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量子生命科学研究所

量子生命科学研究所落成式を行いました

掲載日:2022年11月25日更新
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落成式アルバム令和4年11月17日、量子生命科学研究所の落成式を行いました。

猪口邦子参議院議員、臼井正一参議院議員をはじめ、文部科学省、内閣府、大学、企業、メディアなど多くの皆様にご臨席賜りました。

平野理事長の主催者挨拶にはじまり、木村直人 文部科学省大臣官房審議官からの来賓ご挨拶、馬場所長の量子生命科学研究所及び量子生命拠点事業の説明をはさみ、荒川泰彦 文部科学省Q-LEAP量子計測・センシング技術領域プログラムディレクター/東京大学特任教授からの学術界を代表してのご挨拶、茅野理事の閉式の辞で落成式は終了しました。

ご来賓の皆様からは、今後の量子生命科学研究所への期待と研究の発展を願う温かいお言葉を頂戴しました。誠にありがとうございました。

式の後に行われた内覧会では、量子生命科学研究所の実験施設・設備をご見学いただきました。研究者の説明に皆さん熱心に耳を傾けてくださっていたのが印象的でした。

量子生命科学研究所はここから、新しいステージに向けて研究活動に邁進してまいります。

ぜひ今後の研究活動、取り組みにご注目、応援をよろしくお願いいたします。

 

平野理事長からのご挨拶

理事長理事長の平野でございます。

皆様、本日はご多忙の中、量子生命科学研究所新棟落成式にお越しいただき、有難うございます。

本日は、ご来賓として 猪口邦子議員、 臼井正一議員を始めとした、多くの方々をお迎えし、この落成式を行うことができますこと、心より感謝申し上げます。また、ご支援・ご指導をいただきました文部科学省からは、木村直人大臣官房審議官にご挨拶をいただきます。重ねて御礼申し上げます。

今から6年半前、2016年4月に、量研/QSTは、放射線医学総合研究所と日本原子力開発機構の核融合部門と量子ビーム部門が再編統合されて、「量子科学技術」という新しいサイエンスを切り拓く国立研究開発法人として発足いたしました。その結果、水素核融合エネルギー、量子ビーム、物質・材料、放射線医学によるがんや認知症の診断・治療、放射線被ばく・防護研究など多様な研究領域を有することになりました。この組織を真に統一されたQSTとして生まれ変わらせるためには、全ての研究領域の基盤である量子科学技術を全面に押し出す必要を感じました。

人類社会には言語、人、習慣、文化や宗教などさまざまな多様性が存在します。多様性はイノベーションの源泉であり、心豊かな人類社会の発展には必須です。しかし多様性は壁を作り、時には対立や戦争すら引き起こします。人類の歴史は多様性による発展と、多様性が引き起こす対立や戦争の歴史であるということができます。

一方、学問・科学技術はスポーツや芸術と同じく人類共通言語であり、多様性の壁を乗り越えて人々はコミュニケーションを図ることができます。

QSTは、量子科学技術こそが全世界を科学技術の面から変革する中心となる、いわば「人類共通言語」となるというビジョンのもと、世界中の人々と新たな知の創造や異文化理解を育み、多様性の壁を乗り越えて、QST内は勿論のこと、世界中に「調和ある多様性の創造」を推進していくというモットーを掲げております。これにより、量子科学技術の発展はもちろんのこと、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献することを理念として参りました。

分子生物学により、DNAに記された遺伝情報からタンパク質が作られる仕組みや、生命の営みの中でタンパク質が果たす役割等が明らかになりました。ヒトを始めとした様々な生物種の全ゲノム情報も既に解読されています。しかし、いわば生物の全部品の情報が得られているにもかかわらず、人類究極の問い「生命とは何か?」の答えはまだ得られていません。自動車は部品が与えられれば組み立てて動かすことができるのに、なぜヒトや大腸菌ではそれができないのでしょうか。それは、部品同士の繊細な相互作用の情報が欠落しているからだと思います。

免疫学者の私にとって、当初、「量子」はまったく馴染みのない外国語のような世界でした。その時、ジム・アル=カリーリとジョンジョー・マクファデンによる「量子力学で生命の謎を解く」という一冊の本に出会いました。「量子」と「生命」の2つの言葉が目に飛び込んできました。そして「量子力学に基づいた様々な計測技術を、生命科学に応用すれば、新しいことが分かるのではないか? 量子力学の観点から生命を研究すれば、「生命とはなにか?」という人類究極の謎に迫れるかもしれない」と考えました。

これは私自身の歴史観に基づいています。16世紀末の光学顕微鏡の発明により細胞が発見され、20世紀にはX線結晶構造解析や電子顕微鏡等の技術によって分子生物学が発展し、さらにその土台の上に現代の生命科学が立っています。つまり、生命科学の革新は、いつも新しい計測技術によってもたらされてきたという観点です。

私は、2016年QST理事長就任と同時に、新たな研究領域「量子生命科学」の開拓をゼロから始めました。QST内外の様々なバックグラウンドを持つ研究者に広く声をかけ、QST内に量子生命科学のバーチャルな研究組織を立ち上げるとともに、全国の科学者コミュニティーに働きかけて量子生命科学研究会を発足しました。その後、2019年4月にはバーチャルラボを発展的に改組して正式な研究組織である「量子生命科学領域」を発足させました。これと合わせて、量子生命科学研究会を改組して、一般社団法人「量子生命科学会」を発足しました。量子生命科学領域は2021年4月には量子生命科学研究所へと改組しました。この間、文部科学省や政府の支援を受け、文部科学省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム、Q-LEAPに「量子生命技術の創製と医学・生命科学の革新」が採択されました。さらに国の量子技術イノベーション拠点の1つとして「量子生命拠点」に指定されました。

新たな量子科学技術により、未知の生命現象を観察する道が開け、それは生命における量子論的な側面を新たに発見し得る方法論を提供します。そこから得られる理解は、新たな計測や介入手法等の技術発展を刺激し、これらの双方向的進展が車の両輪のごとく生命科学の分野における革新をもたらすと考えます。そして、究極には生命現象を量子のレベルで語ることができるようになります。さらにそれらの知見に基づき、医療分野における全く新しい診断技術や公衆衛生におけるウイルス等の極微量検出技術、新機軸の分子デザインによる創薬等が生み出されることが期待できます。さらに渡鳥が利用している量子力学に基づく高感度磁場センサーの作動原理解明により、GPSに変わる人工衛星に依存しない高感度位置情報量子センサーの開発にもつながります。量子科学技術が広く医学・医療のみならず、様々な産業の発展や社会システムの変革に貢献することが見込まれています。必ず、社会に大きなイノベーションを起こすに違いありません。

今から100年前に量子力学が誕生し、人類は電子や光を自由に操ることができるようになり、私達の日常生活は一変しました。21世紀に入り、量子通信や量子コンピュータといった分野を先頭に、新たな科学技術の発展と社会変革が世界的に期待されるようになりました。この競争分野に、従来の「理工系」の人間だけでなく、「生命科学者」が一緒に参戦した時、人類究極の謎である「生命とはなにか?」に答えを出せるかもしれません。さらにバイオや医療にとどまらず社会システムに革新的なイノベーションを起すことができるかもしれません。

「量子」と「生命」。 量子生命科学研究所は、専門性の違いこそを価値と見なし、多様性を尊重し、多様性を調和させ、異分野融合により新しい時代を拓こうとする研究所です。

実際、ここ量子生命科学研究所にはQSTはもちろんのこと全国から集結した非常に幅広い様々な専門家達がおり、施設内には量子技術に基づく最新の計測設備や計算科学などの強力なツールが揃い、広く外部利用に開かれています。医療分野などに新しい産業を生み出そうとする、企業とのコラボレーションもすでに始まっています。

今、世界では多様性爆発による対立や戦争が絶えません。しかし私達は、多様性こそを原動力として、この場所に新しい学術を打ち立てようとしております。QST職員はもとより、日本全体の研究者と力を合わせ、さらに海外の研究者をも引き込んで、この分野を牽引し、日本が世界を先導できればと考えております。そして、量子科学技術を介する「調和ある多様性の創造」により、量子科学技術そのものの発展は勿論のこと、平和で心豊かな人類社会の発展に貢献したいと考えています。

最後となりましたが、今後とも変わらぬご支援・ご鞭撻を賜りますよう、改めてお願い申し上げます。ありがとうございました。