平成23年7月13日
独立行政法人 放射線医学総合研究所
経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の放射線防護・公衆衛生委員会(CRPPH)の第69回会合が、5月17~19日にフランス・パリのOECD 本部で開催され、酒井一夫放射線防護研究センター長が出席し、福島第一原子力発電所原子力災害に関する報告を行いました。
NEAは、OECDの専門機関として1958年に欧州原子力機関(ENEA)として発足し、1972年に我が国が欧州以外の国としてはじめて参加した際に、現在の名称に改められました。OECD/NEAには現在EU諸国を中心に30ヶ国が加盟しています。同じ原子力に関わる国際機関である国際原子力機関(IAEA)が、すでに原子力を利用している先進国だけでなく、これから原子力を利用しようと考えている発展途上国まで、幅広い国が加盟しているのに対して、OECD/NEAは、すでに原子力を利用する技術を取得している先進国が主立った加盟国であるのが特徴です。
CRPPHはこれらOECD/NEA加盟国からの専門家で構成される常設委員会の1つで、(1)放射線防護・公衆衛生に関する情報交換及び経験の移行の場を提供する、(2)ICRP 勧告・その他の国際基準の解釈や実行に関する共通の理解や指針を探る、(3)放射線防護分野の最新の知見を科学技術的なレベルでレビューして国際的な合意を必要とする場合には助言や参考文書を作成する、(4)放射線防護体系をより単純かつ透明にするための概念や施策を進める、(5)放射線防護や放射線関連問題に関して国際的な協調活動を促進させる、などの活動をNEAやOECD内の他の委員会やIAEA等の国際機関と協調して進めています。6人からなるビューロー会議があり、事務局とともに運営方針を決めていますが、酒井センター長はその1人です。
OECD/NEAは今回の原子力災害発生直後から、CRPPHとその傘下の作業パーティーである職業被ばく情報システム(ISOE)や原子力緊急時事項作業パーティー(WPNEM)と事故への対応を検討し、その結果、今回のCRPPH会合の開催初日、開会総会の直後に、福島第一原子力発電所原子力災害に関するセッションが開催されました。今回の酒井センター長の報告は大きな関心を集め、委員会として今後も状況・対応などについての情報交換を進めることで合意しました。
同委員会にはチェルノブイリ事故対応に実際に携わった経験を持つ有識者も多く、情報交換を密にすることによって、今後の復旧に向けての助言等を得られることが期待されます。
なお、酒井一夫センター長の発表資料は以下のとおりです。