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先進プラズマ研究開発

第2回 若手科学者によるプラズマ研究会 | サマリーセッション

掲載日:2018年12月26日更新
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主題:プラズマ中の揺動と不安定性

平成11年2月15〜17日開催

サマリーセッション

本研究会での発表は、トーラス系のトカマク、ヘリカル、逆磁場ピンチプラズマ(RFP)・極低qプラズマ(ULQ)や直線系のミラー、さらにはレーザー核融合を含み多岐に渡った。内容的にも、実験、理論・シミュレーション両面からの発表がバランスよくあり、主題である「プラズマ中の揺動と不安定性」に関する研究が各研究機関・大学で精力的に行われていることが伺える。各々の発表を、対象としているプラズマの振る舞いに着目して分類すると表1の様になり、プラズマの持つ多様性を見て取ることができる。これらの現象を包括的かつ鋭敏な断面を持って理解することが、プラズマ物理の発展に不可欠であることをあらためて認識することになった。具体的には、運動論的効果を考慮した研究が数多く発表され、異なる閉じ込め方式あるいは異なる磁場配位における粒子運動論的効果を統一的に理解するとともに、個々のプラズマ現象と粒子運動論的効果の関連を断面的に理解することで、今後プラズマ物理が発展すると期待される。

研究会全体を通して、不安定性の発生機構に関しては実験・シミュレーションの両面から理解が進んでおり、安定化の手法も実現されつつあるように思える。しかしながら、プラズマ中の揺動や不安定性と輸送の関係については、まだ十分に理解が進んでいないのが現状である。核融合炉を目指す場合に最も重要となる核融合出力は、式(1)に示すようにプラズマ圧力分布、装置パラメータ、及びプラズマ安定性に依存する。プラズマ圧力分布は輸送で決定され、また高いプラズマ安定性を得るためには当然不安定性の安定化が必要である。したがって、核融合炉実現のためには、輸送(揺動・不安定性との関連)や不安定性の安定化に関する研究を、閉じ込め方式によらず横断的に進めることが重要である。そのためには、個々の研究者が研究を行うにあたり、どの要素への貢献に重点をおいて研究を進めるか意識することが重要である。

式1

研究会の趣旨である「異なる分野間での議論を通じて共通の物理の理解及び各研究の応用の幅の拡大を目指す」上で、各研究の関連性が読み取れるように、各研究発表を以下の観点からまとめた。(表2

  • ユニークな点
  • 対象とするプラズマ
  • 空間スケール
  • 時間スケール
  • 駆動力
  • 安定化機構・制御法
  • アプローチ法(測定・モデル・解析ツール、etc...)

今回の発表の中から関連性として具体的に、以下のことが議論された。()内の番号は表2の番号に相当する。

  • 磁場閉じ込め方式とレーザー核融合(1 <=> その他)
    どちらの方式においても性能を制限している大きな要因として、プラズマ揺動(磁場閉じ込め方式における異常拡散の原因と考えられる)や不安定性(磁場閉じ込め方式はMHD不安定性等、レーザー核融合方式はレーリー・テーラー不安定性)が挙げられる。異なる方式間での比較は困難であるが、最新の知見の共有という意味では有意義であった。
  • ヘリカルとトカマクの比較(5 <=> 11)
    LHDの実験が開始され、大型装置同士での比較が可能となった。今後お互いの比較を詳細に行うことで、トーラス系のプラズマ物理の理解が進展すると期待できる。
  • 理論・シミュレーションと実験(6, 7, 8, 14, 15 <=> 5, 10, 11)
    実験で観測される不安定性に関して、シミュレーションで再現することができているが、定性的な比較にとどまっている感がある。今後、定量的な比較を行う必要があり、理論・シミュレーションと実験との関係強化が必要である。
  • 磁気リコネクション(2 <=> 3 <=> 4)
    コンパクトトロイド(CT)入射実験が実際にJFT-2M装置で行われており、その特性把握のためにシミュレーションによる解析が行われている。トーラス合体実験ではリコネクションにおける運動論的効果の重要性が明らかにされており、CT入射シミュレーションに関しても粒子の運動論的効果を取り入れるべきとの指摘があった。
  • WT-3の電子サイクロトロン電流駆動(ECCD)実験とJT-60UでのECCD実験(5 <=> 10)
    JT-60Uにおいても今年からECCD実験が開始され、WT-3でのECCDの実績が、特に偏波に関して参考になると思われる。
  • トカマク、ヘリカルとRFP・ULQ(5, 9, 10 <=> 11 <=> 12)
    核融合装置への外装という意味では直接比較は困難であるが、プラズマ物理に関しては異なる磁場配位での比較、特に安全係数(回転変換)分布の違いに着目した比較が興味深い。
  • トーラス系と直線系(5, 9, 10, 11, 12 <=> 13)
    電場、非等方圧力の影響等物理的に興味深いものがある。GAMMA10では、不安定性が輸送に与える影響について調べられており、トーラス系と比較することで、不安定性と輸送の関係に対する知見が得られると期待される。
  • 計測・解析手法(9)
    揺動計測がプラズマ中の揺動・不安定性研究にとって非常に重要であるという認識は、共通のものである。例えば、計測が比較的容易な小型装置の機動性を生かしつつ、大型装置への物理的な外装、または計測装置自身の適用等を今後考える必要がある。また、解析・制御手法としてニューラルネットワークの応用や、NEXT計画にみられる総合的なシミュレーションなど、計算機分野での発展が期待される。

以上のような議論を行ったが、もちろん関連付けが重要なわけではなく、関連性の中から横断的な議論を通して共通の物理を理解することが重要である。その観点からは、まだ議論が不十分であると思われる。今後この多種多様な研究分野間での議論・研究協力により、プラズマ中の揺動と不安定性に関する研究が進展するかどうかは、研究者自身の意識に負うところが大きい。今回の研究会が各個人の意識付けに役立つとともに、若手研究者相互のコミュニケーションを円滑化し、活発な議論の土壌作りに貢献することを期待する。