2025年1月25日(土曜日)にベルサール八重洲にて次世代PET研究会2025を開催しました。研究会では、QSTがミッションとする「がん死ゼロ・認知症ゼロの健康長寿社会の実現」のために、量子医科学研究所が研究の柱の一つとして推進しているPET(陽電子断層撮像法)の研究開発における2024年の成果を報告しました。また、特別講演として東北大学金属材料研究所の吉川 彰 教授より、成果を社会実装する戦略について、ご自身のスタートアップの経験を交えて資金調達方法やビジネスモデルについてお話をいただきました。若手研究者に向けては、自分の研究成果の社会実装に興味があるならスタートアップに挑戦してほしい、とのメッセージが送られました。
研究会には、核医学および関連分野の大学や企業の研究者や技術者、マスメディアなど100人が参加しました。発表後には今後の研究の進展への期待の声が寄せられるとともに、技術の改良や向上のみならず研究開発の方向性においても示唆に富む質疑応答が活発に行われました。
研究成果報告会場 |
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特別講演 |
ポスター発表 |
QSTの研究成果報告 概要
より安心な重粒子線がん治療の提供に向けたOpenPET装置の研究開発では、頭頸部がん患者を対象に治療中の重粒子線の体内飛程を可視化する臨床試験について予備的な結果を示しました。加えて、可視化により得られる情報を腫瘍の状態の診断に活用する研究を進めていることも紹介しました。
頭部専用PET装置の研究開発では、株式会社アトックスと製品化したVrain TMを用いて、認知機能低下の自覚がある軽度認知障害(MCI)が疑われる方を対象にアミロイドPETを実施した結果を示しました。PET撮像中に被検者が動いてしまっても鮮明で定量性の高い脳画像を得られるデータ補正技術や、Vrainよりもさらに高い解像度を目指す頭部用PET装置の要素技術の開発についても報告しました。
次世代の医療技術として研究開発している全ガンマ線イメージング(WGI)とQ-PET(量子PET)についても報告しました。PETとコンプトン画像の両方を取得するWGI開発では、小動物用の試作4号機の改良によるコンプトン画像の画質向上や、ヒト用の装置開発に向けたシミュレーション結果を示しました。Q-PET(量子PET)では、老化や疾患の原因になると言われるフリーラジカルの生体内での生成量を直接定量できるかを物理実験により検討したことを報告しました。