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六ヶ所フュージョンエネルギー研究所

令和2年度核融合炉工学共同研究優秀賞を授与しました

掲載日:2021年8月10日更新
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六ヶ所核融合研究所が事務局を務める核融合炉工学研究委員会が令和3年7月13日に開催され(オンライン会議)、令和2年度に核融合炉工学研究委員会で選定された研究課題2件を令和2年度核融合炉工学共同研究優秀賞として核融合エネルギー部門長より授与しました。

受賞者一覧

受賞課題は以下の通りです。

1.受賞件名

核融合中性子源照射モジュールの液体金属伝熱媒体と鉄鋼材料の材料共存性に関する実験的研究

受賞者

東京工業大学 近藤正聡  

研究代表者:近藤 正聡 (東京工業大学)​  

                

保坂 龍広(東京工業大学)​  

研究協力者​:保坂 龍広(東京工業大学)​

 

佐藤 聡(QST 核融合中性子源設計グループ グループリーダー)

量研担当者:佐藤 聡(QST 核融合中性子減設計グループ グループリーダー)

受賞内容

本研究では、先進核融合中性子源(A-FNS)の照射キャプセルに充填する液体金属伝熱媒体と低放射化フェライト鋼F82Hの材料共存性に関する研究を実施しました。特に、候補伝熱媒体として液体アルカリ金属であるリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ナトリウムカリウム合金(NaK:22Na-78K)を対象に、A-FNSの想定照射温度である350℃から550℃において静止場共存性試験を実施し、金相観察や減肉量評価等からF82Hの詳細な腐食機構を明らかにしました。こうした結果に基づいて Cr炭化物による腐食抑制手法を見出しました。また、伝熱媒体の絞り込みに資する物性・共存性のデータベースとしても纏めました。

この成果において、A-FNSの要素技術開発として、液体金属伝熱媒体との材料共存性に関して有益な知見を得た点は評価され、さらに、添加材を利用してリチウム中の腐食を抑制できる可能性を見出したことには新規性があり、期待以上の成果を得ているとのことで今回の受賞につながりました。

受賞者コメント

この度は令和二年度核融合炉工学共同研究優秀賞を頂き真にありがとうございます。本共同研究を実施するにあたり、QSTの野澤貴史博士と安堂正己博士にF82Hの腐食評価に関するアドバイスを頂きました。感謝申し上げます。今後はキャプセル形状を模擬したセミモックアップ型の共存性試験の実施や、液体金属伝熱媒体の共存性を改善させるための添加材の新規開発などへ研究を展開する計画です。

 

 

2.研究課題名

JET ILW実験におけるプラズマ対向機器表面およびダストのリチウム蓄積特性研究

受賞者

時谷 政行  (自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS))

研究代表者:時谷 政行  (自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS))

研究協力者:JET -ILW分析チーム

受賞内容

本研究では、欧州の核融合装置であるJET(Joint European Torus)装置でITERのプラズマ対向材模擬実験に供されたILW(ITER-Like Wall)で(1)対向材料へのトリチウムの分布特性、(2)対向材料表面の微細構造が不純物堆積層形成に及ぼす影響、 (3)タングステンを主とするダスト粒子の微細構造特性、に関する分析を進展させ、特に(2)では,対向材料が本来有するマイクロスケールの凹凸が不純物堆積層の形成厚さと物理特性に影響を及ぼすことが初めて示されました。

この研究は、数多くの大学および学生を率いて、コロナ禍の中、六ヶ所研にきて精力的に実験を遂行し、多くの新しい成果を蓄積し、 ITERでも重要な成果として引用文献になっています。

また、本研究の成果は、QSTと欧州の共同プレス発表も行われています。  

https://www.qst.go.jp/site/press/41989.html

このような成果が評価され今回の受賞につながりました。

受賞者コメント

このたびは、令和二年度核融合炉工学共同研究優秀賞をいただき、大変光栄に存じます。本共同研究は、欧州のトカマク型核融合実験装置JETのILW (ITER-Like Wall) 実験において重水素実験後に回収されたプラズマ対向機器を六ヶ所核融合研究所に輸送し、量子科学技術研究開発機構、自然科学研究機構核融合科学研究所、茨城大学、近畿大学、静岡大学、島根大学、富山大学、そして欧州の研究機関・大学の共同研究者が協力して分析し、 DEMO炉に向けた対向壁の設計および安全性の評価に必要な基礎データを得ることを目的として実施されました。多くの共同研究者・学生の皆様が「JET ILW分析チーム」として一丸となって研究を進めた成果を高く評価いただいたと認識しております。本分析チームの活動は今後も継続される予定ですので、引き続き国内外の議論を踏まえて推進して行く所存です。