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六ヶ所研究所

令和3年度核融合炉工学共同研究優秀賞を授与しました

掲載日:2022年8月9日更新
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​令和3年度核融合炉工学共同研究優秀賞を授与しました

六ヶ所研究所が事務局を務める核融合炉工学研究委員会が令和4年6月29日に開催され(オンライン会議)、
令和3年度に核融合炉工学研究委員会で選定された研究課題3件を令和3年度核融合炉工学共同研究優秀賞として
量子エネルギー部門長より授与しました。
受賞課題は以下の通りです。

受賞8トリミング

1.受賞件名

高温高圧三重水素水および三重水素水蒸気からの金属壁を介した三重水素移行量評価

受賞者: 

受賞者1

研究代表者  片山 一成  (九州大学)

一本杉

研究協力者  一本杉 旭人 (九州大学)

受賞者3

研究協力者  松本 拓  (九州大学)

受賞者4

量研担当者  染谷 洋二

受賞内容:

本研究では、原型炉におけるBOP(バランス・オブ・プラント)設計の具体化のために安全上の課題であった熱交換器、または蒸気発生器における三重水素(3H)移行量を正確に評価するために高温高圧水-金属界面および高温高圧水蒸気-金属界面における3H 移動現象に関する実験データの取得と関連研究の調査・整理を実施しました。実験には困難な条件下である原型炉仕様(約300℃、約15MPa)での高温高圧水間におけるインコネルに対する3H 透過実験ですが、令和2年度までに構築した二重管式透過実験装置を用いて実施し、3H 透過フラックスとして、1.12×10-15 mol/(m2・s)の値を得ました。また、当該環境下での3H 透過プロセスを把握するための実験も実施し、インコネル表面での3H 水の還元反応によって発生した水素状3H の一部がインコネルに溶解し、透過していたことが分かりました。検出された水素状3H 量から、インコネル管内での3H分圧を推算し、実効的な透過係数を求めたところ、気相間でのインコネルの水素同位体透過係数に比べて3桁程度小さい値となり、CANDU炉のデータ解析から求められた透過係数と同程度と分かりました。これらの成果は、一次冷却系統からの環境中への3H 透過抑制のために必要と考えていた中間冷却系統を除外し、直接的に蒸気発生器から発電系へと接続できることを示唆しており、無駄な熱効率低下を回避できる見通しを得たとして、原型炉BOP設計への貢献度が非常に高く、これらの研究成果が高く評価されました。

受賞者コメント:

この度、令和三年度核融合炉工学共同研究優秀賞に選出頂き、大変嬉しく存じます。学生と議論しながら実験装置を組み上げ、トリチウムが実際に透過してくるのか不安に感じながら実験をスタートした日をつい先日のように感じます。研究の遂行にあたっては、先行して関連研究をされていた方々の論文が大変参考になりました。また、多くの方々からもご助言を頂きました。この場をお借りして御礼申し上げます。学生にとりましても、本受賞は、今後の研究の励みになります。現象解明に向けて、実施すべき実験はまだ多くありますので、引き続き、原型炉設計に有益なデータを取得できるよう努力してまいります。

 

2.受賞件名:

機械的特性評価のための微小試験片技術に関する研究

受賞者: 

研究代表者:大畑 充(大阪大学)

研究協力者:清水 万真(大阪大学) 申 晶潔(核融合科学研究所)

量研担当者:加藤 太一朗

受賞内容: 

原型炉設計に必要な材料データを完備するには、中性子照射を受けた核融合炉構造材料に適用可能な試験技術の開発が重要です。そこで本研究では、特に引張、クリープ、破壊靭性試験を中心に微小試験片技術開発を進めました。特に、引張試験での破断直前の変形挙動を高精度に実験的及び解析的に評価する手法、クリープ試験での試験片形状効果の理解、破壊靭性試験での微小試験片の結果から標準片の結果を予測するための解析手法などの重要な技術・知見が新たに得られました。
この研究は、大学のネットワークを活用し、各微小試験片技術の集積を行い、試験技術の完成を目指すものです。その実現のため、本研究グループはIAEAが主導する微小試験片技術の国際ガイドライン策定の活動にも参加しております。これまでに得られた成果が多く反映されたこともあり、同技術の規格化に向けた貢献が高く評価されました。

受賞者コメント:

この度は令和三年度核融合炉工学共同研究優秀賞をいただき真に光栄でございます。ありがとうございます。本研究は、大阪大学、岐阜大学、福島工業高等専門学校、核融合科学研究所、ならびにQSTとの共同にてグループで推進してきたものであり、関係する多くの共同研究者・学生の皆様による共同研究成果を高く評価いただいたものと存じます。核融合中性子照射による材料試験には微小試験片による評価が必須であり、本グループの成果の統一規格化、さらにはIAEAが主導する微小試験片技術の国際ガイドラインへの反映に向けた活動を引き続き推進していく所存です。

 

3.受賞件名:

核融合中性子源照射モジュールの液体金属伝熱媒体と鉄鋼材料の材料共存性に関する実験的研究

受賞者: 

受賞者9

研究代表者  近藤 正聡 (東京工業大学)

受賞者10

研究協力者  保坂 龍広 (東京工業大学) 

量研担当者  佐藤 聡  

受賞内容:

本研究では、先進核融合中性子源(A-FNS)の照射キャプセルに充填する液体金属伝熱媒体候補材料と照射キャプセルに設置する試験片及び照射キャプセル容器である低放射化フェライト鋼F82Hの材料共存性に関する研究を実施しました。実験の難しい活性金属による腐食実験を系統的に実施し、共存特性を実験的に解明し、液体金属伝熱媒体候補材料選定への有益な指針を与えました。候補伝熱媒体として液体アルカリ金属であるリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ナトリウムカリウム合金(NaK:22Na-78K)を対象に、A-FNSの想定照射温度である250℃から550℃において、小型部分キャプセル及び実規模キャプセルを用いた静止場共存性試験を実施し、金相観察や減肉量評価等から液体アルカリ金属とF82Hの詳細な腐食機構を明らかにしました。こうした結果に基づいて Cr炭化物による腐食抑制手法を見出しました。また、伝熱媒体の絞り込みに資する物性・共存性のデータベースとしても纏めました。これらの研究成果はA-FNS照射キャプセル設計への貢献度が非常に高く、これらの研究成果が高く評価されました。

受賞者コメント:  

令和三年度核融合炉工学共同研究優秀賞を頂きまして大変光栄に思います。QST側と綿密な協議を重ねながら、大学の研究インフラを活用した実験を効率良く進めた結果、令和二年度の優秀賞に続き、二連覇を達成する事ができました。令和三年度は、中性子照射キャプセルの形状を模擬した実規模セミモックアップ型共存性試験や、液体金属の腐食性を抑制する添加材に関して新たな成果が得られました。こうした成果をA-FNSの照射キャプセルの設計に活かす事で、材料照射試験の精度を向上させる事ができると考えています。本共同研究を実施するにあたり、低放射化フェライト鋼F82Hの腐食進展メカニズムや腐食組織の硬さ評価手法に関して、QSTの野澤貴史博士と安堂正己博士にご協力頂きました。深く感謝申し上げます。