主題:周辺プラズマ及びプラズマ・材料相互作用
平成14年3月4〜6日開催
サマリーセッション
話題提供:原研 坂本(資料1)東北大 金子(資料2)
進行:東大 門
「周辺プラズマ及びプラズマ・材料相互作用」分野において、
- 各研究の関連性や将来の課題
- 共通する物理
- お互いの相補的研究展開の可能性
を目的として議論を行った。
(1) 今回の発表の分類と位置付け(門)
今回の研究会は学生の参加が多かったので、一例として Fig.1 のような分類を提示し、各々がこれらの諸現象のうちどの部分に関わっており、それらが全体の研究とどのような関連性を持っているのかを確認してもらった。
周辺プラズマを物性的観点から分類し、プラズマ(相)、気相、固相にわけて考えてみる。これらは相互に影響を及ぼしあっており、粒子リサイクリング、不純物発生等によりプラズマ相を介して炉心プラズマの閉じ込め性能を大きく左右している。
Fig. 1 物性的観点から分類した周辺プラズマ、及びミクロ・マクロ的物理現象例
これらの実験研究は、閉じ込め装置を用いて行うものと、基礎実験装置、シミュレーション実験を用いて行うものがある。本研究会の発表を分類すると表1のようになる。
閉じ込め装置 | 基礎実験装置 | |
---|---|---|
プラズマ相 | 揺動(永島・山田:JFT-2M), 磁場構造(増崎:LHD,洪・川染:H-J) |
流れと揺動(金子・角山:東北大), 流れの構造(永岡・吉村:NIFS) |
気相 | 熱流(増崎 LHD), 不純物(仲野 JT-60U) |
ダストとシース構造(日渡・谷口:八戸工大), 負イオンの役割(梶田・門:東大) |
固相 | トリチウム輸送(正木:JT-60U) 再堆積層の損耗(谷口:JT-60U) |
ペブルカーテン(奥井・北原:大阪), ダストの重水素保持能(吉田:北大) |
ここで、プラズマ相は、プラズマの無衝突な集団的運動に支配される部分、気相はプラズマと中性ガスが相互作用を行い、原子・分子の様々な衝突過程が支配する部分、固相は固体壁がプラズマとの相互作用により影響を受ける部分と定義した。
一方、各々の物理現象についての研究アプローチは、ミクロ的、マクロ的という観点から分類すると、
マクロ:エッジ乱流、プラズマのフロー、熱・粒子束、デタッチメント、リサイクリング、材料損耗、インベントリ、等
ミクロ:集団現象、非線形波動ExB、原子分子過程、収着、スパッタリング、表面改質、材料内拡散現象、等
が挙げられるであろう。
このように研究内容、研究手法を分類し、共通見解を示したうえで、以下の議論を勧めた。
(2) コメント1:原研・NIFS・閉じ込め装置の方々から
〜閉じ込め装置の立場から縦のつながり・・〜
上記分類のうち、閉じ込め装置によって行われている研究の縦方向(プラズマ相、気相、固相)間の相互関係についてコメントをいただいた。
(坂本)核融合研究開発の取り組みへの観点からは,
プラズマ相・気相・固相のつながりの研究として、熱粒子制御や不純物制御が重要。
各研究には,資料1のような相互作用が存在している。
また最終的にはコアプラズマ(閉じ込め改善プラズマ)との両立が重要になる。
(大山)自分はコアプラズマに位置している。今後のITERを考えたとき、コアのELMなどがダイバータなどに影響を与える。それの輸送条件として、周辺プラズマの特性が重要。周辺まできたのがすべてダイバータに入るのか、放射でなくなるのか。ダイバータに入ったとき、ダイバータの特性がどう変わるのか。そういう意味で、縦のつながりは重要。
(増崎)プラズマ基礎としてデタッチとかは周辺プラズマに密接していると考えている。カーボンが関係してデタッチとかに効いている可能性があるということから、固相も関係していると思われる。タイルの損耗などで、プラズマ中のデスラプションなどとどのように関係しているかを考えてもらえると良い。プラズマとしては、スパッタによる不純物などを考えている。
基礎実験の人には閉じ込め実験に興味を持って実験してほしい。プラズマ閉じ込めも重要な応用の一つと考えてほしい。東北大のシアーの問題などもLHDでの周辺の揺動にも適用できる可能性があるのではないか。
(3) コメント2:基礎研究の立場から(金子)資料2
〜基礎研究の役割(なにが模擬できてなにが模擬できないか)〜
(金子)基礎実験のメリットとしては、静電プローブなどの利用により高分解能な分布計測ができるので、詳細な構造の測定ができる。また、プラズマの制御が容易なので、必要なパラメータのみを変化させることができる。一般的に、定常的なプラズマ生成ができることもメリットであると思う。これらの利点を利用して、観測された現象を決定する、物理法則を解明することができることが重要なことである。ただし、密度、温度などが数桁も異なる閉じ込め装置のプラズマに適用できるかは疑問である。幾何学的な構造が異なることも問題にならないか。
<このような問題提起をきっかけに以下の議論が行われた>
(鈴木)基礎実験でのパラメータを規格化してもらえば比較できるのでは。
(大山)同じ形状のマシンでも条件によっては、揺動特性は異なる。大型装置の人はパワーなどの違いで基礎実験を軽視していたような気がする。規格化して、考慮する必要がある。物理としては、同じ点があるはずである。
(梶田)再結合に関しては、装置によって特性が異なっている。自分の研究においていえば、直線装置での結果がどのように適用できるかは、数年後には考える必要があると思う。
(増崎)数年後といわず、今から規格化するなどして考えていけばいいのでは。密度の違いでどの再結合が主に起こっているか考えていけばよいのではないか。
(日渡)自分たちは計算なので、実験からでた結果の数値とか計算式を世に出してほしい。そうすれば、自分たちの計算にそのパラメータを入れて、結果を出せるのではないかと考えている。
(梶田)自分たちの結果を、何かのモデルで考えてシミュレートして、他の装置に外挿できるか。
(門)外挿でいけるかどうか、という点も重要でしょう。
(奥井)壁のコンディショニングの絶対的評価は難しそうと感じた。現在の閉じ込め装置では、壁が汚くなったら放電洗浄すればいいという風に見えるが、今後はどうするのか。自分たちはペブルのみではなく、いろいろやっている(いろいろな要請がある)。
(増崎)水素吸蔵の過飽和などに関しては、ペブルに限らず一般の壁にも適用できるので広い知見でやってほしい。
(吉田)JT60やLHDのタイルを実際に使用できれば、もっと研究が進むのではないかと思う。
(増崎)水素の過飽和に対しては、広い話に応用できる。
<ここで水素吸蔵の話で細かい話になったので議事録上は略>
(吉田)過飽和を計るのは非常に難しい。
(増崎)同じ話はボロンコーティングなどの話でもあって、重要な話である。
(仲野)マクロとミクロの観点で、JT60ではマクロ的な結果が多い(好まれる)。でも、ミクロな領域の結果も重要である。JT60ではミクロな結果を得るためのショットは少ない。定常実験としての門さんあたりの結果は重要なので、もっとアピールしてほしい。
(洪)装置としては立ち上げ時期なので、あと数年間はマクロ的な結果を求めていくことになると思う。基礎実験的なものも重要だと思うが。
(永島)揺動を計測したくてプローブを使っているが、60eVではプローブが溶けてしまっているように思う。基礎実験でも、プローブによらないリフレクトメータなどの空間分解能の良い測定法を試してほしい。
(門)リフレクトメータなどは基礎実験装置そのものと比較しても非常に高価である。基礎実験でというよりは、逆に大型装置の周辺プラズマで、プローブと他の測定装置で同時に計測し、クロスチェックすることで評価していく方が直接的でよいのではないかと思う。
(4) 閉じ込め装置による研究と基礎研究との相互関係において、
- 基礎研究の位置付けとして、
- なにをどこまで模擬できるか?
- どういうスタイルが望まれるか?
- 基礎研究の生きる道等。
- 閉じ込め装置にフィードバックできること、できないこと、(あえて)しないこと。
- 閉じ込め装置に求めること? シナリオの提供が可能か?
- 閉じ込め装置
- 基礎研究に求めること、求めないこと?
このような観点から議論を行った。
(竹永)直線装置の結果がトーラス型の大型装置にどう直結するか難しい。ガスの種類を変えるとかは、直線装置の方がやりやすいと思う。今回はなかったが、シミュレーションも重要と思っている。
(仲野)JT60もITERからみれば小型装置になる
(門)閉じ込め装置への適用という観点から、基礎実験装置の線形波動の議論がどこまで使えるのでしょうか?
(金子)閉じ込め装置では、乱流などの激しい揺動があるが、基礎実験装置では、今回発表したようなシアーによるコヒーレントな揺動が励起される。コヒーレントな揺動から、乱流に至るその中間を観測している人などはいるのでしょうか。また、我々の観測したシアーによる揺動は、大型装置で観測される揺動とどのように関連しているのか。
(大山)揺動の性質に関しても揺動レベルがフローシアで下がるという報告もあればそうでない、という報告もある。その揺動にはなにが効いているのか基礎実験でやってもらえるとありがたい。
(門)基礎実験を行っているものの立場からとして、共同研究として自分たちの計測装置などを実際に大型装置に取り付けていろいろやりたい気持ちはある。例えばこんな計測用に適したこんなポートがある、等閉じ込め装置側から提示してもらえると有意義である。
(竹永)原研はいま共同研究として門戸を開いているので、チャンスだと思う。ただ、持ってきたものは放射化してしまうので、捨てる覚悟で来てほしい。かといって予算の関係で新規購入は難しい。共同研究を行う場合に、原研研究者と大学の研究者では、プラズマ実験に対する感覚が違うので、その感覚を養うのも大事であると思う。
(大山)学生を受け入れるとすれば、誰かが面倒をみていかなくてはいけない。来年から原研のスタッフが減ることも考えると、簡単にはいかないのではないかと思う。
(増崎)事前の議論が必要ではあるが、前もってやっていれば何とかなるのではないか。
(門)実際に原研に来て実験している、長島さんはどうですか?
(永島)2ヶ月ぐらいJFT−2Mに来て実験している。世話人の方によくやっていただいているので助かっている。
(谷口)自分たちは計算しかしていないので、実際の実験装置を見学させてもらって、実験してみたいと思った。
(角山)自分たちの実験の結果がある程度まとまったところで、大きな実験装置で同じような現象が起こるのか、起こらないとすればなにが違うのかを確かめてみたい
(及川)固相側はプラズマの条件を固定してしまっていて、プラズマ側は壁の性質を固定して考えてしまっているので、お互いの工学的な進歩を情報交換しあって、整合性をとりながら、研究を進めていければもっと効率的でいいのではないかと思う。
(坂本)基礎実験の人は、あまり大型装置への適用のみを考えるのではなくて、純粋に物理的におもしろいと思えることも重要であると思う。プラズマ領域での揺動などの問題が気相中でどのように関与して、固相にどのように影響するかなどのそれぞれの関与を考えていければよいかと思う。