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放射線医学研究所

生活環境と放射線(東京電力福島第一原子力発電所事故に関連するQ&A)

掲載日:2024年3月27日更新
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測定方法

  1. 個人で測定器を購入しました。どのように測定したらよいですか?
  2. サーベイメータや線量計の測定値がSvで表示されているのは、実効線量を表しているのでしょうか?
  3. ホールボディ・カウンタによる内部被ばく線量の評価方法について教えてください
  4. 食品、上水中の放射性物質はなぜヨウ素131、セシウム134やセシウム137の濃度しか発表されないのですか?
  5. 一日分の尿ならある程度の被ばく量が推定できると聞き、頑張って子どもの尿を集め、測定してもらいました。この測定値から、どのように被ばく量を推定するのでしょうか?
  6. 尿中のセシウムで内部被ばくを推定できますか?また事故前にはどうだったのですか?
  7. 「平成24年に報道されたプルトニウム239、240、241はどのように測定したのでしょうか?量研機構に測定を依頼することは可能ですか?
  8. プルトニウム241とはどういう放射性核種ですか?
  9. 報道で伝えられた双葉避難所で避難住民の靴から測定された値(100,000cpm)について、数値の意味を教えてください

生活上での注意点

  1. 庭の放射線量を測りましたが、空間線量率の高い場所がありました。なぜですか?
  2. 雨の日は空間線量率が高いのですが、今でも放射性物質が降ってきているのでしょうか?
  3. 近所で線量率の高い場所を見つけた場合は、どうしたらよいのでしょうか?
  4. 放射性物質で汚染された食べ物のことが報道されていますが、野菜などを食べる際に気をつけることはありますか?
  5. 今でも雨に濡れないようにすべきでしょうか?
  6. プールに入っても大丈夫ですか?
  7. 室内が暑いときに、窓を開けてもよいですか?服装や洗濯物の取り扱いについても教えてください
  8. 首都圏に住んでいますが、外出を避けた方がよいですか?今でも放射線のレベルが高い場所があります。大丈夫でしょうか?
  9. 放射性物質が含まれた水道水を、シャワーやうがい、歯磨きなどに使っても大丈夫ですか?
  10. 布団を4時間くらい外に干しました。甲状腺の手術の既往がありますが、その布団に寝ても大丈夫でしょうか?
  11. 人での放射性物質の除染とは、どのようなことを行うのですか?家でもできますか?
  12. 避難地域、屋内退避地域の住民ですが、避難するときに着た服や、汚染検査で放射能が検出された服はどうすればよいですか?

食べ物と水

  1. 食品の基準値はどのように設定されているのですか?
  2. 放射性セシウムは野菜にどのくらい含まれていますか?
  3. お店で売っている肉類は食べても大丈夫ですか?
  4. お店で売っている魚介類は食べても大丈夫ですか?
  5. 放射性物質で汚染されている水産物が市場に流通しているのではないですか?
  6. 放射性セシウムの溜まりやすい食品があれば教えてください
  7. プルトニウム241の食品への移行が気になりますが?
  8. 今回の原発事故以前にも食品中にセシウムやストロンチウムが入っていたのですか?
  9. 乳児用の粉ミルクから放射性セシウムが検出されたと報道がありましたが、どのくらいの量なのでしょうか?
  10. 平成23年3月22日に東京都の金町浄水場の水道水に、1リットルあたり210ベクレルの放射性ヨウ素が含まれていたと報道がありました。今でもペットボトルの水を調理などに使用しています。水道水を使っても大丈夫でしょうか?
  11. 放射性ヨウ素を含んだ水を沸騰すると、放射性ヨウ素が蒸発すると聞きましたが、本当ですか?浄水器等で濾過できますか?

その他

  1. 今回の事故に対してとられている放射線に関する基準は、外国に比べて甘いのではないですか?
  2. 除染作業をした人が近くに住んでいますが、被ばくしますか?
  3. 福島県から避難されてきた方を受け入れても大丈夫ですか?
  4. プルトニウム241が放出されるということは予測されていなかったのでしょうか?

 

Q.個人で測定器を購入しました。どのように測定したら良いですか?

A.測定器の検出部分を地面と平行にし、地面から1メートルの場所で複数回測定を行い、放射線量はその平均値として求めます。

放射線の測定器に用途により様々な種類があります。まず、購入された測定気のマニュアルをよく読み、何を測定しているのか、測定器の精度について理解してください。

身の回りの放射線量を測定することで、日常生活における外部被ばく線量を知ることができます。放射線量を測定するために、まず測定器を汚染から守る必要があります。泥や砂が付着しないように測定器を薄手のビニール袋で包みます。もし、測定器全体を包むことができない場合、検出部のみを包みます。測定したい地点を決めたなら、地面から1メートルの高さで放射線量を測定します。幼児や低学年児童の生活空間を測定する場合は50センチメートルの高さで測定しても構いません。一定の距離を保たず、汚染していそうな場所に測定器を近づけて測定した場合、よりひどく汚染している場所の特定は可能ですが、外部被ばく線量の推定には向きません。測定器の放射線検出部位は地面と平行にし、なるべく体から離すようにします。測定器は電源を入れてすぐに正確な測定ができるわけではありません。電源を入れて値がある程度安定するまで待ってから測定を行います。測定は一定間隔で複数回行い、平均値をその場の放射線量とします。

 

Q.サーベイメータや線量計の測定値がシーベルト(Sv)で表示されているのは、実効線量を表しているのでしょうか?

A.サーベイメータなどの放射線検知装置がシーベルト(Sv)で表示されている場合、周辺線量当量を、また、ガラスバッジなどの個人被ばく線量計の測定値(Sv)は、個人線量当量を表しています。実効線量は直接測定できません。

実効線量は、直接測定することができません。サーベイメータなどの放射線検知装置がSv(シーベルト)を表示している場合、実効線量ではなく、「周辺線量当量」を示しています。また、ガラスバッジなどの個人被ばく線量計の測定値(Sv)は、「個人線量当量」を表しています。

周辺線量当量や個人線量当量は、実際の放射線管理や規制の場面で用いるために導入されたもので、同じ条件では実効線量よりも高い値となります。我が国の法令上、防護のための管理測定においては、実用性の観点から、直接測定できるこれらの値を実効線量とみなして安全管理を行うことが認められています。

ただし、被ばく影響を評価するためには、これらの値に放射線が身体に当たる状況やガンマ線のエネルギー*を考慮した係数を乗じ、実効線量に換算する必要があります。

例えば、福島第一原発事故の外部被ばく線量評価に用いられている一部のデータの値は周辺線量当量ですが、今回の事故によって外部被ばく線量に起因すると考えられる7核種(Te-129m、Te-132、I-131、I-132、Xe-133、Cs-134、Cs-137)について、換算係数を算出した結果、その幅は0.44から0.59でした。このことから、全ての放射性核種を考慮した保守的評価として一番高い0.59から、さらに丸めた値である0.6を、当該データの値に乗じて実効線量を推定しています。

*放射性核種によって放出するガンマ線のエネルギーが決まっていますので、これはつまり、放射性核種に依存するということになります。

 

Q.ホールボディ・カウンタによる内部被ばく線量の評価方法について教えてください

A.ホールボディ・カウンタで測定するのは体内から放出されるガンマ線です。このガンマ線の量と質から被ばくの程度を評価します。

ホールボディ・カウンタ測定でわかるのは、測定した時点で体内に存在するガンマ線を放出する核種の量です。この「放射性物質の量」から「被ばく量」を推定するためには、放射性核種が「いつ」「どのように」体内に入ったかを知る必要があります。東電福島原発事故後しばらくの間の評価では、被ばく量の推定に用いる体内に入った時期を、「平成23年3月12日に1回の吸入」としていましたが、その後「毎日の食物などから摂取」に変更されています。

放射性セシウムは体内に取り込まれたあと、そのまま留まるのではなく、代謝により体外に排出されます。 測定時の量は、排出して減少した後の結果を見ています。そのため、放射性物質放出の初期(3月12日)に体内に取り込んだとして計算すると、被ばく量は最大となり、最も安全側の評価になります。一方、子どもは代謝が早いので、例え3月12日に吸入していたとしても、半年もすると数百分の一に減少しており、このような小さな量を測定する場合は誤差が大きくなります。この誤差を含んだ数値で3月12日まで遡って被ばく量を計算するの では、科学的に意味のある評価が困難です。むしろ日常の食事などから慢性的に少しずつ体に入っているとして評価した方が現実的であると考えられます。

参考リンク

福島県ホームページ ホールボディ・カウンタによる内部被ばく検査について

(平成25年10月31日更新)

 

Q.食品、上水中の放射性物質はなぜヨウ素131、セシウム134やセシウム137の濃度しか発表されないのですか?

A.放射性ヨウ素及び放射性セシウムは、原子力施設の事故に伴い大量に放出され、被ばくによる影響が大きい放射性核種であるが、簡易に測定が可能なため、迅速にデータの公表を行なっているためです。

今回の事故以前は、通常のモニタリング方法※で実施されていました。けれども、今回のような事故直後は、できるだけ早く測定結果が出るように、緊急時対応用のマニュアルに基づいて簡便なガンマ線測定による計測が行われています。

採取された試料は、洗浄や粉砕などの簡単な処理を行い、測定試料を作成します。最初は、ゲルマニウム半導体検出器を用いてセシウム137やヨウ素131のようにガンマ線を放出する核種の検出を行います。この測定器は、各放射性物質から出てくるガンマ線のエネルギーを区別することができるため、同時に多くの核種を別々に測定することができます。

ストロンチウム90やプルトニウム239、240などはガンマ線を放出しないために、この検出器では測定することができません。煩雑な分離操作を行った後、ストロンチウムはベータ線を、プルトニウムはアルファ線を測定する必要があります。このため、計測に数週間要する場合もあります。(詳細は「ストロンチウム90はどのように測定するのですか?」をご覧下さい。)

今回に限らず、これまでの原子力施設における事故の状況なども踏まえて、放出量が多く、被ばくによる影響が大きい放射性核種を迅速に測定した結果、放射性セシウムやヨウ素のデータが中心に発表されています。

食品の放射性セシウムの基準値は、放射性セシウムとストロンチウムなど放射性セシウム以外の核種(事故によって大量に放出され、半減期が2年以上の核種のため、ヨウ素-131は含まれない。)の比率を計算し、放射性セシウム以外の核種による内部被ばくによる線量を考慮して設定されています。 ですから、放射性セシウムの量にだけ注意していれば、ストロンチウムによる内部被ばくについても問題はないと考えられます。また、放射性セシウム以外の核種のセシウム137に対する初期淡水中濃度比が2%以下と小さく、また、それらの実環境中の濃度レベルが極めて低くなっていること等から測定が困難であるため、水道水中の放射性物質については、放射性セシウムを対象としてモニタリングを行うこととしています(ヨウ素131は半減期が8日であるため、今回の事故の場合、事故数ヶ月後には検出されなくなります。)。

※環境中の放射性物質の調査は、1960年代から、各都道府県の公立の研究機関で実施されています。この調査については、採取する試料、処理法、測定法が全国で統一されています。そのため、全国レベルで比較することが可能です。

関連リンク

原子力規制庁HP 陸土及び植物の放射性ストロンチウム分析結果

 

Q.一日分の尿ならある程度の被ばく量が推定できると聞き、頑張って子どもの尿を集め、測定してもらいました。この測定値から、どのように被ばく量を推定するのでしょうか?

A.尿中の放射性物質の量から体内にある放射性物質の量を推定し、体内に取り込んだ時期が分かれば、内部被ばく線量を推定することができます。

体の中の放射性物質は、ずっと体内に留まっている訳ではなく、尿や糞中に排泄されます。放射性物質を取り込んでからどのくらいの時間が経つとどのくらいの割合が尿に排泄されるか(尿中排泄率といいます)は、よく調べられています。このデータを使えば、尿中の放射性物質の量から、体内にある放射性物質の量が分かり、体内に取り込んだ時期が分かれば内部被ばく線量を推定することができます。しかし、放射性物質が尿中へ排泄される割合は個人差や年齢差が大きく、また同じ人でも水を多く飲んだり、汗をかいたりなどの条件や体調によってかなり変わります。したがって、できるだけ誤差を小さくするために、普通は1回尿ではなく、一日分の尿を採取して測定するようにしています。

しかし小さな子どもの場合、一日分の尿を集めるのは大変です。当所では2011年6月から7月にかけて行った福島県の方109人の内部被ばく検査では、簡便な検査方法を探すために、一回分の尿を測定しました。この時の結果では、残念ながら尿中の放射性セシウムの量とホールボディーカウンタによる体内の放射性セシウムの量とは相関しませんでした。(福島県のホームページに「県民健康管理調査検討委員会資料」として公開されています。

福島県ホームページ 『県民健康管理調査』第3回検討委員会(平成23年7月24日開催)

この時の当研究所の測定では、尿中セシウム濃度は高い方でも1リットルあたり数10ベクレルでした。相関が見られなかったのは、この程度の低い濃度では前述のような誤差が大きいためと考えられます。代謝速度などの揺れ幅の大きさを考えると、この程度の放射性物質の濃度では、たとえ1日尿以上を集めても、誤差は小さくならないと考えられます。

一方、尿中には1リットルあたり約40ベクレルの自然放射性核種であるカリウム40が存在します。カリウム40は放射性セシウムとよく似た放射線(ベータ線とガンマ線。そのエネルギーも似ています。)を放出することを考えますと、仮に尿中から微量の放射性セシウムが検出されたとしても、今回の測定結果では、自然放射線による線量と同等かそれ以下であったと言えます。

 

Q.尿中のセシウムで内部被ばくを推定できますか?また事故前にはどうだったのですか?

A.原理的には可能ですが、大量の尿が必要になります。2020年現在で、通常の生活を送られている方であれば、検出はされません。1960から80年代には世界中で核実験が行われ検出されていました。

1日分の尿を使用すれば、ある程度推定することができます。しかし、セシウムの尿中への排泄には個人差や年齢差が大きく、推定には比較的大きな誤差が含まれます。また子どもは放射性物質の体外への排泄が早いため、体内に取り入れてからの時間が経過すると推定は難しくなります。

2011年の原発事故前にも大気圏核実験の影響などにより、尿中にセシウム137が検出されていました。1959年11月の2府県の中学生2250人についての調査によると、50人分の尿1Lあたり、平均で1月2日ベクレル、最低で0.8ベクレル、最高で1月7日ベクレルでした※1)。この尿中のセシウム137は1960年まで減少し、その後1964年まで急激に上昇しました※2)。(詳しく知りたい方は、「一日分の尿ならある程度の被ばく量が推定できると聞き、頑張って子どもの尿を集め、測定してもらいました。この測定値から、どのように被ばく量を推定するのでしょうか」をご参照ください。)

※1)Journal of Radiation Research 3(1962)p.120~129

※2)「第2回放射能調査研究成果発表会論文抄録集」p.46「人尿中のCs-137について」、同第3回、同第6回。

(2017年1月11日訂正)

1959年の分析人数を45人から2250人に訂正(引用論文の記述では中学生1人あたり200ml、50人分を1サンプルとして、45サンプルを測定)。

「セシウム134も存在していたと考えられますが、測定データがありません。」を削除(正確には、「瞬時に反応が終了する核実験ではセシウム134はほとんど生成されず、当時の技術では測定できなかったため測定データが無い。)

 

Q.平成24年に論文により発表されたプルトニウム239、240、241はどのように測定したのでしょうか? 量研機構に測定を依頼することは可能ですか?

A.高性能の質量分析装置を用いて、プルトニウム原子の重さごとに分けて原子数を測定します。量研機構に測定を依頼することはできません。

サンプルを加熱して灰にしたものを硝酸で溶かし、特殊な樹脂を用いて分離し、プルトニウムを集めます(通常は、ここでアルファ線を測定してプルトニウム239とプルトニウム240の和を計算します。この場合、プルトニウム241の測定は困難です)。

さらに分離を繰り返し、プルトニウムの純度を高めたサンプルを、特殊な装置がついた高分解能Icp-MS(質量分析装置の一種)を用いて測定して、プルトニウム原子の重さごとに分けて測定します。

プルトニウムの測定は、プルトニウムを扱う許可を得た機関でないとできません。そのため、分析できる機関は限られています。

また、今回の測定法は、特にプルトニウムの分析に高度に習熟している人でなければ測定できないため、誰でも測定できるわけではありません(現在、量研機構でのルーチン化は、不可能です)。

申し訳ありませんが、外部からの受注はこのような事情のため受け付けることができません。

「土壌や農林水産物等の環境試料中のプルトニウムはどのように測定するのですか?」もご参照ください。

文部科学省による「プルトニウム238、239+240、241の核種分析の結果(第2次調査)について」も参照してください。

*Jian Zheng et al.:Isotopic evidence of plutonium release into the environment from the Fukushima Dnpp accident. Scientific Reports 2, 304; DOI:10.1038/srep00304 (2012).

 

Q.プルトニウム241とはどういう放射性核種ですか?

A.プルトニウム241はプルトニウムの同位体1つで、他の同位体よりも食品摂取による内部被ばくのリスクは比較的小さいと言えます。

プルトニウム240に中性子が当たることなどでできる放射性核種で、通常、自然界にはありません。半減期が14.4年であり、プルトニウム239やプルトニウム240と比較すると半減期がかなり短い核種です。α線をほとんど出さず、β線を出してアメリシウム241に変わります。そのため、食べ物を経由して取り込んだ場合の線量係数がアルファ線を放出するプルトニウム239やプルトニウム240よりも低いという特徴があります。

プルトニウム及びアメリシウム241の比較

 

半減期(年)

特徴

プルトニウム238

87.7

キュリウム242がα線を出すことで生成される
主にα線を出してウラン234に変わる

プルトニウム239

24,065

ネプツニウム239がβ線を出すことで生成される
主にα線を出してウラン235に変わる

プルトニウム240

6,537

主にα線を出してウラン236に変わる

プルトニウム241

14.4

主にβ線を出してアメリシウム241に変わる

アメリシウム241

432

主にα線を出してネプツニウム237に変わる

 

経口摂取の線量係数(ICRP72*より抜粋)

 

3ヶ月

1歳

5歳

10歳

15歳

成人

プルトニウム238

4.0×10-6

4.0×10-7

3月1日×10-7

2月4日×10-7

2月2日×10-7

2月3日×10-7

プルトニウム239

4月2日×10-6

4月2日×10-7

3月3日×10-7

2月7日×10-7

2月4日×10-7

2月5日×10-7

プルトニウム240

4月2日×10-6

4月2日×10-7

3月3日×10-7

2月7日×10-7

2月4日×10-7

2月5日×10-7

プルトニウム241

5月6日×10-8

5月7日×10-9

5月5日×10-9

5月1日×10-9

4月8日×10-9

4月8日×10-9

アメリシウム241

3月7日×10-6

3月7日×10-7

2月7日×10-7

2月2日×10-7

2.0×10-7

7.0×10-7

[単位 : Sv/Bq]

* ICRPが発表しているこれらの係数は、注目する放射性核種が壊変して生じる放射性核種による被ばくも考慮されています。

 

Q.報道で伝えられた双葉避難所で避難住民の靴から測定された値(100,000cpm)について、数値の意味を教えて下さい

A.一般的に放射線測定に使われているGMサーベイメータで測定したと想定した場合、表面汚染レベルは約400Bq/cm2となります。

100,000cpm(双葉避難所で避難住民の靴から測定された値)

報道で伝えられている100,000cpmについて、一般的に放射線測定に使われているGMサーベイメータで測定したと想定した場合、表面汚染レベルは、およそ400Bq/cm2となります。ただし、測定する機器が異なった場合には、有感面積・機器効率が違うため、計算結果は同じにはなりません。

核種をヨウ素131と想定し皮膚に付着した場合には、皮膚の吸収線量率の試算は次のとおりです。

皮膚表面汚染密度1Bq/cm2あたりの皮膚吸収線量率(nGy※/h)は、ヨウ素131の皮膚の深さ70μmのとき、係数は1319(nGy/h)/(Bq/cm2)となり、皮膚(深さ70μm)の吸収線量率は0.53(mGy/h)となります。皮膚の除染を行うことにより、吸収線量率はさらに小さくなります。

※ガンマ線、ベータ線の場合は、ほぼ1nGy(ナノグレイ) = 1nSv(ナノシーベルト)です。1ナノグレイは1グレイの10億分の1です。

 

Q.庭の放射線量を測りましたが、空間線量率の高い場所がありました。なぜですか?

A.放射性物質が雨で流されて一箇所に集まったりするため、局所的に放射性物質の濃度が高い場所ができていることがあります。また他の要因も考えられます。

風に乗って飛んできた放射性物質が雨などによって地面に落ちるときに、落ち方がまばらだったり、落ちた直後に雨で流されて一箇所に集まったりするため、局所的に放射性物質の濃度が高い場所ができていることがあります。雨水と一緒に流されてきた塵などの溜まりやすい雨どいの下などが、その例です。一般的に、アスファルトなどの道路より、土の表面で放射性物質の濃度が高くなる傾向にあります。また、草や枯れ草の上に落ちた放射性物質はそのまま留まりやすいと言われています。

なお、庭などの土壌が攪拌されていない限り、現在原子力発電所事故によって放出された放射性セシウムのほとんどは、土壌の表面数cm以内に留まっていると考えられています。従って表面の土壌を除去すると、庭の空間線量率をある程度下げることができます。ただし、ガンマ線は庭の外からも届くため、庭だけを処置しても空間の放射線量が下がらない場合もあります。

 

Q.雨の日は空間線量率が高いのですが、今でも放射性物質が降ってきているのでしょうか?

A.天然の放射性物質(ラドンやラドンが壊れてできる物質)によるものです。原発事故とは関係ありません。

大気中にある天然の放射性物質(ラドンやラドンが壊れてできる物質)が、雨に洗い流されて落下し、地表面に集まるため、地表面近傍の空間放射線量が上昇するもので、降雨時には原発事故以前にも観測されていた自然現象です。これらの物質が放射線を出す期間は短く(物理的半減期が短い)、雨が止んでから概ね数時間以内に線量は降雨前の状態に戻ります。

参考リンク

新潟県ホームページ 「天気や場所により放射線量が違う理由について教えて」

 

Q.近所で線量率の高い場所を見つけた場合は、どうしたら良いのでしょうか?

A.様々な要因が考えられますので、お住まいの自治体にご相談ください。

お住まいの各自治体にご相談ください。

周辺より放射線量の高い箇所(地表から1mの高さの空間線量率が周辺より毎時1マイクロシーベルト以上高い数値が測定された箇所)を地方自治体が発見した場合、原子力規制庁に連絡することとなっています。詳しくは、原子力規制庁のホームページをご覧ください。

原子力規制庁放射線モニタリング情報 「福島県以外の地域における周辺より放射線量の高い箇所への対応について」

環境省は、福島県以外で毎時0.23マイクロシーベルトを超える102の市町村を、汚染状況重点調査地域に指定しています。

環境省報道発表資料 「放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染廃棄物対策地域、除染特別地域及び汚染状況重点調査地域の指定について(お知らせ)」

また、局所的に線量率が高い場合は、放射線の強さは線源からの距離の2乗に反比例して減少します。小さな子どもなどはそのような場所には近づかせないようにした方がよいでしょう。

(平成25年10月31日更新)

 

Q.放射性物質で汚染された食べ物のことが報道されていますが、野菜などを食べる際に気をつけることはありますか?

A.今現在、市場に放射能により危険なものは出回っておりませんので、特に気にする必要はありません。

基準値を上回る放射性物質に汚染された食品については出荷制限が行われていますが、家庭においても、野菜をよく洗う、煮る(煮汁は捨てる)、皮や外葉をむく、などによって、汚染の低減が期待できます。

東電福島原発事故直後では、大気中に放出された放射性核種が葉の表面に付着して いる状況でした。現在流通している野菜類は、ほとんどの放出が終了した後に植えられたものが出荷されています。つまり、もし少しの汚染がある地域で自作すれば、放射性核種は大気からの付着ではなく土壌から根を経由するなどにより植物体内に吸収されて、野菜内部に含まれている可能性があります。そのため、洗浄の効果は、直接放射性核種が野菜表面に付いていた頃に比べますと、低下します。しかし、それでも、ある程度の除染効果はありますし、放射性物質を含む土壌 等を野菜から落とすということは、放射性核種の除去につながりますので、土壌を落とす、という観点から丁寧に洗浄することを、おすすめします。

また、放射性セシウムについては茹でることにより、半分程度の除染効果が期待できます。

なお、一部の野生きのこや山菜には放射性セシウムが高濃度に蓄積されることが知られています※。放射性セシウムが基準値を超えるきのこが産出された地域では、自分できのこを採取することは避けた方がよいでしょう。

現在市販されているキノコは人工栽培物が多く、栽培のための菌床の濃度が高くならない限り心配はありません。

(平成25年10月31日更新)

※きのこは元素としてのセシウムを蓄積する傾向にあります。野生きのこ中の放射性セシウムは、その地域への放射性セシウムの沈着量だけでなく、放射性セシウムの土壌中の深さ方向の分布、菌糸の位置、菌の種類等によって変わります。また、土壌中の分布が時間(年)と共に変化すると、きのこ中の濃度も変化することが報告されています。

関連リンク

林野庁HP「野生きのこを採取される皆様への注意喚起について」

 

Q.今でも雨に濡れないようにすべきでしょうか?

A.その必要はありません。現在、雨中に東京電力福島第一原発事故由来の放射性物質は検出されていません。

その必要はありません。平成23年3月中に降った雨でも、その中に含まれていた放射性物質は健康に影響のあるほどの濃度ではありませんでした。現在ではほとんどの地域で雨の中に東京電力福島第一原発事故由来の放射性物質は検出されていません。

(東京電力(株)は、平成23年9月8日に7月下旬から8月上旬の2週間の放出は事故直後の3月15日に比べ、1000万分の一程度と発表しています。また、東京都健康安全研究センターは、平成23年6月1日から9月25日までの間で、8月5日(セシウム134と137合計で10.4Bq/m2)および8月6日(セシウム134と137合計で8.4Bq/m2)以外では、ヨウ素とセシウムは不検出と発表しています。それ以降もモニタリングを継続されていますが放射性物質は検出されていません。)

(平成25年10月31日更新)

 

Q.プールに入っても大丈夫ですか?

A.大丈夫です。お近くの水道局等で、水道水に含まれる放射能濃度が公開されておりますのでご確認ください。

環境省は水浴場の放射性物質に係わる水質の目安について、放射性セシウム(放射性セシウム134及び放射性セシウム137の合計)が10Bq/L以下とする指針(平成24年6月改定)を示しました。これは現在の水道水の管理目標値(10Bq/kg)と同じです。水道水の 管理目標値は飲用のみならず、入浴等に伴う被ばく線量も考慮して設定されています。プールに使用する上水に含まれる放射性物質は検出限界以下となっていますので、こうした上水を使用しているプールなら心配する必要は無いでしょう。

また、屋外のプールなどで、土などがプールの底に落ちているのが気になるかもしれませんが、放射性セシウムは土などに強く付着しており、水中に溶けだしてくることは、あっても極めて微量です。なお、水には放射線の遮蔽効果がありま す。

(平成25年10月31日更新)

文部科学省HP「福島県学校等屋外プールの放射線モニタリング 調査結果(速報)」

環境省HP 「水浴場の放射性物質に関する指針」

 

Q.室内が暑いときに、窓を開けて良いですか?服装や洗濯物の取り扱いについても教えてください

A.事故後の初期に観察された空気中の放射性物質は、既に検出できないレベルに収束しています。事故前の状況と変わりませんので、特段の注意を払う必要はありません。

空気中に含まれている放射性物質、おもにダストとして浮遊している物質についてのご心配かと思います。

福島県のモニタリング結果の報告などからも、現在に至っては放射性物質は検出されていませんので、普段通りに窓の開け閉めや、屋外での洗濯物の扱いをしていただいて問題はありません。

参考:空気中のほこりに含まれる放射性物質について

福島県内各地の日々の状況は、以下で確認することができます。

福島県 環境放射能監視テレメータシステム 空気中の放射性物質濃度グラフで見る(集じん中測定)

平成23年3月には東電福島第一原子力発電所から放射性物質の放出が多く有り、気流に乗って流れてきていました。そのため一部の地域では窓を閉め、換気扇を止めるように指導がなされていました。事故後数ヶ月後以降は、原発からの大気中への新たな放射性物質の放出は、仮にあってもごく微量です。(東京電力(株)は、平成23年9月8日に7月下旬から8月上旬の2週間の放出は事故直後の3月15日に比べ、1000万分の1程度と発表しました。また、東京都健康安全研究センターは、平成23年6月1日から9月25日までの間で、8月5日(セシウム134と137合計で10.4Bq/m2)および8月6日(セシウム134と137合計で8.4Bq/m2)以外では、ヨウ素とセシウムは不検出と発表しています。(平成23年9月27日更新))
東京都健康安全研究センター「環境放射線測定結果」

現在の汚染された地域で空間線量率が高い原因は、空気中に放射性物質が多いためではなく、地面などに沈着した放射性セシウムが放射線を出しているからです。このセシウムは土に強く吸着されているため、再び空気中に漂い出てくることはほとんどありません。従って、窓を開けても大丈夫ですし、エアコン、換気扇も使用して結構です。

同じ理由で長袖、長ズボン、マスクも現在の状況では必要ありません。洗濯物も外に干して大丈夫です。

 

Q.首都圏に住んでいますが、外出を避けたほうがいいですか?いまでも放射線のレベルが高い場所があります。大丈夫でしょうか?

A.通常の生活圏内に放射線レベルが問題になるような場所はありませんので、心配には及びません。放射能が検出される場所であっても、日常的な活動においては影響を受けるレベルではありません。

事故から現在まで首都圏で観測された放射線の量のうち、局所的に高い線量が観測されていますが、外出を避けなければならないほどの線量ではありません。

平成23年3月15日午前9時から午後5時に東京と栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、静岡の1都7県で計測された放射線レベルでは最大で、1時間あたり1マイクロシーベルトと報告されています。でもこれは一過性の出来事で、この時の放射性物質を含む空気の流れは殆ど留まることなく通り過ぎました。ところが3月22日から数日の間に、放射性物質を含む空気がやってきたときに、雨で地上に落ち、そのまま沈着してしまいました※。現在、首都圏に空間線量率が少し高い場所があるのはこのためです。放射性物質が空気中に漂っているわけではありません。

被ばくの低減化の観点からは、長時間、局所的に高い線量が観測されている場所にとどまるのを避けるか、放射性物質の除去を考えるべきですが、除去法によっては新たに高濃度汚染箇所を作ってしまう可能性もあり、注意が必要です。

また、サーベイメータなどの測定値には自然界の放射線の量も含まれてしまうので、事故の影響を考える際には注意が必要です。
(平成23年9月27日更新)

※このとき沈着した放射性物質のうち、最も量の多かった放射性ヨウ素は半減期が約8日と短いため、現在では殆ど無くなっており、その分、空間線量率も下がってきています。現在の放射線量はセシウム137やセシウム134によるものが多く占めており、空間線量率の下がり方は少なくなっていますが、長期的に見た場合、現在の値がずっと続くようなことはありません。放射性セシウムのうち事故直後には約半分ほどを占めていたセシウム134の半減期が2年程度のため、放射性物質の量として1年間で3割程度減少します。一方、セシウム137は半減期が30年のため、数年では殆ど減少しません。しかし、空間線量率への影響は、セシウム134のほうがセシウム137よりも約2倍以上と大きいため、空間線量率もセシウム134の減少を反映して、数年間は下がり続け、1年後には約2割減少します。

また、現在では大気中の浮遊塵は、ほとんど検出されておらず、新たな沈着は有りません。
東京都産業労働局HP「都内における大気浮遊塵の測定結果について」

 

Q.放射性物質が含まれた水道水を、シャワーやうがい、歯磨きなどに使っても大丈夫ですか?

A.現在、水道水には放射性物質が検出されていません。問題が生じることは全くありません。

現状の水道水は、浄水場で適切な処理をされ、さらに放射性物質の濃度が測定されており、検出限界以下です。よって飲用や調理に使う場合だけでなく、それ以外の用途で使用しても問題はありません。

(平成25年10月31日更新)
(参考)厚生労働省:「福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道の対応について」 [PDF 145KB]

 

Q.布団を4時間くらい外に干しました。甲状腺の手術の既往がありますが、その布団に寝ても大丈夫でしょうか?

A.空気中の放射性物質の測定結果などから、甲状腺に関連した既往歴があっても、戸外で干された布団を使用しても問題はないといえます。

大気中の放射性ヨウ素の影響を心配していらっしゃるのだと思いますが、全く問題がありません。

その後、現在に至るまでのモニタリング調査におきましても、大気中に放射性ヨウ素などの放射性物質は検出されておりません。甲状腺に既往歴をお持ちの方におきましても、外干しした布団を使用されても問題はありません。

 

「室内が暑いときに、窓を開けて良いですか?服装や洗濯物の取り扱いについても教えてください」もご参照ください。

 

Q.人での放射性物質の除染とは、どのようなことを行うのですか? 家でもできますか?

A.汚染された着衣などを脱衣し、身体を流水などで洗浄することで行います。身体の表面であれば家庭でも対応可能です。放射能の測定ができる場合、洗浄後の状態を確認します。

衣服や髪の毛、皮膚などに付着した放射性物質を取り除くことです。衣服を洗濯したり、お風呂に入る、髪や体を洗うことにより放射性物質は取り除くこと、すなわち除染ができます。これらは家庭でも十分に行うことが出来ます。なお、洗濯やお風呂などに使ったお湯や水は、そのまま捨てて頂いて結構です。(以上平成23年4月8日更新)。警戒区域内居住者の一時立ち入りについても同様にお考え下さい。

なお、その他の場合、現在では新たな空気中への放射性同位元素の放出はありませんので、このような注意は不要です。(東京電力(株)は、平成23年9月8日に7月下旬から8月上旬の2週間の放出は事故直後の3月15日に比べ、1000万分の1程度と発表しています。また、東京都健康安全研究センターは、6月1日から9月25日までの間で、8月5日(セシウム134と137合計で10.4Bq/m2)および8月6日(セシウム134と137合計で8.4Bq/m2)以外では、ヨウ素とセシウムは不検出と発表しています。(平成23年9月27日更新))
東京都健康安全研究センター「環境放射線測定結果」

 

Q.避難地域、屋内退避地域の住民ですが、避難する時に着た服や、汚染検査で放射能が検出された服はどうすれば良いですか?

A.避難された住民の方の着衣については、洗濯後に通常通りにご使用いただいて問題はありません。

現時点では避難地域、屋内退避地域の住民の方々の服には健康に影響がでるような量の放射線が検出されたことはありません。通常通り洗濯していただき、今後も着ていただいて構いません。(以上は平成23年4月8日更新)。警戒区域内居住者の一時立ち入りについても同様にお考え下さい。

なお、その他の場合、現在(平成23年9月27日)では新たな空気中への放射性同位元素の放出はありませんので、このような注意は不要です。(東京電力(株)は、平成23年9月8日に7月下旬から8月上旬の2週間の放出は事故直後の3月15日に比べ、1000万分の1程度と発表しています。また、東京都健康安全研究センターは、平成23年6月1日から9月25日までの間で、8月5日(セシウム134と137合計で10.4Bq/m2)および8月6日(セシウム134と137合計で8.4Bq/m2)以外では、ヨウ素とセシウムは不検出と発表しています。(平成23年9月27日更新))
東京都健康安全研究センター「環境放射線測定結果」

 

Q.食品の基準値はどのように設定されているのですか?

A.コーデックス委員会が指標としている年間線量1ミリシーベルトをもとに、飲料水は線量 (0.1 mSv/年)から基準値を10 Bq /kgとし、一般食品は1年間でも0.88ミリシーベルト以内の放射線量に収まり、かつ安全側に切り下げた100Bq/kgを基準値としています。

食品中の放射性物質の基準値は、食品の国際規格を策定しているコーデックス委員会が指標としている年間線量1ミリシーベルトを踏まえて設定されています。飲料水は、世界保健機関(WHO)が示している指標に沿って、飲料水の線量 (0.1 mSv/年)から基準値を10 Bq /kgとしています。また一般食品は、線量 (0.9 mSv/年)から、流通する食品の50%(国産品の全て)が放射性物質を含むと仮定すると、13~18歳の男性の年間の一人当たりの食品摂取量は、約748kgで、その50%の374kgが国産品に由来します。さらに、対象となる全ての放射性核種の実効線量係数を考慮した値を用いて計算すると、一般食品中の放射性物質は120Bq/kgとなります。

つまり、一般食品に含まれる放射性物質濃度が120Bq/kgを超えなければ、1年間でも0.88ミリシーベルト以内の放射線量に収まることとなります。この120Bq/kgを安全側に切り下げた100Bq/kgを一般食品の放射性物質濃度にすることで、より安全性が確保されています。(参照:放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成30年度版)第8章 食品中の放射性物質

 

Q.放射性セシウムは野菜にどのくらい含まれていますか?

A.野菜(自生の山菜やキノコを除く)では2013年度以降、基準値は超過していません。また、一旦は出荷制限が行われた地域から出荷された野菜は観察期間を経て放射性セシウムが検出されないレベルであることが確認されています。

実際に出荷されている野菜(自生の山菜やキノコを除く)では2013年度以降、基準値※を超過していません。一旦は出荷制限が行われた地域から出荷された野菜は、観察期間を経て放射性セシウムが検出されないレベルであることが確認されてから出荷制限解除されています。

土から野菜などへの放射性セシウムの移行のしやすさは、植物としての性質、農耕地土壌の成分や性質、肥料などによりさまざまです。日本の土壌はもともとセシウムを収着しやすい性質があるため、土壌をよく耕してから植える野菜(多くの場合1年未満)は、根から放射性セシウムを吸収しにくいことが影響していると考えられます。一般の農作物で極端に放射性セシウムを蓄積する種類は知られていません。もし仮に基準値を超えた野菜を何度か食べたとしても、一回当たりの摂取量を考えると大きな線量にはなりません。

キノコは放射性セシウムを溜める性質が知られていますが、現在市販されているキノコはおがくずや米ぬかを用いた人工培地か原木であり、放射性セシウム濃度が制限されているため、放射性セシウムが高くなる心配はありません。

※国は、食品の安全と安心を確保するために、事故後の緊急的な対応としてではなく長期的な観点から食品中の放射性物質の新たな基準値を設定し、平成24年4月1日から施行されました。
厚生労働省 HP「食品中の放射性物質への対応」

 

Q.お店で売っている肉類は食べても大丈夫ですか?

A.畜産物(牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳、鶏卵)については、平成25年度以降は全て基準値100Bq/kg以下となっています。

市場に流通する食品については検査が行われ、食品の基準値を超えた場合には国や自治体に報告することになっています。そのため店で販売されている食品については問題ありません。

平成23年7月には放射性セシウムの基準値超過が牛肉で検出されましたが、現在分かっている最高値(3200Bq/kg)の牛肉200gを3か月間毎日食べ続けたとした場合、それにより一生涯に受ける放射線量は大きくても0.8mSvを超えません(幼児の場合で計算)。牛の全頭検査は2011年8月から開始していますので、暫定規制値や基準値を超える牛肉は市場に出回っていません。なお2012年度は約18.7万頭の検査を行い、6頭は100 Bq/kgを超えましたが、2013年度以降2016年度まで毎年約23.5万から32.5万頭検査をしましたが、基準値を超えることはありませんでした。現在も一部の地域で検査が継続されていますが、基準値を超過していません。

牛肉は、福島事故後に高濃度の放射性セシウムを含む稲わら等が牛に給与されたことが原因でした。農林水産省は、粗飼料中の放射性物質の暫定許容値として放射性セシウム 100Bq/kgを示しています。稲わらは鶏や豚のえさになることはありませんので、この件に関しては豚や鶏は問題ありません。牛肉については農林水産省ホームページから最新情報をご覧ください。
農林水産省ホームページ

また牛乳については、初期から検査され、出荷制限がされていますので問題ありません。また、放射線の高い地域付近で狩猟で得た肉(イノシシなど)については含まれる放射性物質が高い可能性があるので安全の確認が必要です。

豚肉は、平成24年5月に基準値を超過した事例がありましたが、平成24年6月以降は全て100Bq/kg以下であり、基準値を超過したものはありません。鶏肉については、トウモロコシ等の輸入飼料に依存しており、原発事故以降に検査した鶏肉・卵については暫定規制値以下で、平成24年4月から施行された基準値(100Bq/kg)も下回っています。

 

Q.お店で売っている魚介類は食べても大丈夫ですか?

A.店頭で販売されている魚介類は放射性セシウム濃度レベルが低いことが保証されています。濃度レベルが下がったことを受けて、海産の魚介類は全ての魚種が出荷できるようになりました。淡水魚については一部の地域の魚種で出荷制限が行われています。

東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射性セシウムが検出される魚介類があったことから、徹底したモニタリングが行われ、基準値を超えないことが確認された海域で採取されたものが市場に出回っていますし、場合によっては魚種を限定して安全を確実にしてきました。

福島県の沿岸漁業は、事故から約9年が経過した現在でも本格的な操業がを自粛しています。毎週150検体程度の魚介類のモニタリング調査を行い、2020年2月末で228種、約6万3千検体が検査され、結果は福島県のホームページ等で公表されています。魚介類の放射性セシウム濃度は時間の経過とともに低下しています。100Bq/kgを超過する検体数の割合も時間の経過とともに減少し、2015年4月以降、100 Bq/kgを超える検体数は0%となっています。不検出(約10Bq/kg以下)の数も年々増加し、2019年1月以降は99.8%を占めています。このようなモニタリング結果を受けて、2020年 2月25日に出荷制限指示対象種はなくなりました。

淡水魚は事故直後に比べて基準値を超える魚種の数は大幅に減少しています。一部の天然の淡水種(魚類やカニなど)は、基準値を超えています。そのため、岩手県、宮城県、福島県、栃木県、群馬県、茨城県と千葉県で出荷制限や採取や出荷の自粛などが行われています。

引用資料:水産物の放射性物質調査について PDFファイルより(水産庁、2020年3月)

<参考> 魚介類などの水生生物は、呼吸により、生息域の水中の放射性物質を、また経口摂取により餌などから体内へ取込みます。放射性物質濃度は、水中よりも生物体内の方が高くなり、これを生物濃縮と呼んでいます。濃縮の程度は生物種や部位(筋肉や内蔵など)によって異なりますが、放射性セシウムの場合、一般的にはあまり大きくありません。

現在放射性セシウムが体内へ取込まれても、これが特定の部位に濃縮するような水生生物は報告されていません。また体内に入った放射性セシウムや放射性ストロンチウムは代謝により体外へ排出されます。これまでの研究で、食物連鎖による高い濃縮傾向は見つかっていません。淡水魚では、海水魚に比べて、放射性セシウムが濃縮されやすいことがわかっています。これは浸透圧が異なるためです。

 

Q.放射性物質で汚染されている水産物が市場に流通しているのではないですか?

A.水産物中の放射性セシウム濃度は減少傾向にあり、2020年3月現在で海産物では全ての種で出荷制限が解除になっています。

養殖や漁などにより採取された魚介類については、放射能検査が実施されています。放射性物質の濃度が食品中の基準値を超えた場合には、市場に流通しないように、出荷制限が行われています。

福島県の海で獲れる大部分の水産物に含まれる放射性セシウム濃度は、時間の経過と共に減少しています。これは、(1)海水や海底土の放射性セシウム濃度が減少していること、(2)水産物の体の中に放射性セシウムが取り込まれても代謝(尿や糞など)を通じて排出する浸透圧の影響、などが挙げられます。

2015年4月以降、放射性セシウム濃度の基準値(100 Bq/kg)を超える海産物はありませんでしたが、2019年1月にコモンカスベ1個体から160 Bq/kgという基準値を超えるものがありました(水産庁)。

その後、さらに継続して放射能検査を行った結果、基準値を下回ることが再び確認されたため、カサゴは2019年8月、コモンカスベは2020年2月に出荷制限が解除になりました。2020年3月現在、海産物の出荷制限は全ての魚種で解除されています。引き続き、モニタリングを行っていきますが、今後基準値を著しく超えるもの(出荷制限される程)は検出されにくいと考えられます。

尚、水産物中の放射能測定の結果は下記に随時報告されていますので、ご参照ください。

(平成31年3月18日更新)

関連リンク
水産庁, 水産物の放射性物質の結果について

福島県 農林水産物・加工食品モニタリング情報

日本原子力研究開発機構, 福島総合環境情報サイト

厚生労働省 食品に関する出荷制限および摂取制限

 

Q.放射性セシウムの溜まりやすい食品があれば教えてください

A.キノコはもともとセシウムを溜めやすい性質があります。また、天然の食品には、放射性セシウムが検出されることがあります。

すでに自然界に安定元素のセシウムが存在しています。その研究から、菌類(キノコ類・地衣類)や苔類には比較的多くのセシウムが見られますが、もともと土壌に収着されやすい性質があり、そのため、一般的な植物や家畜類のセシウム濃度は低くなっています。

同様のことが放射性セシウムについても言え、キノコは溜まりやすい食品として知られています。キノコの中でも共生菌(植物と物質のやりとりをして生活をする菌)の方が、腐生菌(倒木や落ち葉を腐らせて生活する菌)よりも放射性セシウム濃度が高いことが知られていて、日本でも同様の結果が報告されています(田上、内田 [2017] Radioisotopes 66, 277-287)。また、トナカイはトナカイゴケを好んで食べますが、トナカイゴケは地衣類なので、放射性セシウムが含まれており、そのため生育場所によってはトナカイ肉の放射性セシウム濃度が高いことが知られています。

現在、福島第一原子力発電所の事故で放出された放射性セシウムについては、農畜産物では汚染対策をきちんと行っているため基準値を超えることはなくなり、濃度そのものが検出されにくい状況となりました。一方で、森林環境中では放射性セシウムがほとんど土壌に捕捉されつつも、一部が循環していることが知られています。そのため上述したキノコは溜まりやすい状況です。放射性セシウムが基準値を超えるキノコが産出された地域では、自分でキノコを採取することは避けた方がよいでしょう。

植物については、新芽が成長する時にカリウム(植物の必須元素で、セシウムが同じような動きをする)を必要とするので、放射性セシウムも集まる傾向にあります。そのため、山菜など新芽を利用する食品では、天然の場合は検出されることがあります。コシアブラ(新芽)は、比較的濃度が高い傾向が報告されています。野生動物でも山菜を好む動物は、その影響を受ける傾向にあり、シカ、クマ、イノシシ等は放射性セシウムが検出されることがあります。チェルノブイリ原発事故後の研究からは、これらの野生狩猟動物(ジビエ)では、放射性セシウムが減るのが遅いことが知られており、ある一定量が森林環境で循環していることが要因と考えられます。

魚の場合は別項目にも記載があるように、淡水魚では生理作用のせいで放射性セシウムを溜め込む傾向にありますが、現在は河川や湖沼水中の放射性セシウム濃度が著しく減少しており、そのような場所で汚染していない餌を食べさせると、魚中の濃度は検出できないレベルです。天然の淡水魚では放射性セシウムが検出されますが、これは餌による影響が大きいと考えられます。なお、海産生物は淡水魚とは反対に塩分を体外に排出する生理作用がありますので、放射性セシウムが体内に溜まることがなく、そのため、食品モニタリングでは2015年度から2018年度の65182検体中、基準値を超えた魚は1検体(2019年1月 広野沖で採取されたコモンカスベ)だけでした。

現在は食品中の放射性セシウムの濃度レベルが低く、厚生労働省からも発表されている日常食の調査結果からも、内部被ばくは無視できるほど小さい数値であることがわかります。山菜やジビエ等を食べる量もそれほど多くはないことや、調理加工によって濃度が下がることを考えると、放射性セシウムの溜まりやすい食品を気にする必要性は相当低くなっていると考えられます。

 

Q.プルトニウム241の食品への移行が気になりますが?

A.プルトニウムの土壌から玄米への移行を測定した結果、ほとんど移行していませんでした。一般に、土壌から農作物へはあまり移動しない事が知られています。

土の中に含まれるプルトニウムは、そこで育てている農作物へはあまり移動しない事が知られています。

農作物の放射性核種の濃度を、育てた土の放射性核種の濃度で割った値を、移行係数と呼びますが、プルトニウムの場合、一番高い値でも約450分の1(つまり土の濃度が1であれば、作物の濃度は450分の1)です(この値は壌土(粘土と砂が混じった土)で育てた根菜の葉が該当します)。土から米への移行係数の幾何平均値:3月3日×10-5です。

プルトニウム241が崩壊するとアメリシウム241に変わります。アメリシウムはプルトニウムよりは土から農作物への移動が大きくなりますが、その移動率は低いとされています。一番高い移行係数は、約30分の1です。(イネ科の茎や芽など)

参考までにアメリシウムの葉菜の移行係数は約1900分の1、根菜が1000分の1、豆類は約2600分の1です。

詳細はIAEAのTechnical Reports Series No. 472をご確認ください。

* Youyi Ni et al.:
The transfer of fallout plutonium from paddy soil to rice: a field study in Japan.

J. Environ. Radioact., 196, 22-28. Doi: 10.1016/j.jenvrad.2018年10月01日0 (2019).

 

Q.今回の原発事故以前にも食品中にセシウムやストロンチウムが入っていたのですか?

A.1945年から1980年にかけて行われた大気圏核実験の影響で、放射性セシウムや放射性ストロンチウムは今回の原発事故以前にも食品中に含まれていました。

過去の大気圏内核実験の影響で世界中に放射性物質が拡散しました。食品中にも放射性セシウムが長い間検出されています。近年は検出限界以下のものが増えていましたが(今回の事故前)、1960年代ではごく当たり前に食品中から検出されていました。

環境放射能のデータベースに掲載されている1963年の日常食では、セシウム137を一日平均で2月1日ベクレル(最大は4月4日ベクレル)摂取していました。この平均値を年間の被ばく線量に直すと、成人で9月9日マイクロシーベルトとなります (なお最大値で計算すると20マイクロシーベルトを超えますが、常にそのよう な食事をしたとは考えにくいため実際はもっと低い値になると考えられます)。

一方、ストロンチウム-90ですが、環境放射能のデータベースに掲載されている1963年の日常食では、一日平均0.48ベクレル摂取していました。この数値は年間に直すと、成人で0.38マイクロシーベルトとなります。

 

Q.乳児用の粉ミルクから放射性セシウムが検出されたと報道がありましたが、どのくらいの量なのでしょうか?

A.2011年12月6日に放射性セシウムが最大で31 Bq /kg 検出されましたが、本製品を3か月間毎日飲み続けたとしても、預託実効線量は約6月7日マイクロシーベルトであり、年間線量限度の150分の1です。

2011年12月6日に乳児向け粉ミルク(フォローアップミルク)から放射性セシウムが最大で31 Bq /kg 検出されたことが発表されています。当時は、暫定規制値200B /kgを下回っていましたが、製造販売業者は自主回収を行いました。原料の脱脂粉乳はすべて東日本大震災より前に加工されたものでしたが、2011年3月14から20日に埼玉県内の工場で原料を乾燥過程で、福島第1原発事故により放出された大気中の放射性セシウムが混ざったと報道されています。また2011年3月11日以降に製造された乳児向け粉ミルクの放射性物質の検査(検出限界5 Bq/kg)が継続的に実施されていますが、検出されていないと報告されています。

乳児向け粉ミルクの対象となる月齢の乳幼児が一日に飲むミルクの量の目安は400mlから700mlで、これは製品56~98gに相当します。対象となる月齢の乳幼児が、製品の一日の摂取目安の量を飲んだ場合、9か月の子どもの場合預託実効線量*で約0.07マイクロシーベルト、1才の子どもの場合預託実効線量で約0.03マイクロシーベルトとなります。

仮に製品出荷時の9月**から、検出の発表があった12月までの3か月間、この最大量のセシウムが含まれる製品を、製品摂取の目安量を毎日飲み続けたとすると、最大で放射線の量は預託実効線量で約6月7日マイクロシーベルトとなります。

この計算で求められた放射線量は、平時の公衆の年間線量限度(1ミリシーベルト***)と比較しておよそ150分の1程度です。メーカーが公表している検査結果によると、同時期に製造された同じ製品でも多くが放射性セシウムは不検出(検出限界値未満)となっており、実際には上記の計算結果よりも大幅に、放射線量は少なくなると予想されます。

なお、製造から出荷まで5ヶ月以上経っていますので、半減期が約8日と短いヨウ素131が、もしセシウムと同じように混入したとしても、出荷時点において既に無くなっていると考えられます。

*預託実効線量とは赤ちゃんの場合は70歳までに受ける実効線量です。詳しくは「内部被ばくの場合の線量である預託実効線量とはなんですか?」をご覧ください。

**メーカーに確認したところ、9月出荷との回答を得ました。

***1ミリシーベルトは1,000マイクロシーベルトです。

 

Q.平成23年3月22日に東京都の金町浄水場の水道水に、1リットルあたり210ベクレルの放射性ヨウ素が含まれていたと報道がありました。今でもペットボトルの水を調理などに使用しています。水道水を使っても大丈夫でしょうか?

A.現在、放射性ヨウ素は水道水中に含まれていませんので、使用して大丈夫です。

子供が水道水を飲んでも、また、水道水を料理に使っても放射性ヨウ素の健康への影響を心配する必要はありません。

金町浄水場の水道水の放射性ヨウ素については、その後濃度が低下し、平成23年4月6日時点で不検出(1リットルあたり7ベクレル以下)となりました。

放射性ヨウ素に関する国の暫定規制値は、水1リットルあたり300ベクレル(乳児は100ベクレル)です。この規制値は、放射性ヨウ素を含む水を長期間摂取し続けた場合でも「甲状腺が受ける放射線量(注:全身が受ける放射線の量ではありません)が1年当り50ミリシーベルト以下」となるように定められています。なお、放射性セシウムの暫定規制値は平成23年度では水1リットルあたり200ベクレルでしたが、平成24年4月1日から基準値は水1リットルあたり10ベクレルとなっており、この基準値を超える地点は現在ありません。放射性セシウムは、埼玉県では平成23年4月上旬まで一部の浄水場で検出されていますがごく少量でした。また、東京都、神奈川県、千葉県では検出されませんでした。

 

Q.放射性ヨウ素を含んだ水を沸騰すると、放射性ヨウ素が蒸発すると聞きましたが、本当ですか?浄水器等で濾過できますか?

A.水道水に含まれる放射性ヨウ素は水を沸騰させても蒸発しません。一部の浄水器で除去することができました。

放射性ヨウ素は沸騰しても蒸発しなかったという実験結果が、量研機構の研究者から報告されています(Tagami and Uchida [2011] Chemosphere, 84, 1282-1284)。水分の方がたくさん蒸発し、むしろ放射性ヨウ素が濃縮される場合がありました。放射性ヨウ素の除去については、本ホームページ、4月6日の「水道水中のヨウ素131の除去について」をご参照ください。
水道水中のヨウ素131の除去について

 

Q.今回の事故に対してとられている放射線に関する基準は、外国に比べて甘いのではないですか?

A.国際放射線防護委員会ICRPのどんなに小さくとも有限のリスクがあるものとして、「リスクを容認できる」ことを基準に、防護のレベルが考えられています。

一般の方々、原子力施設に係る作業者についての放射線に対する基準には、国際放射線防護委員会(ICRP)が示した範囲に沿って検討された値が設定されました。これらの線量の基準は、通常の原子力や放射線の使用の場合、緊急事態期の状況および事故収束後の復旧期での基準は、異なる線量の範囲で設定することが次の通り示されています。

 (1)計画的に管理できる平常時(計画被ばく状況)、公衆の線量限度は1ミリシーベルト、

(2)事故や核テロ等の非常事態(緊急時被ばく状況)20から100ミリシーベルト、

(3)事故後の回復や復旧の時期等(現存被ばく状況)1から20ミリシーベルト

このように、どんなに小さくとも有限のリスクがあるものとして、「リスクを容認できる」ことを基準に、防護のレベルが考えられています。これが放射線防護の原則として「正当化」「防護の最適化」「線量限度の適用」が重要であると考えられる基盤になっています。「防護の最適化」とは、社会・経済的なバランスも考慮しつつ、できるだけ被ばくを少なくするよう努力するということで、必ずしも被ばくを最小化するということではありません。

(参照:放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成30年度版)第4章 防護の考え方

福島第一原発事故後に緊急事態期として設定された基準は今後の復旧期の段階として変更されました。避難のための基準において、チェルノブイリ事故の際の最終的な避難のための基準よりも高いレベルとなっていますが、チェルノブイリ事故でも、事故直後から基準が順次変更されて下げられたという経緯があります。

 

Q.除染作業をした人が近くに住んでいますが、被ばくしますか?

A.除染作業をした方から被ばくすることはありません。

放射性物質で汚染された環境における除染作業では、住民の被ばく線量を低減するために、汚染状況を測定し、汚染土壌等の除去、汚染物の運搬・保管をしています。除染作業後は、汚染検査所において作業者の身体や装具の放射能量を測定し、汚染が無いことを確認しています。また、作業者が作業中に受ける外部被ばく及び内部被ばくの測定も行われることになっており、被ばく線量限度を越えないように管理されています。よって、除染作業をした方の近くにいても、不要な被ばくをすることはありません。

 

Q.福島県から避難されてきた方を受け入れても大丈夫ですか?

A.避難されてきた方から被ばくすることは無く、全く問題ありません。

平成23年3月29日の新聞報道によりますと、「福島第一原子力発電所に近い南相馬市中心部の相双保健所では8000人以上を検査したが、除染を必要とする基準値を超えた人はいなかった」と報告されています。その時点で除染が必要な方はおらず、またその方を受け入れたからと言って、受け入れた方に被ばくや汚染はありません。

福島県から避難されてきた方という理由で、医療機関での受診、アパートなどの入居、就職、学校生活等に差別が生じる事の無いよう、冷静なご対応をお願いします。

 

Q.プルトニウム241が放出されるということは予測されていなかったのでしょうか?

A.放出は予想されていましたが、2012年の論文で実際に検出が確認されました。

2011年、6月6日に原子力安全・保安院は、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」という発表*を行っています。

その中で、大気中への放射性物質の放出量を試算しており、プルトニウム241の他、プルトニウム238、プルトニウム239、プルトニウム240など核種について報告しています**。

このように、放出は予想されていましたが、実際に検出されたのは2012年の論文***が初めてです。

*東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について(平成23年6月6日、原子力安全・保安院)

**東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について(別添)(平成23年6月6日、原子力安全・保安院)

*** Jian Zheng et al.: Isotopic evidence of plutonium release into the environment from the Fukushima Dnpp accident. Scientific Reports 2, 304; DOI:10.1038/srep00304 (2012).

上記の原子力安全・保安院発表資料(別添)表5の抜粋

解析で対象とした期間での大気中への放射性物質の放出量の試算値(Bq)

核種 放出量の試算値(Bq)
Pu-238 1月9日×1010
Pu-239 3月2日×109
Pu-240 3月2日×109
Pu-241 1月2日×1012
Np-239 7月6日×1013
Cm-242 1.0×1011

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