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量子医科学研究所

HIMAC30周年記念講演会を開催しました

掲載日:2025年2月19日更新
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​2024年12月20日(金曜日)に東京国際フォーラムにて、HIMAC30周年記念講演会 「重粒子線がん治療~量子メスが導く健康長寿社会~」を開催し、約370名にご来場いただきました。

檀上で挨拶するスーツの男性

開会挨拶

初めに、QST病院 今井 礼子 治療推進課長が、HIMAC(重粒子線がん治療装置)の建設と技術開発、および臨床研究の開始から保険適用に至るまでの30年間のあゆみをお話しました。また、より高度な重粒子線がん治療のため、現在、臨床研究を進めているマルチイオン照射による治療についても紹介しました。

つづいて、保険適用となった疾患のうち肺がんと肝がんについて、それぞれ国際医療福祉大学成田病院 吉野 一郎 病院長、千葉大学大学院医学研究院 小笠原 定久 講師から、疾患の特徴や治療法の選択における考え方などに関する講演がありました。吉野 病院長より、早期肺がんに対する重粒子線治療は、手術が困難な患者における補完的治療となるだけでなく、症例によっては第一選択にもなり得るとのお話がありました。小笠原 講師からは、重粒子線治療は肝機能が低下している方にも根治を目指す攻めのフェーズの治療機会を提供できるツールとなるとのお話がありました。

特別講演では、作家で医学博士の海堂 尊 氏より「AiとHIMACと海堂尊」と題し、過去QST病院で、病理医としての自身の研究が重粒子線治療研究において果たした役割と当時の思いなどが語られました。

パネルディスカッションは「量子メスによる次世代重粒子線治療の描く未来」をテーマに意見交換が行われました。パネリストとして、横浜市立みなと赤十字病院 輸血部 坂下 千瑞子 部長、読売新聞東京本社増満 浩志 編集委員、東海大学医学部 吉岡 公一郎 教授、QST病院 若月 優 副病院長が登壇し、QST病院 石川 仁 病院長がコーディネーターを務めました。

量子メスはQSTが研究開発中の小型で高性能な重粒子線治療装置です。重粒子線の不整脈治療への応用を研究している吉岡 教授は、現在主流となっている心臓カテーテルアブレーション術よりも体への負担が少ない重粒子線治療は、高齢者や合併症リスクの高い方にも選択肢となり得ると期待を述べました。こうした新しい治療の導入にあたり重要となる医療者の育成方法について坂下 部長からは、例えば中高生に対して行われている探求学習や、医学部教育で症例を想定して行われるグループ学習の機会に重粒子線治療を知ってもらい、技術を若い世代に継承していく取り組みが大事というアドバイスがありました。増満 編集委員からは、がんの放射線治療は世界的にも需要が高まっていくと予想されており、現在も少ないと言われる放射線治療医や医学物理士といった人材が活躍しやすい体制が整っていくと良いと思う、との意見がありました。若月 副病院長は、国内にある7つの重粒子線治療施設や日本放射線腫瘍学会といった関連学会と連携してオールジャパンで人材育成を進め、日本で育成した人材が海外の施設で活躍していくことが求められると考えていると応じました。

QSTでは健康長寿社会の実現を目指し、重粒子線がん治療のさらなる高度化と普及に向けて研究開発を加速していきます。