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先進プラズマ研究開発

第1回 若手科学者によるプラズマ研究会 | 研究会の概要

掲載日:2018年12月26日更新
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【本研究会は終了いたしました】

主題:プラズマ粒子制御

平成10年1月21〜23日開催

研究会の概要

これからのプラズマ核融合研究を担う若い研究者同士で活発な議論を行い若手同士の横のつながりをつくることのできる、既成概念にとらわれない新しい研究会をつくる目的で「若手科学者によるプラズマ研究会」をおこしました。この研究会は原研が主催するものですが原研の研究に役立てることを目的としているのではなく、プラズマ核融合コミュニティ全体に資することのできるような場を提供することが核融合研究の主要機関である原研の責務と考えて立ち上げました。

研究会の形式として上記の目的のために最善のものを探るべく、若手の大学の先生に御意見を頂いて次のようなスタイルとしました。研究会の構成は特別講演と一般講演からなる。特別講演は、若手研究者に核融合研究の最前線での研究課題、成果に触れてもらうことを目的としており、国内の主要な研究プロジェクトにおける研究を紹介していただく。一般講演は1件の発表につきポスター及び口頭発表両方を行う形式とする。これは、ポスターセッションにおいて自由に議論を行い各発表の内容をある程度理解しておいてからオーラルセッションに臨むことで、より活発で有意義な議論・意見の交換が可能となることを期待している。

初めての研究会なので出来るだけ多くの大学、研究機関から参加できるように、主題として「プラズマ粒子制御」を選びました。また、当研究会ではトーラス型・直線型といった各種磁場閉込め方式のみならず慣性核融合、更には核融合プラズマ以外のプラズマに関する様々な研究を対象としており分野を超えた議論を行う場にすることも目標としていますので、慣性核融合と宇宙プラズマの分野からの特別講演も設けました。研究会の参加者は23名であり、その内訳は大学院生が8名、若手の大学の先生及び研究者が15名でした。講演の内訳は、特別講演が5件、一般講演が13件あり、磁場閉込めからはト−ラス系のトカマク・ヘリカルと直線系のミラー、直線型装置を使った基礎物理の解明、粒子供給と排気手法、そして慣性核融合と太陽プラズマ等の非常に多岐にわたる発表があり、各参加者の興味を幅広く刺激することができたのではないかと思います。

研究会では、原研 竹永秀信氏による「JT-60Uにおける粒子制御」、核融合研 森崎友宏氏による「LHDにおける粒子制御」の2件の特別講演が最初に行われ、磁場閉じ込めプラズマの2つの大型プロジェクトにおける最新の研究成果と課題が報告された。JT-60Uからは、(1)様々な粒子ソースによる主プラズマでの粒子閉じ込め特性の比較と負磁気シアプラズマにおける粒子輸送、(2)ダイバータでのリサイクリングや排気特性に関連する粒子挙動、(3)排気付きW型ダイバータの排気特性評価、という粒子制御に関する包括的な研究成果が発表された。特に、負磁気シアプラズマにおいて内部輸送障壁近傍では粒子拡散係数が低減し対流速度が内向きになることを明らかにした。また、新型のW型ダイバータの排気性能を定量的に評価し、ダイバータへの粒子束の1%程度の排気量でも密度制御性があること及びヘリウム排気に関してITERで要求される条件を満足することを示した。間もなく稼動し始める大型ヘリカル装置LHDからは、粒子排気を目的としたダイバータ実験計画が報告された。「ヘリカルダイバータ配位」と「アイランドダイバータ配位」の2種類の磁場配位があり、前者は閉じ込め磁場配位に本来備わっている自然な配位であるがセパラトリックス外側にエルゴディックな磁場構造が存在する点が特徴的であり、後者は外部より制御された摂動磁場を印加する事により磁気島を生成しこれをダイバータ配位として利用するものである。更に後者に関して、トロイダル方向1ケ所のヘッドにリサイクリングを局在化させたローカルアイランドダイバータが紹介された。この他、NB、ガスパフ、ペレット、コンパクトトロイド入射といった粒子供給/密度制御のシナリオ、真空容器壁コンディショニング等の粒子制御方法についても報告された。

現在稼働中のヘリカル型磁場装置CHSからは、高イオンモードにおける粒子輸送、NB由来の損失高速粒子の計測に関する報告が行われた。高イオンモードはNBによる中心粒子供給によって電子密度分布を尖頭化することによって得られる改善モードであり、その粒子輸送特性がガスパフにより粒子供給される放電と比較して示された。NB高速イオンの軌道損失成分を直接計測するプローブによる研究では、損失高速イオン量の密度、磁場強度への依存性が報告された。またECH重畳による信号の増加、MHD振動と同期した高速イオンの損失が観測されている。

トカマク型装置からは3件の発表があった。TRIAM-1Mからは長時間放電(4分間)における水素リサイクリングについての報告があった。粒子供給量(ガスパフ)、水素イオン密度、中性ガス量のバランスから真空容器壁への水素原子吸蔵率、リサイクリング率を調べた。途中のガスパフに対する密度変化に対する考察から、リサイクリング特性が壁の状態だけで決定されてはいないことを示した。JT-60Uからは、赤道面及びX点近傍における可動静電プローブ計測によるスクレイプオフ層の特性(幅、密度・温度分布、流速)が報告された。JFT-2Mでは開ダイバータから閉ダイバータに改造を行い、閉ダイバータの方がダイバータ部での中性粒子圧縮率が大幅に高まり中性粒子逆流抑制効果があることを示した。これによりHモードと低温高密度ダイバータを両立させることができた。

ダイバータプラズマの制御の観点からの研究も発表された。ダイバータ板間に電圧を印加(ダイバータバイアス)することによりスクレイプオフ層(SOL)に流れる電流を制御しSOLにおける温度、密度、粒子束、熱流束を制御するシミュレーション結果が報告された。また、直線型ダイバータプラズマ模擬実験装置NAGDIS-IIによる非接触ダイバータプラズマにおけるプラズマ体積再結合過程に関する研究が報告された。

粒子供給手法として、コンパクトトロイド(CT)入射実験の発表があった。これはスフェロマック型CTで、JFT-2Mトカマクにおける入射実験の準備が進みつつある。現在真空トロイダル磁場中への入射を行い、CTの振るまいを検証している段階である。

理論からは、L/H遷移特性におけるダブルヒステリシスと、燃焼プラズマの自己点火条件に対するヘリウム灰の効果についての研究発表が行われた。L/H遷移における径電場の分岐理論において電場を作る損失機構としてイオンのロスコーン損失、バルク粘性損失、異常損失の3つを考慮することにより、L/H遷移特性の2重ヒステリシス特性の存在を示し、"compound dithers" と呼ぶELM現象の存在を予測した。0次元モデル方程式において自己維持型乱流モデルに基づき高βpモードとLモードのエネルギー閉じ込め則を仮定しヘリウム灰蓄積効果とシンクロトロン放射損失を考慮した燃焼プラズマのシミュレーション研究が発表された。ITERパラメータにおける自己点火条件が可能な運転領域が示された。

開放端系装置における電位形成や電場による不安定波動の励起についての報告が4件行われた。東北大学 金子俊郎氏による特別講演「ミラー磁場中ECRHに伴うプラズマ電位形成」では、ミラー磁場配位における局所ECRHによる電位形成機構の研究が紹介された。井戸型及び収束型磁場配位において唯一点のみのECRHでバリア電位とプラグ電位が形成されること、ECRHパワーを増加させると共鳴点近傍電子温度と共にプラグ電位差は増大していくが次第に飽和していくこと、ミラー比の増加と共にプラグ電位差が増加することが報告された。また、発散型磁場配位中の局所ECR効果により定常的にイオンを加速するような大きなプラズマ電位の降下が生じ、磁場発散度を増加させるとこのイオン加速電位差が増大しイオンエネルギーも電位差に比例して大きくなることが分かった。分割型エンドプレートにより径方向電位分布を制御できるQマシーンにおいて径方向電場及び電場シアと低周波揺動の関係を調べた報告が行われた。観測されたフルートモードは電場シアを減少させると強度が減少することからケルビン・ヘルムホルツ型不安定性と考えられる。一方ドリフトモード強度は電場シアの減少により増加することから、電場シアがドリフトモードを抑制する働きがあることが示された。帯電した微粒子やダストを含むプラズマの挙動の解明を目的にQマシーンにおいてフラーレンをダストとして使った研究では、負イオン生成率がある閾値を超えると負イオン生成領域付近で正弦波的あるいは孤立波的な粗密波が励起されることを示した。ガンマ10からは、プラグECRHによるエンドプレートへの端損失電子の制御を目的に、エンドプレート全面にメッシュを張りバイアスを印加する方法とエンドプレートからの二次電子にECRHを行うThermal Dikeという2つの制御手法の研究が紹介された。

慣性核融合の特別講演は大阪大学 兒玉了祐氏により「最近のレ−ザ−技術の進歩とレーザー核融合研究」と題して行われた。レーザー技術の進展が点火条件に向けたプラズマ性能の向上とプラズマ物理研究の拡がりに貢献している。超均質なレーザー照射の開発により、点火に要求される照射一様性の実現の見通しがついている。また均質ビームにより高密度プラズマ流体不安定性の精密な研究が可能となり、レーザーアブレーションによる初期加速時のレーリーテイラー不安定性の成長率が従来の予測より小さいことが確認された。また、超高強度レーザーの実現により、高速点火方式(レーザーにより圧縮した燃料プラズマを短パルス高強度レーザーにより生成される高密度高エネルギー粒子により追加熱する)の研究が可能となった。この方式では、圧縮均一性への要求の緩和と高利得が期待されている。また、高強度レーザーにより生成されるプラズマはこれまでに調べられていない強い相対論効果を伴った高密度プラズマの研究を可能としており、新しい物理現象が発見され始めている。

国立天文台 横山央明氏により特別講演「「ようこう」による太陽高温プラズマの観測と磁気リコネクションの数値シミュレーション」が行われた。太陽コロナをX線により観測する衛星「ようこう」によって、太陽コロナプラズマのダイナミックな性質が初めて明らかにされた。フレア、プラズマ放出現象、X線ジェット、小規模フレア等が観測されている。これらの太陽コロナ活動現象はリコネクションモデルによる数値シミュレーションでも良く再現されており、観測・理論両面からの理解が進んでいる。講演では「ようこう」による映像とシミュレーションによる太陽プラズマの時間発展がビデオムービーでも紹介され、その非常にダイナミックな映像に多くの参加者が惹きつけられた。  口頭発表に先立って行われた初日のポスターセッションでは、各研究の背景・動機から実験あるいは理論的手法、結果の詳細についての議論が活発に行われました。ここでの討論が2日目からの口頭発表において有意義かつ円滑な議論に役立っていたようです。研究会後に行ったアンケートでも、ポスターセッションを一度行ってから口頭発表を行うという試みが有効であったとの声を多くいただきました。

サマリーセッションでは、各研究の対象としているプラズマの密度・温度、時間・空間スケ−ル、制御(測定)する目的、直接制御(測定)する物理量、制御性等の観点から各研究を整理しつつ、各研究と共通する物理の関連付けを試みました。まさしくブレインストーミング的な熱気ある議論が行われました。初めての研究会であり、掲げた目標にどの程度迫れるか手探りで進めてきましたが、参加者が質の高い研究発表を行い研究会の狙いを良く理解して研究会をつくりあげたおかげで、参加者と開催者が共に納得できる研究会とすることができました。