置の必要がないレーザー光を用いています。

ナノダイヤと蛍光強度の図

​  蛍光ナノダイヤモンドの結晶構造  NVセンターのスピン量子状態をレーザー光で量子操作

その2:どんな手法?

長周期と短周期、異なるレーザーパルスを当てると、結晶中のNVセンターのスピン量子状態がそれぞれに呼応して変化する、という蛍光ナノダイヤが持つ特性を利用しています。NVセンターを持つ蛍光ナノダイヤはレーザーパルスの照射間隔に反応しますが、NVセンターを持たない背景光は、レーザー光の強度にしか反応しません。レーザー光の照射間隔に合わせて、蛍光ナノダイヤが強・弱・強・弱と交互に発する信号光とは逆に、背景光が弱・強・弱・強と蛍光を発するよう、レーザーの強度を調整しました。蛍光ナノダイヤが強い蛍光を発している時、信号光が弱い蛍光を発していれば、蛍光ナノダイヤを効率よく見つけることができます。

 SBR値

信号光と背景光の比が高いほど、文字を識別しやすいことがわかる

 

今後の展開は?

量子診断プラットフォームの図

今回開発した技術は特殊な機材を必要とせず、安価で小型な装置の開発が可能です。また、蛍光ナノダイヤは表面を抗体などで加工することで、細胞内にわずかしか存在しない分子を高感度に検出することができます。罹患初期の段階で特異的に出るごく微量な分子の高感度検出ができれば、認知症やがんなどの早期診断技術を実現する「量子診断プラットフォーム」への活用が期待できます。

 

研究に携わった人

研究チームの皆さん

関連リンク

プレスリリース https://www.qst.go.jp/site/press/20210803.html

掲載論文情報  https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.0c07740

プレスリリース紹介動画  https://youtu.be/bApn-SdHyIM