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先進プラズマ研究開発

JT-60SA建設

掲載日:2020年11月30日更新
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JT-60SA関連機器組立ての完了(令和2年10月)

JT-60SA本体の組立完了後、超伝導機器の一部や配管等の関連機器の組立てを進めてきました。そして、共通架台、冷媒配管、クライオライン、電子サイクロトロン加熱用導波管などの関連機器の組立てが完了しました(図1)。

JT-60SA
図1 関連機器の組立てが完了したJT-60SA本体

これまでのJT-60SA建設には、国内外の多くの研究所・企業にご協力頂きました(図2)。その中で、スケジュール通りにJT-60SAを建設するために大きな貢献をして頂いた3社に量子科学技術研究開発機構核融合エネルギー部門長より感謝状を贈呈しました。

JT-60SA建設に貢献して頂いた企業・機関の例
図2 JT-60SA建設に貢献して頂いた企業・機関の例

大型機器を高精度で製作・設置する技術を開発し、JT-60SA本体の主要機器である真空容器の製作や本体全体の組立てを実現したことにより、JT-60SAプロジェクトが運転開始に向けて大きく前進したことを感謝して、東芝エネルギーシステムズ(株)と東芝プラントシステム(株)のJT-60SA本体及び関連機器の製作・組立チーム殿に感謝状を贈呈しました(図3)。

JT-60SA本体及び関連機器の製作・組立チーム殿への感謝状贈呈の様子
図3 JT-60SA本体及び関連機器の製作・組立チーム殿への感謝状贈呈の様子

ミリメーター単位の精度で設置することが求められる第一壁や各種磁気センサーの設置を実現したことにより、JT-60SAプロジェクトが運転開始に向けて大きく前進したことを感謝して、助川電気工業株式会社殿に感謝状を贈呈しました(図4)。

助川電気工業株式会社殿への感謝状贈呈の様子
図4 助川電気工業株式会社殿への感謝状贈呈の様子

常伝導フィーダー、計測装置、各種信号線などJT-60SA本体機器の安定な運転を実現する極めて重要な機器の設置により、JT-60SAプロジェクトが運転開始に向けて大きく前進したことを感謝して、クリハラントJT-60SAチーム殿に感謝状を贈呈しました(図5)。

クリハラントJT-60SAチーム殿への感謝状贈呈の様子
図5 クリハラントJT-60SAチーム殿への感謝状贈呈の様子

JT-60SA本体の完成(令和2年3月)

2007年6月にJT-60SA計画を開始して以降、2008年10月に最初の機器(ポロイダルコイル超伝導撚線)の製作を開始し、2013年1月に本体室での機器(クライオスタットの底部)組立を開始するなど、機器製作と組立を着実に進めてきました。その過程ではいくつかの技術的課題も発生しましたが、その都度EUと協力して課題を解決してきました。その成果として、この度JT-60SA本体の組立が完了しました。

組立の最終段階では、超伝導コイルをJT-60SA周辺の高温(室温ですら高温)環境から隔離する断熱機構の内、残りの部分であった上部サーマルシールド(TCTS)(図1)が次々と設置されました。そして、2020年3月末にクライオスタット上蓋部(図2)が設置され、JT-60SA本体の組立が完了しました(図3)。

今後、JT-60SA装置の真空排気や超伝導コイル冷却など、順を追って各機器の健全性を確認しつつ動作させて、2020年秋ごろ最初のプラズマを着火する、統合試験運転を開始する予定です。JT-60が運転を停止した2008年以来12年ぶりに日本国内のトカマク装置が始動します。

図1上部サーマルシールド設置の様子
図1 上部サーマルシールド設置の様子

図2クライオスタット上蓋部設置の様子
図2 クライオスタット上蓋部設置の様子

図3完成したJT-60SA本体
図3 完成したJT-60SA本体

クライオスタット胴部の設置(令和元年12月)

超伝導コイルの冷却システムの負荷を抑え、経済的な運転を行うため、超伝導コイルを回りの高温(室温ですら高温)環境から隔離する機構が必要になります。そのために設けるのが、サーマルシールドと真空断熱を利用するクライオスタットです。クライオスタットは、底部、胴部及び上蓋部で構成されています。この内、胴部の設置を9月から開始し、この12月に完了しました。

クライオスタット胴部の設置開始(令和元年9月)
クライオスタット胴部の設置開始(令和元年9月)

進むクライオスタット胴部の設置(令和元年10月)
進むクライオスタット胴部の設置(令和元年10月)

吊り込み中のクライオスタット胴部上部(令和元年12月)
吊り込み中のクライオスタット胴部上部(令和元年12月)

設置完了間近のクライオスタット胴部上部(令和元年12月)
設置完了間近のクライオスタット胴部上部 (令和元年12月)

バルブボックスとコイルターミナルボックスの据付開始(令和元年11月)

極低温の機器を冷却する冷媒ヘリウムは4.5K換算9kWの巨大な冷凍機で製造しますが、適切な流量管理を行わないと機器の需要に対応できません。JT-60SAには、そのような流量管理を行うバルブが多数あります。このようなバルブを収めたものがバルブボックスです。また、極低温の超伝導コイルと常温の電源との間を接続する役目を担うのがコイルターミナルボックスです。これらの据え付けが開始されました。

据え付け中のバルブボックス11とコイルターミナルボックス5(令和元年11月)
据え付け中のバルブボックス11とコイルターミナルボックス5(令和元年11月)

据え付け中のバルブボックス11とコイルターミナルボックス4,5(令和元年11月)
据え付け中のバルブボックス11とコイルターミナルボックス4,5(令和元年11月)

据え付け中のバルブボックス10,11とコイルターミナルボックス4,5(令和元年11月)
据え付け中のバルブボックス10,11とコイルターミナルボックス4,5(令和元年11月)

中心ソレノイド(CS)の設置(令和元年5月)

トカマクのポロイダル磁場コイルのうち一つは、トーラスの中心付近の”ドーナツの穴”に縦方向に設置され、中心ソレノイド(CS)と呼ばれます(図1)。CSの役割はトカマクのプラズマ電流を作るとともに、トカマクのポロイダル磁場を作ることです。トカマクのトロイダル磁場コイル(TFC)はトロイダル方向の磁場しか作りません。そのため、プラズマの閉じ込めを劣化させる”荷電分離現象”を回避するために、磁場のねじれを作る必要があります。その磁場が、プラズマ電流によるポロイダル磁場です。プラズマ電流は、トランスと同じ原理によりCSによる誘導磁場で発生します。プラズマ電流は、加熱にも貢献し、CSによるプラズマ加熱をオーミック加熱(OH)と呼びます。このようにCSはトカマクプラズマにとって重要な意味を持ちます。

JT-60SAは、コンパクトな装置と大体積プラズマを両立させるため低アスペクト比の装置となっています。結果として、”ドーナツの穴”に相当する空間は大変小さくなっており、この狭い空間で強磁場を生成するために、核融合の分野では比較的先進的である超伝導素材であるニオブ錫(Nb3Sn)を使用しています。 JT-60SAのCSはITERに次ぐ世界最大級のコイルであり、直径2m、高さ6.4m、重量100tonで、Nb3Sn超伝導導体に20kAを通電することにより8.9Tの磁場を発生します。このCSは4つのモジュール(図2)として製作しました。

その後、工場から輸送され、JT-60SA本体横の組立室内で再度立て起こされました(図3)。そして吊り上げられ(図4)、トカマク中心の所定の位置に設置されました(図5)。

 

図1.JT-60SAの超伝導コイルの図
図1. JT-60SAの超伝導コイル

図2.CSコイルの全体像.4つのモジュールからなる.
図2. CSコイルの全体像。4つのモジュールからなる。

図3.組立室内で立て起こされたCSの写真
図3. 組立室内で立て起こされたCS

図4.輸送治具より吊り出され移動中のCSの写真
図4. 輸送治具より吊り出され移動中のCS

図5.中心ソレノイド(CS)設置完了直後の写真
図5. 設置完了直後

水平ポート、斜めポート、上部ポートサーマルシールドの設置(平成30年12月)

超伝導コイルは運転時、その極低温状態を維持するためには、周りからの熱侵入を抑える必要があります。JT-60SAでは、サーマルシールドと呼ばれる熱遮へい板を設置し、超伝導コイルへの熱侵入を抑えます。全体像は図1のようになります。超伝導コイルの設置前に真空容器サーマルシールドを設置しました。現在、超伝導コイルの設置を完了したところから、随時残りのサーマルシールドを設置しています(図2、3、4)。サーマルシールドは機器間の非常に狭い空間に設置しますが、運転に関連する変位や地震による変位に対応できる空間の確保が必要であり、精度の良い取付けが求められます。図4に、斜めポートサーマルシールドの位置合わせの工夫を示します。サーマルシールドに施した複数の基準点をレーザートラッカで測定しながら、取付け位置を慎重に定めるとともに、現場合わせして製作したカプラーを用いて、斜めポートサーマルシールドに対して要求される取付け精度(±10mm)を実現しました。これまでに、全ての斜め及び水平ポートのサーマルシールドの設置を完了しました。

図1. JT-60SAサーマルシールドの全体像
図1. JT-60SAサーマルシールドの全体像

図2. 水平ポートサーマルシールド
図2. 水平ポートサーマルシールド

図3. 上部ポート及び斜め上ポートサーマルシールド
図3. 上部ポート及び斜め上ポートサーマルシールド

図4. 斜めポートサーマルシールドの位置合わせ
図4. 斜めポートサーマルシールドの位置合わせ

ダイバータカセット用レーザー溶接ツール

 ダイバータカセットの冷却水配管接合のために開発されたレーザー溶接ツールについてご説明します。JT-60SAのダイバータは、将来の改造及び遠隔操作(リモートハンドリング)による保守を想定し、全36体の取外し可能なカセット状の構造となっています(図1)。JT-60SAのダイバータカセットの場合、冷却水配管の取り合いとして「往き配管」と「戻り配管」のそれぞれに2ヵ所ずつ、合計4ヵ所の接続部(図2右側)があります。ダイバータカセットの配管は、最大15MW/m2もの定常熱負荷を除熱するために水圧2 MPa、流量750 L/minの冷却水を流すため、外径59.8mm、肉厚2.8mmのステンレス配管を使用します。ダイバータカセット交換時には、配管接続部上部のカバーアーマータイルを外し、狭い空間で1カセットあたり4ヵ所を溶接・切断する必要があります。このような作業環境を考慮し、リモートハンドリングで使用可能な専用のレーザー溶接ツールを開発しました(図3)。溶接接続するには、配管の開先き(溶接される取り合い部分のこと)を高精度で合わせる必要がありますが、接続部の周りが混み合っている狭い空間のため、制限された空間でも開先きを矯正できる機構も合わせて開発しています。真空容器側とダイバータカセット側の配管軸ずれは最大で3mm程度ですが、開発した開先合わせ機構により、軸ずれを0.5mm以下に矯正可能になりました。残りの0.5mmのずれに対しては、配管の内部から専用の計測ツールで軸ずれ量と配管同士のギャップを正確に計測し、ずれの状況に応じた溶接ツールの動きで対応できる仕組みを開発しました。また、溶接で散らばる霧状の金属がツール内のレンズやミラーを汚さないようにするガス流や溶接中の溶接箇所の酸化を防止するガス流を設ける工夫を施しています。

 

図1. JT-60SAのダイバータカセットのフレーム。アーマータイルは未装着の状態。
図1. JT-60SAのダイバータカセットのフレーム。アーマータイルは未装着の状態。

図2. JT-60SAのダイバータカセット設置時の模式図。右側で溶接・切断を行う。
図2. JT-60SAのダイバータカセット設置時の模式図。右側で溶接・切断を行う。

図3. 開発したレーザー溶接ツール
図3. 開発したレーザー溶接ツール

平衡磁場(EF)1, 2, 3コイルの設置(平成30年8月)

 全てのトロイダル磁場(TF)コイルの設置後、平衡磁場(EF)コイル設置の準備を進めて来ました。その一つがTFコイル設置に使用した旋回クレーンの取り外しです。旋回クレーンは、トーラス上部に覆いかぶさるように設置されていたため、上方からのアクセスはよくありませんでした。旋回クレーンがなくなり、図1のように18個のトロイダルコイルを真上から見通し良く一望できます。この状態で赤道部より上側のEFコイルであるEF1、EF2、EF3コイル(図2)を設置しました。まず始めにEF3コイル(直径4.4m)を設置し(図3)、次にEF1コイルを設置しました。EF1コイルの直径は12mであり、現時点で世界最大の超伝導コイルです。図4はEF1コイルの搬入の様子です。最後にEF2コイル(直径9.6m)を設置し、これら三つのコイルの設置を完了しました(図5)。設置誤差は、プラズマ性能や不安定性に影響しますが、3.5mm未満を達成し、精度良く設置できました。今後下部に仮置していたEF4、EF5、EF6コイルを所定の位置に設置する予定です。

 

図1. EFコイル設置前のJT-60SAを上方より撮影。18体のTFコイルが見える。
図1. EFコイル設置前のJT-60SAを上方より撮影。18体のTFコイルが見える。

図2. JT-60SAのEFコイル
図2. JT-60SAのEFコイル

図3. EF3コイルの吊り込みの様子
図3. EF3コイルの吊り込みの様子
図4. EF1コイルの搬入の様子
図4. EF1コイルの搬入の様子

図5. 精度良く設置が完了したEF1, EF2, EF3コイル
図5. 精度良く設置が完了したEF1, EF2, EF3コイル

バルブボックス(平成30年8月)

今回は、バルブボックス(VB)についてご説明します。JT-60SAでは、極低温の冷媒ヘリウムを複数の用途で使用します。4.4Kの冷媒ヘリウムはトロイダル磁場コイル(TFC)、平衡磁場コイル(EFC)及び中心ソレノイド(CS)の超伝導導体の冷却に、3.6Kの冷媒ヘリウムはダイバータ排気のためのクライオポンプで使用します。また、比較的高温である50Kの冷媒ヘリウムは、高温超伝導電流リード(超伝導体と常温導体の接続に使われる機器)の高温端の冷却に、80Kの冷媒ヘリウムは極低温機器への熱侵入を抑制するサーマルシールドに用います。これらの冷媒ヘリウムは4.5K換算9kWの巨大な冷凍機で製造しますが、適切な流量管理を行わないと上記の需要に対応できません。JT-60SAには、そのような流量管理を行うバルブが多数あります。このようなバルブを収めたものがVBです(図1, 2)。VBは内部に設置された温度・圧力・流量の計測素子及びバルブによって、冷媒ヘリウムの状態を監視し、機器への分配を調整します。冷媒ヘリウムの温度は、配管に設置された抵抗素子の抵抗を測ることによって計測します。JT-60SAでは温度域や要求精度によって、白金、炭素、ジルコニウム酸窒化物といった異なる材質の抵抗素子を用います。流量は、配管内に設置されたオリフィス板(中央に小さな穴の空いた板)の前後の圧力差を測定することによって算出します。流量の調整に用いるバルブには、室温部から冷媒ヘリウムへの熱侵入を低減するため、室温部から極低温部までの弁軸が長い(600∼800mm)特殊なものを使用しています(図3)。

図1. 配置されたVBとその用途の画像
図1.配置されたVBとその用途

図2. 那珂核融合研究所に納品されたVB01, VB02, VB05の画像
図2.那珂核融合研究所に納品されたVB01, VB02, VB05

図3. 低温バルブの模式図の画像
図3.低温バルブの模式図

遂にトーラス形状となる(平成30年4月)

4月下旬にTFコイル全18体の据付けの完了という大きな節目を迎えました。

図1は18体目を設置する直前で、17体のTFコイルの設置が完了している状態です。最終部では真空容器及びVVTSも同時に据え付ける必要があり、図2のように、TFコイル、VVTS及び真空容器を一体として吊り込みました。この最後の吊り込みは4月20日に実施し、その様子は報道関係者に公開され、五つのメディアで報道されました。

図3は吊り込みが完了した状態です。遂にトーラス形状が出来上がりました。

図1. 17体目のTFコイルの設置完了の画像
図1.17体目のTFコイルの設置完了

図2. 18体目のTFコイル、VVTS及び真空容器を一体として、20度分の空間から挿入する様子の画像
図2.18体目のTFコイル、VVTS及び真空容器を一体として、20度分の空間から挿入する様子

図3. 遂にトーラス形状となる(平成30年4月)の画像
図3.遂にトーラス形状となる(平成30年4月)

2体のTFコイルの空輸(平成30年2月)

超伝導トロイダル磁場(TF)コイルは、平成28年からこれまで順次船舶により日本に輸送され、現在14体までの据付けが完了しています(図4)。冷凍機を用いた18体目のTFコイルの冷却・通電試験が、1月26日にフランスCEAサクレー研究所にて完了しました。組立作業の促進の一環として、最後の2体が、空輸されることになりました。TFコイルは高さ7.5m幅4.6m、重量20トンの巨大な機器で、輸送のための台枠を含めると高さ9.3m幅5.6m、重量34トンにもなるため、通常の輸送機には積み込めません。そこで、世界に56機しかない世界最大級の輸送機アントノフ(An-124型機、図2)をチャーターすることとしました。さらに、その大きさ故に、日本における空港から那珂研までの輸送経路を考慮し、到着空港を中部国際空港に設定しました。

当輸送機An-124は、2月15日にフランス・ヴァトリー国際空港にてTFコイルを図3のように積載して出発し、途中、トルクメニスタンと中国にて燃料補給に立ち寄った後、中部国際空港に無事2月17日の早朝に到着しました。

中部国際空港での着陸、荷降ろし(図4)、船積み(図5)の模様は、ほぼ一日に渡り、ニコニコ生放送によりネット生配信されました。多くの視聴があり、最終的な視聴は、5万を超えました。

その後、2体のTFコイルは、海路にて2月19日に日立港に到着し、2月21日に那珂研に到着しました。据付け前の調整後、順次据付けを進めて行きます。

図1. JT-60SAトカマク本体へ据付けを完了した14体のトロイダル磁場コイルの画像
図1.JT-60SAトカマク本体へ据付けを完了した14体のトロイダル磁場コイル

図2. 中部国際空港に到着した輸送機アントノフAn-124型機の画像
図2.中部国際空港に到着した輸送機アントノフAn-124型機

図3. 機内に格納されたTFコイルのスケルトン図。格納時はシートに梱包されている。の画像
図3.機内に格納されたTFコイルのスケルトン図。格納時はシートに梱包されている。

図4. 輸送機An-124からの荷降ろしの様子の画像
図4.輸送機An-124からの荷降ろしの様子

図5. 整流器棟室内に敷設されたポロイダル磁場コイル用アルミ導体の画像
図5.整流器棟室内に敷設されたポロイダル磁場コイル用アルミ導体

超伝導コイルのための大電流フィーダー(平成30年2月)

JT-60SAでは、トロイダル超伝導磁場コイルに25.7kA(連続通電)、ポロイダル超伝導磁場コイルに20kA(220秒.通電、30分周期)もの直流大電流を供給します。コイル巻線には発熱のない超伝導線を用いていますが、超伝導コイルと電源の接続には、取り扱い易さとコスト抑制の観点から通常のアルミ導体を使用しています。導体断面は、放熱・発熱や電圧降下の低減も考慮して長方形を採用していますが、大電流を扱うため、トロイダル磁場コイル用が7cm×94cm、ポロイダル磁場コイル用が7cm×33cmと非常に大きな断面としています。このような大電流を扱う大きな剛体の接続機構には、発熱による熱伸び等による位置ずれを考慮した工夫が必要です。そこで接続部には、薄板を何層にも溶接して柔軟性を高めたフレキシブル導体を製作しました。このフレキシブル導体は、アルミ導体と電源機器(図1)及びアルミ導体同士(図2)を接続する箇所で用いられています。

トロイダル磁場コイル電源は、トカマク本体室の隣接建屋に設置していますが、ポロイダル磁場コイル電源は離れた建屋に設置しているため、コイル10セット分にあたる合計20本の導体を建屋間に渡って新たに敷設しました。(図3)

平成26年8月から開始したこの敷設工事は、本年2月にすべて完了し、電源から本体室までの全長約5300m(総重量330t)を接続しました。このように那珂核融合研究所では、電源本体の製作のみでなく、周辺設備の整備も予定どおり進行しており、2020年のファーストプラズマに向けて着々と準備を進めています。

図1. アルミ導体とトロイダル磁場コイル用電源の接続の画像
図1.アルミ導体とトロイダル磁場コイル用電源の接続

図2. 整流器棟室内に敷設されたポロイダル磁場コイル用アルミ導体の画像
図2.整流器棟室内に敷設されたポロイダル磁場コイル用アルミ導体

図3. 整流器棟とトカマク本体室を繋ぐ屋外導体設備の画像
図3.整流器棟とトカマク本体室を繋ぐ屋外導体設備

12体目のトロイダル磁場コイルの設置(平成29年9月)

トロイダル磁場コイルは、昨年の12月から組み込み作業を開始し、現在写真左のように12体を設置しました。

トロイダル磁場コイルが作る磁場はトカマク装置において最大の磁場成分を持つため、プラズマの性能に影響を与える誤差磁場を十分に抑えるように精度良く設置する必要があります。そこで、写真右のようにレーザートラッカーを使用して設置を行っています。その結果、±1mm以下の高い位置精度(トロイダル磁場コイルの高さは約7m)での設置ができています。

12体のトロイダル磁場コイルを設置の画像
12体のトロイダル磁場コイルを設置

レーザートラッカーを用いた位置決めの様子の画像
レーザートラッカーを用いた位置決めの様子

最終段階を迎えたクライオスタット胴部の製作(平成29年8月)

超伝導コイルの冷却システムの負荷を抑え、経済的な運転を行うため、超伝導コイルを回りの高温(室温ですら高温)環境から隔離する機構が必要になります。そのために設けるのが、サーマルシールドと真空断熱を利用するクライオスタットです。クライオスタットはJT-60SAの全ての超伝導コイルを覆うため、加熱機器以外の全体を覆う非常に大きな真空機器となります。

クライオスタットは、底部、胴部及び上蓋部で構成されています。この内、底部と胴部の製作は欧州・スペインのCIEMAT研究所が担当しています。底部は、JT-60SAの本体室に最初の構造物として2013年3月に据え付けられました。2017年8月、クライオスタット胴部が製作の最終段階を迎え、スペインの工場で製作精度の確認を実施しました。

8分割された胴部下部及び4分割された上部をそれぞれ組み立てた後、上部を下部にのせ、全体を仮組みし、写真上のように高さ約11m、直径約14mの巨大な全容が現れました。そして、レーザートラッカー計測器などを用いて、製作精度が許容範囲(例えば直径フランジ部にて5mm以下)に入っているか計測しました(写真下参照)。

仮組みされたクライオスタット胴部の全容の画像
仮組みされたクライオスタット胴部の全容

クライオスタット胴部の寸法測定の様子の画像
クライオスタット胴部の寸法測定の様子

欧州との密接な協力体制のもと、据付調整作業が順調に進展(平成29年3-4月)

欧州調達の超伝導コイル用電源機器の据付調整と日本側の既存設備の整備を順調に進めています。JT-60SAでは、既存のフライホイール付き電動発電機(H-MG)から、欧州調達の直流電源(サイリスタ整流器)を介して、中心ソレノイド及び平衡磁場コイルに給電します。2016年6月に搬入されたフランス調達の4ユニットの平衡磁場コイル用直流電源は据付作業が完了し、5月から7月にかけて実施予定である通電試験の準備を進めています。これらの作業は、F4E及びCEAの監督のもとで、製作元であるスペインJema社の指導員と国内の下請け業者が実施しています。通電試験では、既存設備の常伝導模擬負荷コイルを用いて直流電源の定格である20kA通電での健全性を確認します。日本側の整備では、2015年10月より開始したH-MGのオーバーホール(写真左)と周辺設備の点検整備を3月に終了し、動特性回転試験及び励磁試験に成功しました。4月には欧州側スタッフとの協力のもと、通電試験の前段階として、H-MGから直流電源への受電試験を実施しています。

また、残りの電源機器の調達も並行して進めており、3月にはイタリアENEA調達分の中心ソレノイド用及び高速位置制御コイル用の直流電源と変圧器が、それぞれ2ユニット到着しました。同じくイタリアENEAが調達した中心ソレノイド用プラズマ着火用高電圧発生回路(スイッチングネットワークユニット(SNU-CS)と呼ばれる)の受入試験を3月に完遂しました(写真右)。JT-60SAの中心ソレノイドでは、直流電源と直列にSNU-CSが接続されます。20kAの初期励磁の後にSNU-CSが動作し、内部の抵抗器に電流が流れると、抵抗での電圧降下の分だけ最大5kVの逆起電力が中心ソレノイドに誘導され、プラズマ着火に必要な周回電圧が発生します。受入試験では、F4E及び製作元のイタリアOCEM社と量研機構の職員により、仮設の直流電源と模擬負荷コイルを用いて5kV誘起における健全性を確認できました。

今後は欧州機器と日本側設備を組み合わせた通電試験を本格的に実施していきます。

ホイール付き電動発電機(H-MG)の画像
ホイール付き電動発電機(H-MG)の
オーバーホール(固定子の引き抜き作業)

受入試験を完遂した中心ソレノイド用の画像
受入試験を完遂した中心ソレノイド用
スイッチングネットワークユニット(SNU-CS)

JT-60SAのフランス及びイタリアによる超伝導トロイダル磁場コイル製作と
日本による同コイル組立開始を披露する式典を開催(平成29年1月12日)

平成28年の12月より、フランス及びイタリアが製作を担当している超伝導トロイダル磁場コイルのJT-60SAへの据付作業を開始しました。加えて、超伝導コイルの冷却を担う機器である核融合用としては世界最大級のヘリウム冷凍機システムの動作試験運転が成功裏に終了し、所有権が製作と組立を担当したフランスの原子力・代替エネルギー庁(CEA)から量子科学技術研究開発機構に移りました。

これらの重要なマイルストーンへの到達を披露するために、式典及び見学会を開催しました。水落文部科学副大臣並びにトーマス欧州委員会副総局長をはじめとし、駐日欧州連合代表部などの日欧関係者約147名にご参加頂くとともに、多くのご来賓の方々からお祝いの言葉とご期待を賜り、式典を盛況にとり行うことができました。なお、この式典及び見学会の様子は各報道機関にも興味深く取材していただき、NHKをはじめとする5つの報道機関で取り上げられました。

式典参加者の記念撮影 (式典会場にて)の画像
式典参加者の記念撮影(式典会場にて)

トロイダル磁場コイルの組立開始(平成28年12月)

340度分のVVTSの組立完了を受けて、トーラス型閉じ込め装置の最重要コンポーネントであるトロイダル磁場コイル(TFC)の組立を開始しました。また、専用の起立架台を用いてTFCを起立させ、自重変形させた後に計測を行いました。変形はプラズマの性能を劣化させる誤差磁場の要因となるため、組立では、レーザートラッカーによる計測とジャッキによる位置合わせによって変形を修正しながら設置を進めます。開口部からトーラス方向に180°回し込み所定の位置に移動を完了しました。

起立したTFC-10の画像
起立したTFC-10

組立クレーンを用いた一体目TFCの所定位置の画像
組立クレーンを用いた一体目TFCの所定位置
(開口部の反対側)への移動の完了

真空容器のサーマルシールドの340度分の設置完了(平成28年9月)

超伝導コイルは運転時、極低温(4K)に冷却されますが、その極低温状態を維持するためには、周りからの熱侵入を抑える必要があります。JT-60SAでは、サーマルシールドと呼ばれる板厚3mmのステンレス二重構造内に配管を張り巡らした熱遮へい板を設置し、運転時は配管に80Kのヘリウムガスを循環させ冷却することで、超伝導コイルへの熱侵入を抑えます。真空容器サーマルシールド(VVTS)は、主に真空容器(運転時は常温)からの熱輻射を遮断します。平成27年1月に開始したVVTSの組立がトロイダルコイルを回し込むために必要な開口部の20度セクター分を残し、設置が完了しました。なお、最終セクター用のVVTSについても仮設置して両隣のセクターとの接続状態を調査し、問題のないことを確認しました。

組立てが完了したVVTSの画像
組立てが完了したVVTS

平衡磁場コイルの完成(平成28年8月)

JT-60SAでは18機の超伝導トロイダル磁場コイルを欧州が製作し、6機の超伝導平衡磁場コイル(EFコイル)と1機の超伝導センターソレノイドを日本が製作します。EFコイルのうち、プラズマの下側に配置される3機(EF4, EF5, EF6)は既に完成し、JT-60本体室にて340度分の接続が完了している真空容器の下側に仮設置しています。今回、残りの上側に設置する3機の平衡磁場コイル(EF1, EF2, EF3)が8月に完成しました。

EF1(外径12.0m、重量27トン)、EF2(外径9.6m、重量27トン)、EF3(外径4.4m、重量21トン)は、那珂研の巻線棟で平成26年7月から製作してきました。特に、EF1はJT-60SAでは最大のコイルになります。これらの大型の超伝導コイルは、製作精度±0.2mm以下と非常に高精度に製作できました。これらのコイルは、TFコイルの組込みが完了し、真空容器の残り20度分の最終セクタが接続された後、組立室へ搬入し、JT-60SAに組み立てる予定です。

製作が完了し組立を待つ上側EFコイル3機の画像
製作が完了し組立を待つ上側EFコイル3機

欧州製トロイダル磁場コイルの那珂研搬入(平成28年7月)

那珂核融合研究所では、JT-60SAの建設が進展しています。今回、欧州調達の超伝導トロイダル磁場コイル(TFコイル)を那珂研に搬入しました。

JT-60SAは、18機のTFコイルを有しており、連続通電を可能とする超伝導導体NbTiを用いて製作しています。これらの製作は欧州が担当(フランスとイタリアで半数ずつ)し、組立は日本が担当しています。今回、欧州調達のTFコイルのうち、フランスが製作を担当している1号機と2号機を、海上輸送を経て到着した日立港から那珂研へそれぞれ7月20日と8月25日に輸送・搬入しました。TFコイルは欧州を発つ時点で、女性名が命名されることになっており、1号機はANNIE(アニー)、2号機はBRIGITTE(ブリジット)となっています。

1号機が搬入された直後の7月26日には、「フランスが調達するJT-60SA機器の搬入、据付、調整運転の着実な進捗を祝う会」を那珂研で開催し、日仏の関係者一同にて、TFコイルの搬入開始を祝いました。

那珂研に搬入された仏調達TFコイル1,2号機の画像
那珂研に搬入された仏調達TFコイル1,2号機

仏調達機器の進捗を祝う会にて,TFコイル1号機を前に記念撮影の画像
仏調達機器の進捗を祝う会にて,TFコイル1号機を前に記念撮影

欧州製超伝導コイル用直流電源の到着(平成28年6月)

那珂核融合研究所では、欧州調達機器の搬入が進んでいます。今年の6月末には、フランスが調達した超伝導コイル用直流電源が那珂核融合研究所に搬入されました。

今回の搬入された直流電源は、トロイダル磁場コイルと、ポロイダル磁場コイルのうち4つの平衡磁場コイルに接続する合計5ユニットのサイリスタ式直流電源になります。トロイダル磁場コイル用電源は、最大電圧/電流は80V/25.7kAの単極性出力で連続通電が可能です。平衡磁場コイル用電源は、最大電圧/電流は1kV/20kAの両極性出力で、30分ごとに220秒の通電が可能です。これらの電源は、クエンチ保護回路を介して、それぞれの超伝導コイルに接続されます。また、平衡磁場コイルはさらに、プラズマ着火時に必要な高電圧を発生させるスイッチングネットワークユニットまたは、ブースター電源が接続されますこれらの搬入を受け、現地据付け作業および受入れに向けた試験が今後実施されます。

那珂核融合研究所に到着した欧州製超伝導コイル用直流電源の画像
那珂核融合研究所に到着した欧州製超伝導コイル用直流電源

真空容器サーマルシールド組立開始(平成28年2月)

平成26年5月に開始した真空容器の接続が340度分完了したこと、および真空容器サーマルシールドの組立を開始したことなどのJT-60SA建設の進捗を受け、2月3日に報道機関を対象とした施設見学会を那珂核融合研究所にて開催しました。

今回組立を開始した真空容器サーマルシールドは、JT-60SAの超伝導コイル(中心ソレノイド1個、平衡磁場コイル6個とトロイダル磁場コイル18個)を取り囲むように設置するサーマルシールドのうち、真空容器側に配置するものです。超伝導コイルは運転時、極低温(4K)に冷却されますが、その極低温状態を維持するためには、周りからの熱侵入を抑える必要があります。JT-60SAでは、サーマルシールドと呼ばれる板厚3mmのステンレス二重構造内に配管を張り巡らした熱遮へい板を設置し、運転時は配管に80Kのヘリウムガスを循環させ冷却することで、超伝導コイルへの熱侵入を抑えます。真空容器サーマルシールドは、主に真空容器(運転時は常温)からの熱輻射を遮断します。

また今回、真空容器内部の拘束治具を撤去したことにより、真空容器の内部が公開できました。この真空容器内部という巨大な空間では、各報道機関の興味深く撮影される様子が印象的でした。この見学会の様子は、6つの報道機関で取り上げられました。

組立を開始した真空容器サーマルシールドの画像
組立を開始した真空容器サーマルシールド

真空容器内部を撮影する報道機関関係者の画像
真空容器内部を撮影する報道機関関係者

JT-60SA真空容器最終セクターの仮合わせ(平成27年12月)

平成26年5月から開始したJT-60SA真空容器の340度組立作業が平成27年8月に完了しています。今回、真空容器サーマルシールド(VVTS)およびトロイダル磁場コイル(TFC)を廻し込むために確保してある真空容器の最終20度セクターを仮合わせし、位置計測を行いました。

JT-60SAの組立では、18個あるTFCのうち17個分を設置したあと、18個目のTFC、VVTSそして真空容器20度セクターを三位一体とした最終セクターとして挿入し接続します。最終セクターの両端は、幅70-110mmのスプライスプレートを介して、真空容器340度分と溶接接続します。また、今回の仮合わせで得られた計測データをスプライスプレートの形状に反映させカスタマイズします。今回は仮合わせですが、真空容器360度分のトーラス形状を垣間見ることができました。今後、組立が進むと、真空容器のみでこのような姿を見ることはできないため貴重な姿と言えます。

真空容器20度セクターを仮合わせし、360度になった真空容器の画像
真空容器20度セクターを仮合わせし、360度になった真空容器

本体組立用旋回クレーンの設置と真空容器拘束治具の解体(平成27年10月)

昨年5月から開始したJT-60SA真空容器の340度組立作業は8月に完了しています。10月には、真空容器サーマルシールド(VVTS)およびトロイダル磁場コイル(TFC)の組立に使用する旋回クレーンを組立架台上に設置しました。VVTS及びTFCは、真空容器の20度開口部から廻し込みながら組み立てます。旋回クレーンの定格荷重は30トンであり、荷を吊り上げた状態で360度旋回し、また、ガーター上を水平に移動できます。今後、この旋回クレーンを使用して、VVTSおよびTFC組立を効率良く進めて行きます。

また、真空容器の340度接続完了を受け、真空容器の内側に固定してあった拘束治具の解体を進めています。この拘束治具は、真空容器セクター起立時の変形やセクター間溶接時の変形を抑えるために真空容器セクターを内側から固定するものでした。拘束治具の解体では、真空容器の変形量を慎重に確認しながら進め、真空容器340度の両端のみを残し完了しました。拘束治具解体後の真空容器内には広々とした空間が広がり、JT-60SAプラズマの規模を彷彿とさせます。

本体組立で使用する旋回クレーンの設置が完了の画像
本体組立で使用する旋回クレーンの設置が完了

真空容器拘束治具の解体後の様子の画像
真空容器拘束治具の解体後の様子

TFC用高温超伝導電流リードの完納(平成27年10月)

JT-60SA超伝導コイルへの給電は、室温側の電源から行うため、室温と極低温(4.5K)の取合いが必要になります。JT-60SAでは、最大約26kAのコイル電流を、50Kに冷却された高温超伝導材Bi-2223/AgAuを用いた高温超伝導電流リードを介して給電します。この高温超伝導電流リードは欧州調達となっており、ドイツのカールスルーエ工科大学(KIT)が製作を担当しています。TFC用6本のうち2本が今年3月に那珂研に輸送されており、今回10月に残りの4本が輸送され、TFC用高温超伝導電流リード全6本が完納されました。今後これらをTFC用コイル端子箱の製作受注者に支給します。残りのポロイダル磁場コイル用の20本については、来年度以降納入される予定です。

TFC用高温超伝導電流リードが完納の画像
TFC用高温超伝導電流リードが完納

JT-60SA真空容器340度の完成(平成27年8月)

昨年5月から開始したJT-60SAの真空容器の340度組立作業が完了しました。JT-60SAの真空容器は、薄肉(18mm)の低コバルトステンレス(SUS-316L)を用いた二重壁構造しており、10体に分割したセクター(20度セクター×1体、30度セクター×2体、40度セクター×7体)をクライオスタットベース上で溶接接続していました。今回、トロイダル磁場コイル等を廻し込むための20度分を除いた340度分の溶接接続が完了しました。

これらのセクターは、直接溶接またはスプライスプレートを介した溶接接続により、1体の120度ブロック(40度セクター×3体)と2体の110度ブロック(40度セクター×2体+30度セクター)としてまず組立て、その後これらの3体のブロック間をスプライスプレートによって接続しました。スプライスプレートは幅約70〜110mmであり、セクターの製作・設置状況に応じて、個別にカスタマイズすることで、真空容器の製作誤差と溶接による熱変形を吸収し、トロイダル方向にできるだけ真円形状を確保するようにしています。今回この接続作業が完了し、真空容器340度が完全に接続されました。今後、真空容器サーマルシールドの組立を予定しています。

接続溶接前のスプライスプレートを取り付けた真空容器の画像
接続溶接前のスプライスプレートを取り付けた真空容器

340度の溶接接続が終了したJT-60SA真空容器の画像
340度の溶接接続が終了したJT-60SA真空容器

極低温システムHeバッファータンク据付完了(平成27年5月)

JT-60SAでは、閉じ込め磁場を長時間発生させるために超伝導コイルを採用しており、このためコイル冷却用の極低温システムもあわせて準備しています。この極低温システムは欧州が調達するものであり、今年4月にはフランスから世界最大級のヘリウム冷凍機が搬入され据え付けられました。さらに5月には、Heバッファータンク(重さ70トン、直径4m、長さ22m、合計6本)を輸送し据付けを完了しました。このHeバッファータンクは、海上輸送の後、日立港で荷揚げされ、那珂核融合研究所まで一般道を深夜に交通規制しながら搬送したものです。据付けでは550トンクレーンで吊りおろしました。大がかりな搬送・据付作業ですが、約2週間で完了しました。

据付けの完了したHeバッファータンクと550トンクレーンの画像
据付けの完了したHeバッファータンクと550トンクレーン

JT-60SAの欧州による主要機器搬入及び現地作業開始並びに真空容器の初期組立完了を披露する式典の開催(平成27年4月)

今年4月20日に、藤井文部科学副大臣並びに欧州連合駐日大使をはじめとする多くの日欧関係者約200名に参加頂き、JT-60SAの進捗状況を披露する式典及び見学会を開催しました。

JT-60SA計画では、欧州が機器を製作して那珂研に搬入するだけでなく、その据付作業も担います。このほど、イタリアから最初の超伝導コイル用電源、フランスから核融合用としては世界最大級のヘリウム冷凍機システムが那珂研に搬入され、その据付作業が開始されました。加えてドイツから超伝導コイルに電流を供給する高温超伝導電流リードも搬入されました。これにより、平成25年1月のスペインからのクライオスタットベースの搬入と合わせ、欧州の全ての参加国からの機器搬入が始まりました。一方、クライオスタットベース上では、日本による組立作業として、このほど初期組立段階である340度までの真空容器の設置を終了しました。今回の式典では、これらの進捗を披露するとともに、多くのご来賓の方々からのお祝いの言葉とご期待を賜り、盛況のうちに終了することができました。

式典に参加頂いた来賓の方々(式典会場にて)の画像
式典に参加頂いた来賓の方々(式典会場にて)

JT-60SA真空容器340度分のクライオスタットベース上への設置完了(平成27年1月)

平成26年5月から開始したJT-60SAの真空容器組立作業が、JT-60本体室で順調に進展しています。今年1月にはクライオスタットベース上に9体の真空容器セクター(340度分)の設置が完了しました。残りの20度分のスペースは、極低温冷却される超伝導コイルと常温で運転する真空容器の間を熱を遮る真空容器サーマルシールドおよび、欧州調達分のトロイダル磁場コイル18個を廻し込むために確保してあります。今後、設置完了したこれらの真空容器セクター間を引き続き溶接にて接続します。今年の秋には、真空容器サーマルシールドの廻し込み作業が開始される予定です。

クライオスタットベース上へ設置された9体の真空容器セクター(340度分)の画像
クライオスタットベース上へ設置された9体の真空容器セクター(340度分)

JT-60SA真空容器組立の進捗とクエンチ保護回路の搬入(平成26年11月)

真空容器セクター7体目の組立開始今年5月から開始したJT-60SAの真空容器組立作業が、JT-60本体室で順調に進展しています。すでに完成した10体の真空容器セクターを順次、クライオスタットベース上に設置し、セクター同士の溶接を行います。今年11月には、7体目となる真空容器セクターをクライオスタットベース上に設置し、真空容器280度が揃いました。この組立作業は340度まで行い、その後、残りの20度分のスペースからトロイダル磁場コイル(欧州分担)を回し込んだ後、最後のトロイダル磁場コイルと一緒に360度に完成する予定です。

組立中の7体の真空容器セクター(280度分)の画像
組立中の7体の真空容器セクター(280度分)

クエンチ保護回路の搬入JT-60SA本体の組立作業と並行して周辺機器の整備も順調に進んでいます。今年9月には、クエンチ保護回路と呼ばれる機器がイタリアから搬入されました。超伝導コイルでクエンチが発生した場合に、プラズマ放電を停止するとともに、コイルに蓄えられていた磁気エネルギーを開放させる必要があります。クエンチ保護回路は、コイル電流をダンプ抵抗に転流させて安全に磁気エネルギーを熱エネルギーに変換します。このクエンチ保護回路は、今後、新設するトロイダル磁場コイルおよびポロイダル磁場コイル電源に接続される予定です。

イタリアから搬入されたクエンチ保護回路の画像
イタリアから搬入されたクエンチ保護回路

JT-60SA真空容器組立開始(平成26年5月)

那珂核融合研究所では、超伝導トカマクJT-60SAの組立作業が本格化しています。今年5月からプラズマを閉じ込める真空容器の組立作業をJT-60本体室で開始しました。

JT-60SAでは、内部を超高真空に保った真空容器でプラズマを閉じ込めます。真空容器は、外径10mのドーナツ型、断面は横直径3.5m、縦直径6.6mのD字型をしており、厚さ18mmのステンレス(SUS316L)製の二重構造、その総重量は150トンと非常に大きな構造をしています。そのため、360度分を分割したパーツ(セクター)ごとに、真空容器組立棟にて平成23年4月より製作してきました。今年4月までに10セクターすべて(20度セクター×1体、30度セクター×2体、40度セクター×7体)が完成しています。これら10体のセクターは最新の溶接技術を駆使して、現地にて接合・組み立てます。今回、真空容器の2セクターをクライオスタットベース上に設置しました。この様子は、6月4日に報道各社の取材陣に公開しました。今後、残りの8セクターについても、最終の20度セクターを残して順次組立を行い、340度(9セクター)接続した後に、欧州調達分のトロイダル磁場コイル等の組立が開始される予定です。

2体目真空容器セクターのクライオスタットベース上への設置作業の様子の画像
2体目真空容器セクターのクライオスタットベース上への設置作業の様子

クライオスタットベース上に設置された2セクター分の真空容器の画像
クライオスタットベース上に設置された2セクター分の真空容器

JT-60SA超伝導平衡磁場コイルの搬入と仮設置(平成26年1月)

那珂核融合研究所では、超伝導トカマクJT-60SAの組立作業が本格化しています。今年1月中旬に、プラズマの位置や形状を制御する平衡磁場コイル(EFコイル)の本体室への搬入と仮設置を行いました。

JT-60SAのEFコイルは全部で6個あり、真空容器の下側に配置する3つのEFコイル、EF4(外径4.4m、重量30t)、EF5(外径8.2m、重量23t)、EF6(外径10.5m、重量33t)が昨年12月までに完成しました。このうちEF5とEF6は大型であることから那珂核融合研究所で製作を進めてきました。完成した三つのEFコイルは、今年1月15日、18日、22日の3回に分けて実験棟へ搬入され、既に設置したクライオスタットベース上に仮設置されました。世界最大級サイズの超伝導コイルEF5とEF6は、専用の輸送治具を用いて起立させ、縦長の搬入口より搬入しました。1月22日の搬入は報道各社の取材陣が見守るなか行われ、無事終了しました。平成26年度は、既に10体に分割されて完成している真空容器のクライオスタットベース上での組み立てが開始される予定です。

世界最大級サイズの超伝導平衡磁場コイルEF6の実験棟組立室搬入の様子の画像
世界最大級サイズの超伝導平衡磁場コイルEF6の実験棟組立室搬入の様子

クライオスタットベース上に仮設置された超伝導平衡磁場コイル(EF4、EF5、EF6)の画像
クライオスタットベース上に仮設置された超伝導平衡磁場コイル(EF4、EF5、EF6)

JT-60SAの欧州製作機器の初搬入と組立開始を披露する式典を開催(平成25年3月25日)

那珂核融合研究所では、日欧の国際計画であるサテライト・トカマク計画とトカマク国内重点化装置計画の合同計画として、JT-60を超伝導装置であるJT-60SAに改修する計画を進めています。欧州からの最初の大型機器である装置の土台部分(クライオスタットベース)が那珂核融合研究所に到着し、JT-60SAの組立が開始されたことを披露する式典を3月25日に開催しました。

福井照文部科学副大臣、カルメン・ヴェラ科学技術担当副大臣の代理であるエンリケ・アソレイ駐日スペイン大使館公使参事官、榊真一茨城県副知事、海野徹那珂市長をはじめ、国内外から100名のご来賓の方々のご臨席を賜りました。また本体室では、ご来賓の方々が見守る中、クライオスタットベースのボルト締結式が行われました。

ボルト締結式後の記念撮影の画像
ボルト締結式後の記念撮影

超伝導トカマクJT-60SAの組立を開始(平成25年1月28日)

那珂核融合研究所では、日欧の国際計画であるサテライト・トカマク計画とトカマク国内重点化装置計画の合同計画として、JT-60を超伝導装置であるJT-60SAに改修する計画を進めています。平成19年よりJT-60SA関連機器の設計・製作を欧州と共同で行ってきましたが、このたび欧州からの最初の大型機器である装置の土台部分(クライオスタットベース)が那珂核融合研究所に到着し、JT-60SAの組立が開始されました。

直径12m、高さ3m、重さ280tのクライオスタットベースは、7分割されて欧州から輸送されました。横幅が6mを超える部品もあり、主要国道を封鎖しながら7回に分けて那珂核融合研究所へ輸送しました。そして、1月28日に大勢の報道関係者などが見守る中、JT-60SAの組立作業が開始されました。今後約6年間かけて組立を行い、平成30年度からJT-60SAの運転を開始する予定です。

超伝導トカマクJT-60SAの画像

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